第262話 試練
「──『真夏の記憶』についてはそんな感じにまとめられてるわね。」
「なるほど...。」
次の日。私たちは学校で『真夏の記憶』についての話をしていた。
すずが言うには『真夏の記憶』は集めれば集めるほどイベントで優位にたちやすいが、その分イベント中に何かが起こる可能性が高くなるアイテムとのこと。
だから掲示板の人達はそれを広めようと頑張っているらしい。私達もできる限り広めていこう。...まぁ私のフレンドの数は未だに1桁なんだけどね。
「おいお前らー明後日から夏休みだからって調子乗んなよー?」
「分かってますよ!」
「俺は補習あるんだが...。」
「たはは!頑張れよ!」
先生が教室に来たのですずの膝から降りて自分の席に戻る。明後日から夏休みかぁ。もうすでに課題は終わらせたから夏休みはかなり暇な時間ができる。もちろん勉強は欠かさないけどね。
日中は朝は勉強。お昼はお父さんの手伝いをして、夜にゲームをしようかな。生活習慣が崩れない程度にね。
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──マリエスタside
「マリ姉〜!」
「ん?あぁ。帰ってきていたのかメル。」
「ただいま〜!」
「おかえり。...お前何かしたか?」
「何が〜?」
「お前の中からメルフォーズの気配が消えている。それに力も抜けているようだな。一体何があった?」
「え〜?だってアヤネが力は求めてないって言ったから...。」
「アヤネだと?」
「?うん。」
「クククっ...まさかメルの探し人がアヤネだとは思わなかった。それじゃああれか?ここを出ていくのか?」
「うん!だからお別れを言おうと思って!」
「...そうか。そういえばメルフォーズはどうしたんだ?」
「ん〜...ふぁ...ふぁ...ふぁる...ふぁるこん?」
「.........ファルティタか?」
「そうそれ!その子が持って帰っちゃった!」
「そうか。無事ならそれでいい。」
宝を集めさせるという名目で人間たちをメルに襲わせたが、僅か数週間でメルが求めていた人物と出会うとは思わなかった。いずれここから出ていくだろうとは思っていたが、まさかこんなにも早く別れることになるとはなぁ...。...メルの探し人が見つかったことに嬉しく思いながらも、少しだけ寂しく思う。いつの間にかメルに情が湧いたんだな...。
「...では。達者でな...。」
「...うん!またねマリ姉!」
「...あぁ。」
メルとはまた会うことになりそうだな。
「...感動のお別れのところ失礼しますね。」
「イナガキか。お前がなんで...あぁ祭か。」
「察しがいいようで何よりです。それでですが...───」
創造神のさらに上の存在であるイナガキタイスケは用件をズバッと切り出してくるから助かる。腹の探り合いなんて面倒なことしたくないからな。イナガキが言うにはそろそろ大きな出来事を起こして欲しいとのこと。チマチマとメルにスキル《ネコババ》を授け、海に入ってくる人を襲わせたのだが、それは大したことにはならなかったようだ。まぁ途中で探し人が見つかればそりゃそうなるわな。
まぁ別にイナガキに言われなくとも次の案は出ている。さらに言えばそのための布石はもう既に打ってある。あとは頃合を見てその石を爆発させるだけだ。ククク...さぁ私に見せてみよ地上人。
──これは試練だ




