第306話 魔人王
───ルナリア・ソーサレスside
「...あの角の生えた人種は初めて見たな。」
「アレは龍人と呼ばれる種みたいですね。」
「ふぅん。」
現在、私はあの忌々しい太陽の巫女ソーラ・サンクチュアリーが接触している少女達を月の鏡を用いて観察していた。太陽の巫女の様子を見る限り、太陽の剣はあのリュウジンと呼ばれる少女の手に渡りそうだ。あんな目隠し少女に何ができるのかと思うが、油断は禁物。私も弓の名手を探し出さなければ...。
「巫女様。」
「ん?」
「この大陸でそこそこに大きいクラン?と呼ばれる団体のトップがお越しです。」
「うむ。通せ。」
「かしこましました。」
───ガチャ...!
「失礼す...します。」
「普段通りでいい。」
「...そうか。助かる。」
「今日来てもらったのは他でもない。この世で1番弓が使える者を教えて欲しいから呼んだのだ。」
「それだったらヨイチマルがいいな。...ただ、ヨイチマルは人族の...こことは違う大陸にいるからなぁ...。」
「ヨイチマル...。...ラギ。」
「...かしこましました。」
私がラギの名前を呼ぶと、一瞬で目的を理解した彼女はその目的のために動き出した。そして、目の前の男?...人、ではなさそう...?な見た目をしているマオという者にはこれからも手伝ってもらうことにする。これは彼に了承を得ているので問題はない。...さすがの私でも無理やりはしない。
「...では頼んだぞマオ。」
「あぁ。うちのメンツで時間稼ぎだろ?」
「うむ。」
太陽の剣を持つ者は近づかれるだけで即死を覚悟するレベルの強さになる。それゆえに代々続く月の巫女は超遠距離攻撃ができる弓を創るようになったのだ。そして、月の弓のメリットにして最大のデメリットはチャージ時間だ。月の弓は光を貯めれば貯めるほど発射後の威力が増し、その威力の上限はない。要するに太陽の剣を持つ者をできるだけ足止めし、その間光を貯めるという作戦だ。
だが...
「...嫌な予感が拭えない。」
なぜか嫌な予感がするのだ。本当に太陽の剣だけを警戒していいのか...。でも他に何を警戒しろと...?
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───マオside
「...っはぁ...久々に緊張したぜ...。」
「マオさんや。どうしたんだい?」
「む。山谷か。いやな?ルナリアさんはマジで美人だったんだけどな?威圧感がヤバいのなんの...。どれだけ対人恐怖症なんだってぐらいこっちを警戒してたぜ...。」
「あっはっは!そりゃマオさんの容貌がヤベぇからじゃないのかい?ぷくっ...クスクス...。」
「うっせ...。」
いつも通りからかうのが好きな人狼の山谷の肩を殴っておき、帰路に着く。いつの間にか魔人王とかいう種族になっていたが、相変わらず皆俺に着いてきてくれている。ありがたいことだ...。妹が憧れていた冒険とは程遠いかもしれないが、俺もそこそこやれてる...よな?
「おいおい何しけた顔してるんだマオ。お前は魔王...魔人王になったんだからもっとシャキッとせぇや!」
「っ...すまんなハセ...。」
ハセの言う通りだ。俺は皆を率いる立場にいるのだ。そんなやつがシュンとしてどうする。ただでさえ今は戦争が起きそうでピリピリしてるって言うのによ...。
「ありがとな。」
「おうよ!...そういや月の弓はやっぱヨイチマルか?」
「そうなるだろうな。...まぁアイツが見つかればの話だけどな。」
「ははっ確かにな!」
ヨイチマル...彼が月陣営...ルナリアさんに味方するのかどうかは分からないが、俺たち魔王...魔人王軍はルナリアさんの味方になる方針だからな。どうせカインは太陽陣営だろうから楽しみだ...。
「...今度こそ倒してやる。」




