第217話 海底王国
「それは貸してやる。それでナギフの海域から異形の森まで行けるからな。」
「え、そうなんですか?」
「もちろんだろう。何せ私が造ったのだからな!」
腰に両手を当てドヤ顔をするドールスさん。見た目が見た目なために微笑ましい光景だ。
「...なんだその目は。」
「いえ、ナンデモナイデスヨ。ハハハ。そんな事よりもこれ、どうやって運べばいいんですかね?」
「ん?何言っておるんだ?お主らはインベントリなるものを使えるのだろう?」
「え?なんでそのことを...ってそういえば素材出す時に見せてましたね。」
「そうだ。これも計算上は一応運べるはずだ。」
結構な大きさの潜水艦を指先、再びドヤ顔になるドールスさん。とても可愛らしいです。
「...さっさと行け。」
「分かりました。」
ドールスさんは少し顔を赤くしてから一言だけ言うと、いそいそと自分のやるべき事に手を付け始めた。
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街を出て数十分。ようやく海に着いた。
「本当に大丈夫なのかなぁ...。」
「何が?」
「潜水艦に乗ったことが無いし、ましてや操縦なんてできっこないと思うんだよね。」
「うーん...まぁなんとかなるでしょ。」
すずは少しだけ考え...考えることを放棄した。どうしよう。もし全てマニュアルだったら私たち操縦できないからまた街に戻らないといけなくなる....。どうして海に着くまでに気づかなかったんだ私たち...!
「まぁまぁとりあえず乗ってみよ?」
「うぅ〜...。分かった...。」
ジーニアンモナイトに魔法のことを聞くつもりなためにニッコニコ...いや、ニマニマしているすずに手を引かれ、潜水艦に乗り込む。水が入らないようしっかりと入口を閉じてから操縦席に向かう。
「あ、これじゃない?」
「自動、運転...。」
操縦席にそう書かれたボタンが1つだけぽつんとあった。早速押してみると、目の前にステータスを開いた時や鑑定で見た時のような透明な板が現れた。
『行先を指定してください。』
「うわっ!す、すごい!」
「えーと...ナギフの海域!...でいいのかな?」
そうすずが言うと何かの機械音が聞こえだした。音が安定してきた頃、潜水艦が動き出した。
「「うわぁぁぁあ...!!」」
さっき海に来た時から知っていたが、この世界の海は綺麗すぎる。綺麗すぎて、結構遠くまで視界がハッキリしている。遠くにいる魚型魔物の群れまでしっかりと見ることができる。私が想像していたのは、前方2mも見えないぐらい真っ暗なものだったから驚いた。
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「「トマレ!」」
その言葉でこの潜水艦は止まった。それは私たちが発した言葉ではなかった。
「ここ、は...。」
長い時間をかけてやっと到着したのは海底にある門だった。
視線をさまよわせると、潜水艦の前...少々下に現実世界にはないすごく大きな貝殻で造ったランスと盾を触手で持ったアンモナイトの殻をまとっている魔物?が2体いた。
「ア、コノフネハドールスノデハ?」
「イワレテミレバソウダナ。トオッテヨシ!」
その2体はちょっと会話をしたあと、道を空けた。空いた道を潜水艦は自動で通っていった。
道を進んでいくと、様々な家が建ち並んでおり、まるで人間の街みたいだった。ただ、そこに住んでいるのが魔物か人かの違いだけだった。
「す、すごいところだね...。」
「まさに海底王国ってね。」
すずが海底王国って言ったが、まさにその通りだ。まるで魔物に人間が教えたかのように思えるが、人間がここまでこれるとは思えない。彼ら自身の力でこれほどまでの街を創り上げたのだろう。
しばらく徐行運転で観光しながら進むと、ようやく到着したようだった。
ジーニアンモナイトの、ジーニアンモナイトによるジーニアンモナイトのための王国。




