第201話 妖精と強欲③
「反射神経ゲームでもいいんだけどね。《焔狐》」
フォルトゥナの髪と耳、9本ある尻尾が燃え盛る。近づくだけで、私は燃えてしまうだろう。だが、こちらにだって装備があるのだ。
「《風神具》」
風神の加護がある翠色の魔法装備を纏う。これは風を纏うことで、物理的な衝撃を吸収する装備となる風神具を召喚・装着するスキルだ。でも、あくまでこれは保険だ。もし近づかれた時の為の物だ。
「《世界に恵みをもたらす樹》」
そして、世界樹のコアを用いて創った杖を召喚する。本命はこっちだ。
「ふふ...久々に見たわねその装備。」
「それほど本気なのですよ。《ウィンド・グングニル》!」
「《強奪》」
再び奪われてしまうが、今度は数で攻める。
「《ウィンド・トライデント》《ウィンド・アダマス》《ウィンド・クロノス》!」
1度目に放った槍型の風は奪われてしまったが、それを三叉槍の風の1つで打ち消し、残りの2つで突撃させる。そして、その後を追随するのは2つの風の鎌。
「《魔力消失》」
「なっ!?」
私の魔法が一部かき消された。魔法に使われていた魔力が消えたのだ。
「ふふふ...!私とてこの2000年のんびりしていた訳では無い!」
「なるほど...。これは分が悪いですね...。」
私は動けないため自己研鑽ができない。昔は私の方が遥かに実力が上だったが、今では少しではあるが追い抜かれている。その証拠に、《魔力消失》で消えてしまった魔法は風のトライデントと風の鎌ひとつだけだ。つまり、全ての魔力を消すほどの力がないということだ。私の魔法には魔力がたくさん込められているからね。
「...とはいえ、これ以上は魔力の無駄。」
「そうね。一度に全てを消すことはできないけど、魔力の無駄にはなるわね。」
《魔力消失》は相手の魔法に纏っている魔力を自身の魔力で打ち消すという荒業だ。成長したとはいえ、魔力保有量は私のほうが上なので打ち消す量が少なくなるのだ。それに、本人の魔力操作の技量もある。少し魔法の軌道を変えてやれば途端に打ち消すのが難しくなるのだ。
ということは、どちらにとっても不毛な争いになることは目に見えているということ。ならば、
「近接戦ッ...!」
「そうなるわよねッ...!」
───ドンッ!!...パァァァアアアアンッッ!!!
打ち付けた拳同士が反発しあい、その数瞬後に衝撃波が辺りに撒き散らされる。
「な、なんだ!?地震か!?」
「違う!上だ!!」
「何!?あ、あれは女王様!?」
「それとあれは誰だ?」
下はパニック状態になっていた。魔物は目の前にいるフォルトゥナに操られている為、気にせずに襲いかかっている。早くフォルトゥナを倒して統率を取らなければ危ない...!
「ふんッ!!たぁッ!!」
「はぁッ!やぁッ!!」
──ズパァァァンッ!!ドゴォォォオオンッ!!
私たちの姿が見えるのはほんの一瞬。互いにぶつかりあった時にのみ姿が見える。
「そろそろ倒れなさいッ!!」
「そちらこそ諦めなさいッ!!」
─────────
──────
───ドゴッ!!
「くぅッ...!はぁ...はぁ......。」
「ふぅ...ふぅ...諦め、なさい...!」
「っ...き、今日のところはこのくらいにしておくわ...!」
そう言うと、フォルトゥナは魔物が襲ってきた方角へ飛んで行った。
実力は均衡しているとはいえ、まだレベルの差はある。もちろんレベルの差があるということは、体力の差もあるわけで。だからフォルトゥナは諦めざるを得ないのだろう。束の間とはいえ、休憩ができそうだ。




