番外編① スズカさんの試練の塔チャレンジ
───スズカside
「...あやが出てこない...?」
私はあやが試練の塔に潜ってからずっと遠くから入口を監視していた。あやが出てきたらすぐに合流出来るようにだ。ただ、一つ誤算だったのが人の多さだ。
元より試練の塔に挑戦する者の数が多かったのだ。で、その挑戦者の実力を確認するエルフがあやにボッコボコにされて帰ってしまったので、現在挑戦者達がアタフタしているのだ。...あの時のあやの目が凛々しくてかっこよかった...!久々に見た気がする。確か...小6から見てなかったかなぁ...?
さらにもうひとつハプニングが起こった。どこかの街の騎士団がこの試練の塔にやって来たのだ。曰くあやを連れてこいと上から言われているのだとか。挑戦者達はあやのことを思って一致団結し、騎士団と論争をした。その時、私はちょっとそのいざこざを見てたんだけど、あやのことを思い出して、また監視していたんだ。
でも、いつまで経ってもあやが出てこない。
「...ちょっと確認しに行ってみようかな...?」
もしかしたらあやと合流できるかも...。それに試練の塔にはまだ入ったことがない。この機会に挑戦してみようかな?
そう思い、私は未だ試練の塔の入口付近で争っている挑戦者と騎士団を避けてこっそりと試練の塔に入った。
「ほぉう?ここが試練の塔内部...。」
中は凄く綺麗だった。この絨毯も現実だと結構値のする物だと思う。不思議なことに土が付かないその絨毯の上を歩き、遠く離れていた扉の前まで来た。
「ここにあやが...。」
会えたらいいな...。
そんな想いを込めて扉を開いたのだった。
───────
《森の試練の塔に挑戦者が現れました》
《エネミー設定──データ収集中──》
《エネミー設定──設定完了──》
《レベル設定──計測中──》
《レベル設定──LV.150に設定完了──》
《ボスエネミーレベル設定──LV.160に設定完了──》
《───》
《─》
─────────
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「んっ...。」
白い光を抜けた先に広がるのは神秘的な森。屋内のはずなのに屋外にしか見えないこの景色。不思議としか言いようがない。
「試練っていうぐらいだから敵が強いのかな...。」
若干不安になるが、あやに会うために頑張ろう。
──ゥゥン...スゥゥン...ドスゥゥンッ...
と思った矢先、何者かの足音が森に響く。それは段々と...いや、結構な速度でこちらに向かってきていた。それも多数。そして、その足音はとても重いものだった。
「あれはロックゴブリン...。」
普通なら岩山などでしか会うことの無いゴブリン。私はあやと離れて、図書館で魔物の図鑑を見ていた時にたまたま見たこのゴブリンは風、雷属性を無効にする。他にも、”ロック”と名前につく魔物も同じく無効にするから正に私の天敵といっても過言ではない。
「試練...なるほどね。」
どうやら私に課せられた試練は雷属性魔法を使わないことらしい。幸い、私は雷属性魔法だけしか使えないという訳では無いので、雷属性魔法以外の魔法を使えばいけそうだ。まぁその分戦力ダウンは必至だけどね...。良かったよ少しだけでも育てておいて...。
「ギャァア!!」
「ギジャア!!」
「《ウォーター・カッター》!」
───バシュッ!!
「ギャッ?」
「ギャァァァ!!!ギャァア!!!」
「うそっ!?硬すぎない!?」
どんだけ硬いのかこのゴブリンは...!スキルレベルが低いとはいINTは結構上げたと思うんだけど...。
「くっ...。逃げるッ!」
だが、タダでは転ばないのが私である。面白いことを思いついた私は追いかけてくるゴブリン達を尻目に都合のいい場所を探し求めたのだった。
この番外編は何話まで続くだろうか...。




