第294話 新たなる波乱(笑)の予感
次の日。いつも通りログインすると、見慣れた壁が目に映った。確か昨日は数時間かけて飛んで帰ってきたんだっけ...。あ、今日は私ちゃんとベッドにいるね。
「あ...すず...。」
そういえば私とアイリスは先に帰ってこれたけど、すずとメルは途中の街で1泊したんだった。だからすず達が帰ってくるまではアイリスと2人っきりだ。
「ねぇねぇアイリスー。」
「なぁにーアヤネー?」
「すず達が帰ってくるまで暇だから何かする?」
「んー...ちょっと魔物と戦おうかナー。」
「分かった。私もレベル上げしよっと。」
あと3日でステータス表記が変わるらしいのでそれまでに少しレベル上げしよう。...まぁこの期限は特に意味はないんだけど、目標を持つのは大事でしょ?
『すずー!すず達が帰ってくるまでハッチルンド近くの森でレベル上げしとくね!』
『分かったー。気をつけてね?』
『うん!すずも気をつけてねー!』
『もちろんよ。』
「よし...じゃあ行こっかアイリス。」
「ウン!」
すずに一言伝えて、私たちは外に出たのだった。
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「...相変わらずアヤネは人気者だネ...。」
「...アイリスも可愛いって言われて満更でもなさそうだったじゃん...。」
「うっ...だって今まで可愛いなんて言われたことなかったかラ...。」
確かにアイリスはずっと霊体だったから、まず人に見られることもないのか...。これは浮かれてもしょうがないのかなぁ?
「それでどっちに行くノ?」
「えっと...北は私たちが来た方面だし西はもう行ったし...東、かな?」
「そうと決まれば行くヨー!!」
「わっ!ちょっと!?」
私はいきなり走り出したアイリスを呆れながら飛んで追いかけた。まったく...無鉄砲なんだから...。まぁそこがアイリスのいい所でもあったりするんだよね...。
「ほら早く早クー!」
「...はいは...危ないッ!」
「え──」
───ゴッッッ!
「グォォッ!?」
私を急かす為に振り向いたアイリスに突如として飛びかかった魔物をスピードを乗せて蹴り飛ばした。そのトラ型の魔物が体勢を整える前に私は刀を抜き、斬りかかった。
「ガルルッ...ガゥッ!!」
──キキキンッ!!スパパンッ!キンッ!スパンッ!
異様に尻尾が長いなと思ってたら、その尻尾の先が尖っていた。トラ型の魔物はそれを器用に操って私の刀を弾きながら自分の爪でも攻撃を繰り返していた。
「さっきはよくモー!」
「グォッ!?」
───ズドォォオンンッッ!!
このトラが私だけを見ていた時、アイリスはというと木に登っていた。そこからトラの頭上まで飛び上がって振り下ろされた大剣は激痛じゃ済まされない程のダメージを与えたことだろう。
「グゥ...ルゥ......。」
──ズゥゥゥン......
頭が大きく凹み、見るも無残な死体となったが無駄にはしない。トラをインベントリにしまい、アイリスの元に戻る。
「...油断はダメだからね?」
「...はーイ...。」
説教になってしまったが、これもアイリスのためだ。アイリスの体ならあのトラの攻撃にも耐えれるだろうけど、それにばかり頼っていては、いざそれを貫く敵が現れた時にどうしようもなくなってしまう。もうアイリスにはいなくなってほしくない...。
「...だから──」
「あ!キラキラしてルー!」
「...聞いてた!?」
割と真面目な話だったんだけどなぁ...。まぁアイリスらしいよね。それで、アイリスが見つけたのは...
「イヤーカフ...?」
太陽の形をしたイヤーカフだった。
「綺麗だよネ〜。アヤネ付けてみたラ??」
「えっ...?」
「こんなところに落ちてるんだから誰も使ってないデショ。」
「そう...かなぁ...?とりあえず《鑑定》」
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【名前】太陽の耳飾り:品質☆
【説明】特殊な素材を用いて造られた太陽型の耳飾り。所有者の攻撃に火・光属性を追加し、火・光属性攻撃力を上昇させる(大)。
【所有者】ソーラ・サンクチュアリー
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「やっぱり所有者がいるみたいだね。」
「そうなノ?」
「うん。だから持ち主が見つかるまで預かっておこっか。」
「そうだネー。」
ソーラ・サンクチュアリー...。なんだか暖かい名前だなぁ...。




