番外編 三つ巴の戦い⑤
──ジョー癖side
「《剣鬼》」
──スパパンッ...!
「ほ、本当に強いのだなそのスキルは...。」
「俺も鬼神様に稽古付けてもらってようやく手に入れたスキルだから愛用してるぜ。」
「その鬼神様という方は強いのか?」
「強いってレベルじゃねぇぜ。俺じゃ全く歯が立たないからな...。」
「...それはすごいな。」
俺たちは海を西へ横断していた。横断といっても陸地でログアウトしないと死んでしまうため、進む距離は短めだ。今のところ俺の防御とカインの攻撃が合わされば怖いもの無しである。
そして、今は宝探しをしながらカインの師匠である鬼神様という方の話をしていた。
「鬼神様はどのような方なのだ?」
「見た目はロリっ子で可愛いんだけど、俺のこの角よりも大きな角を持っている鬼だ。威厳を保とうとジョーのロールプレイみたいに我とか使ってるんだけど、ふとした時に見た目相応の言葉遣いになるとこが可愛いな。」
「お、おい!ロールプレイとか言うな!」
「え?だって本当のことだろ?」
「ぅ...いや、まぁそうなんだけどさぁ...。ゴホンッ!...このキャラで通しておるからな。指摘はしないでくれ...。」
「ごめんごめん。お!あれって珊瑚礁じゃねぇか?」
「うむ。色とりどりで美しい場所だな。」
話の途中で俺のロールプレイについて言われたが、しょうがないだろう...。だって初対面の人と話す時はつい似非戦国武将みたいな話し方になっちゃうんだよ...。ちなみに一人称は我なのだが、これは似非戦国武将みたいな話し方なのに俺というのは少し合わないとフレンドに言われたからそうなった。
「...む?無数の視線を感じる...。」
「あの珊瑚礁からだな。恐らく100はくだらない。」
「...攻撃は任せるぞ。」
「もちろんだ。防御は頼んだぜ。」
「うむ!」
珊瑚礁から感じる無数の視線。覚悟を決めた俺たちの前に現れたのは巨大なクマノミだった。
「「「「「「ガァァァア!!!!!」」」」」」
「うわ気持ち悪っ!?」
「こ、これはなかなか...。」
大きくなっただけでクマノミと何も変わらないと思ったのも束の間。叫んだ瞬間に見えた口の中にはまたもやクマノミの頭があり、そのクマノミの口の中にもクマノミの頭があった。...いったいどこのマトリョーシカなのか。
「だがやることは変わらない。」
「そうだな。まずは《ウォーターブロック》《フィジカルブロック》《マジカルブロック》」
「おっサンキュ!《大海斬》!」
───ザァァンッッ!!
海が大きく揺れたと思ったら数百はいるクマノミの前衛達が真っ二つになった。まだこんなスキルを隠し持っていたのか...ってそういえば前回のイベントでも見たような?
「我もタゲ取りをしなければな。《アテンションターゲット》!」
今のカインの一撃によるカインへのヘイトを無理やり俺に向けさせる。俺は守るだけなら一流だ。さぁ...かかってこい!
───────
────
「ふぅ......やっと倒したな...。」
「...うむ......。」
何処を向いても無数のクマノミの死体が浮いている。それほどまでの激闘だった。それでも体力を半分以上削られていないことを考えると、やはりカインが強いということが分かる。
「とりあえず全部インベントリにしまってから珊瑚礁を探索だな。」
「うむ。《ポイズンブロック》」
「?」
「珊瑚に毒があるかもしれぬから念の為な。」
「そうか。ありがとな。」
「うむ。」
そこから手分けしてこの広大な珊瑚礁を探索した。現実世界だとこれ程立派な珊瑚礁は海岸沿いとかにありそうなものなのだが、ここの珊瑚礁は冷たい海に存在している。ちょっと怪しいな。
「おい!めっちゃすげぇの見つけたぜ!」
「何?それは本当なのか?」
「なんだろう...言うなれば泡でできた玉?」
「は?」
見せてもらって理解した。玉は玉だけど、無数の小さい泡からできている玉だった。それもまるで強力な接着剤でくっつけたかのようにビクともしないものだ。
「帰ったら鑑定しに行こうか...。」
「そうだな。」
こうして今日の探索が終わった。




