第287話 消える消えない
「イベントが終わったらこの街ってどうなるのかなぁ...?」
「っ!?」
ふとした疑問。このサーバーは...この街は...この人たちは今回の夏イベントのためだけに創られた存在だ。だからそのイベントが終わってしまえば、言い方が悪いが用済みだ。ならばその用が済んで役に立たなくなったものはどうなるか...。
「...サーバーが消えちゃうかも。もしかしたら初期化してまた違うサーバーに変えるかもしれない...。」
「私詳しくないから分かんないけど消えちゃうんだよね...?」
「私も分からないけど...多分。」
「さーばー?とやらが消えるのかい?それがどうしたというのだ?」
「えー...と...街が消えるのよ...。」
「なっ!?...何が...原因で...?」
「運営が...えーと...この世界の神様?が消しちゃうのよ...。」
「なぜだ!?私はこんなにもこの街に尽くしてきたというのに!!ならなぜ私に天啓を授けた!避けられぬ運命をなぜ私に見せたのだ神よ...!!」
「「...。」」
「ぁ...す、すまない...。八つ当たりしてもしょうがないよな...。」
「いえ...気にしないで。」
「...。」
これは可哀想だ...。運営さんに問い合わせてみようかな...。できることならすぐにしないとね。
「すず...私ちょっと問い合わせてみる。」
「へ?ぁ、うん。」
早速メニューを開き、問い合わせのボタンを押す。そして現れた欄に必要事項を記入。
「えーっと...『現在の夏イベントが終わったあと、イベント限定サーバーはどうなるんですか?残すことはできませんか...?』...と。」
「あの子は何を...?」
「ちょっと問い合わせを...ね。」
「??」
「もう...ってシステムメッセージか。なになに...?...アヤネさんと文通できて幸せです...?なんで?」
どこか焦って打たれたような文章を読み進めていくと、この街のことが書かれていた。そこには『サーバーについては一考させていただきます。』の一言だけ。...まずいね。
「この文を見る限りだと、消える可能性の方が高そうね...。考えるとは言っているけど多分考えないやつよね...。」
「うぅ...。私はどうすればいいのか...。」
正直できることなんてない。サーラさんはこの世界の人だからサーバーの移動もできない。多分街を見捨てることなんてしないだろうけど...。うーん...困った...。
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───運営side
「うぉぉおおおおお!!!アヤネたんから手紙が来たァァァァァア!!!!」
「はぁ?何言ってんだこいつ...そんな訳ねぇだろぉおおおおおっ!?!??!!?ガチなやつじゃねぇぇかっ!!」
「お前らうるさいぞ。どうしたんだ?」
「課長!見てくださいよ!」
「んー?どれどれ...『現在の夏イベントが終わったあと、イベント限定サーバーはどうなるんですか?残すことはできませんか...?』...か。そういえばイベント課のやつが残すとか言ってたんだけど...返す時に言うのもネタバレになるしダメだよなぁ...。ってん?...アヤネちゃんじゃないかっ!!まさかアヤネちゃんと話したいと思ってたんだよ!」
「何言ってるんですか!僕が受け取ったんですから僕が返します!」
「はぁぁ!?先輩である俺が返すべきだろ!」
「何言ってるんだお前たち!課長の私が返すべきだ!」
「失礼するわ。」
「「「社長っ!?」」」
「こ、ここここんなところになんの御用で...??」
「あら?用がなければ私がここに来てはダメでした?」
「いいいいいえいえ滅相もない...。」
「まぁいいわ。ちょっと問い合わせを見てみようかなって思ってね。」
「な、なるほど...。ではこちらにどうぞ...。」
そこにいる。それだけで圧倒的な存在感を放つ女社長はあるひとつの問い合わせを見つけるとニィッと邪悪な笑みを浮かべるのだった。
「...同情ねぇ...?」




