第251話 ぶいえすめる
「いざ尋常にっ!」
可愛い声で小さな手をミューさんに突き出す。その瞬間、とてつもなく強い波が発生した。私は自慢のSTRでなんとか踏ん張ったんだけど、すずは結構遠くまで流されてしまった。ぬこさんとブラキじゃさん、キョウさんは人魚になってるからか、特に影響を受けることはなかった。
そして肝心の攻撃を受けたミューさんはというと...
「...か...はぁ......。」
構えていた大盾を貫通しているあの少女...魔物少女の手がミューさんの胸に大きな穴を開けていた。ミューさんはプルプルと震えると、その体を光に変えた。
「ありゃ?やり過ぎた?...マリ姉から力の制御を教わったのに...。」
『ミュー...さん...。』
「...あのミスリル製の大盾を貫通させた上に相当鍛えてある体を貫くその手の力と耐久...わしらじゃ手も足も出なさそうだな...。」
「...そうですね。さっき掲示板で調べてたんですけど、ジークさんも降参したそうですよ...。」
「ミューの仇デス!」
───ドォォォォオンッッ!!!
連日の魔物討伐によるレベルアップで強くなったアイリスの右パンチ。それを同じく右手で受け止める。そして...
「お返し。」
──ドゴォオオオオオオンンンンッッッ!!!
「ぐぇっ...!?」
予備動作なく放たれた左フックがアイリスの脇腹に入る。オリハルコンと擬似ヒヒイロカネで出来た超魔黄金金属の体を大きく凹ませ、ものすごい勢いではるか遠くまで飛んで行った。
「「「「......。」」」」
『か、《鑑定》っ!』
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
【名前】メルLV.???? 状態:正常
【弱点】?
【苦手属性】?
【説明】スライムが緑色の葉を食べ続けたことにより突然変異した姿。風魔法と土魔法を使用してくる。
HP:???????/???????
MP:???????
STR:??????
VIT:??????
DEF:??????
AGI:??????
INT:??????
DEX:??????
MND:??????
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『え...?』
『どうした?』
何も分からない!?レベルすらも分からない。...でもなんだろう...。凄くどこかで見たような説明文...。緑色の...スライム...?あっ...
────────
スライムはいつの間にか私の足元に移動していて、こちらをじっと見つめていた(見つめているように見えた)。
《テイム成功!──仲間にしますか?》
『は?』
『......ふぅ、ふぅ......ど、どうしたの?』
『なんかテイム成功って出たんだけど...。』
『はぁぁぁぁあ!!?!?!??』
──────
『魔物の餌とかどうやって用意すればいいか分からないしねぇ...。』
『お金もかかりそうだし...。』
そんな訳で暫くスライムを撫でながら考えた結果、仲間にしないことに決めた。命を背負う訳だからね。私には荷が重いのです....
『...バイバイ。』
『────......。』
ぷよぷよと形を変えながらその場を去っていくスライム。
...心做しかその背中はとても哀愁漂う姿だった。
───────
────
──
『あのスライムだったのか...。』
『む?やはり知り合いだったのか?』
『うん。あの子前にテイム成功したんだけど結局仲間にしなかったんだよね...。餌代とかいろいろあるし、そんな気軽に仲間にするものじゃないって思ったから...。でも去っていく後ろ姿は悲しそうだったなぁ...。』
『そんなことがあったのね...。』
『ふむ...今からでも仲直りできないのか?』
『『『え?』』』
『だってそのグリーンスライムがここまで強くなったということはアヤネの仲間になりたかったんじゃないのか?スライムは良くも悪くも単純だからな。強くなれば仲間になってくれるとでも思ったんじゃないか?』
『『『......。』』』
ブラキじゃさんに言われてハッとする。確かにそう言われればそのような気がしてくる。それに、あのメルって少女は私と話がしたいみたいだから...。もしそれがテイムの件だとしたら...?
『...私が相手をします。』
『本気かアヤネ!?』
『アヤネちゃん危ないわよ!?』
『か、考え直した方がいいですよ...?』
『いえ、これは私が撒いた種かもしれないので。』
そう言って私は刀を抜き、メルの目の前に立つ(浮いてる)。
「っ...。次は貴女なの?」
『うん。』
フレンドチャットではメルに届かないので、ちゃんと頷いておく。そして、心做しかメルの声が震えているように思えた。
メルちゃんは鑑定妨害スキルを覚えてしまいましたとさ。




