番外編 マリエスタとメル
「うむうむ。だいぶ泳げるようになったな。」
『えへへ...。まだ体の形は保てないけどね〜...。』
「時間はたっぷりあるんだ。慌てずにのんびりやっていこうじゃないか。」
『うん!』
原初の偽王メルフォーズを取り込んだ原初の偽神メルフォーズならぬメル。彼女を深い海溝の奥で拾ってから1週間程度だが、物覚えがいいどころか良すぎる。未だ人間の体を保つことができないが、それ以外は底なし沼の様に飲み込んでいく。スライムは雑魚だと思っていたが、こんな能力を持っていたのか?少し考えを改めねばな...。
「...一体どうやったらあやつを取り込めるのか...。」
『んー?』
「おっと口に出ていたか。すまんな。」
『ううん。シュリっていう人に会ってから記憶がないって言ったよね?』
「うむ。そうだったな。」
『少し思い出したんだけど、シュリからお薬を貰った気がするんだ〜。』
「...薬だと?」
『うん!それを飲んだところまで記憶があったの〜。』
「ふむ...?」
薬...。薬を飲んであやつを取り込んだのか...?だとすると、そのシュリとやらか、それに近しい者があやつを薬にしたということになる。あやつはそんな弱い存在じゃなかったはずなんだがな...。まぁあやつは怠惰だからな。怠惰の天空王ファルティタと添い寝する仲だから眠っている間に薬にされても...。いやまさかな。
『どうしたの?難しいこと考えてるの?』
「いや。なんでもない。さぁ続きを再開しよう。」
『うん!』
ふにゃっと笑うメルは例え溶けていようとも輪郭が無くなっていようとも可愛らしいものだった。
「ちょっといいですか?」
「何者だ?」
『...だぁれあの人?』
「あ、私こういう者でして...。」
急に背後に現れた人間に問いかけると、その人間は名刺という物を渡してきた。
「イナガキダイスケ...?」
「えぇ。この世界の運営をしている者です。」
「ほぅ?創造神よりも上ってことか?」
「そうなりますね。」
「...で、イナガキダイスケはなんの用があってここに来たのだ?」
「そうですね。今日こちらに参った理由はですねぇ。人間界で大規模なイベントを開催したいと思っているからですね。
夏...あ、この世界夏とかないな...ちょ、ちょうど人間界では海の時期でして!それならば海の支配者であらせられるマリエスタさんにお話を聞かせてもらえないかということで参りました。」
「ふむ...?イベントとやらは要するに祭りの事か?」
「えぇ。海に関するイベント...お祭りを開催したいのですが、そのためにはマリエスタさんのご協力が必要でして...。」
「......いいだろう。」
大規模な祭りか...。ならば、これに乗じて海を綺麗にしてもらおうか...。ふふふ...。
「...ちょっとマリエスタさんの顔怖くないですか?」
『たまーにこうなるよ〜?』
「うわっ!お?スライムか?...でもこんな魔物いたっけ...?いやでも初期の頃人型スライムを創ってたやつがいたような...?おぉよしよし。スライムの触感ってこんな感じなんだな...。」
『えへへ〜!』
イナガキダイスケになでなでされているメルを横目にイベントの詳細を考える。
私が考えるのは海の掃除だ。大昔人間界での大航海時代。それはそれは数多くのゴミが海に沈んでいった。ならば回収も自分たちで行ってもらおうってな訳だ。そのゴミが報酬でいいと思うが、それだと味気ない。邪魔者やらを用意せねばな...ふふふ。はっはっは!!
「やっぱ怖いな...。」
『マリ姉怖い...。』
こうして次のイベントが始まるのだった...。




