第199話 妖精と強欲①
──???side
「む、私が接触する前に...。」
妖精女王セレナーデが私の愛しのスカーレットと接触したようだ。私とあいつは敵対関係である。まぁ私が一方的にあいつの物を奪っていたという関係だが。
あいつのあの顔は面白かったなぁ...ってそうじゃなくて。
「...あいつもスカーレットを狙ってた。」
そう。あいつも私の愛しのスカーレットを密かに狙っていたのだ。あいつがその感情を隠していたが、愛情を向けられている本人以外は皆知っていた。皆というのは私と同じ七大罪の奴らだ。
「さぁて...。またあいつが欲しいモノを奪ったらどんな顔をするだろうか...。」
我ながら悪い顔をしていると思う。まぁ実際悪いことしか考えてないからな。
「あのエルフの国とやらも中々いい所らしいからな...。ついでに奪おうか。」
そうして彼女は自慢の狐耳をピコピコさせ、艶やかな尻尾を揺らめかせながら山に消えていったのだった。
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──妖精女王セレナーデside
「せ、セレナーデさんは──」
「セレナーデ。」
「...セレナーデさ───」
「セナ。」
「なんかもっと縮まってないですか!?」
「セナ。」
「いや、あの...」
「セナ。」
「ですから...。その...セナ...さん。」
「むぅ...。セナでいいのにぃ...。まぁ今はこれでいっか。」
目の前に座る龍人娘アヤネがすごい可愛い。どうしよう...。元々スカーレットちゃんのことが好きだったから尚更スカーレットが宿っているアヤネのことが可愛く見えてしまう。
「...せ、セナさんはどうして七大罪の座を蹴ったんですか?」
「うーん...。そうだなぁ...。七大罪同士って基本敵対関係じゃん?」
「え?そうなんですか?」
「うん。だからスカーレットちゃんが好きだったから私が七大罪になったら敵対するかもしれないでしょ?私は敵対したくないなって思ったからその座を蹴ったのよ。」
「なるほど...?」
イマイチよく分かっていないような顔をしている。そんな顔も可愛いとおもってしまう。
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その後も、アヤネちゃんのこれまでの話を聞かせてもらったりしていたらアヤネちゃんが寝たいと言ってきた。丸一日ぐらい起きないかもしれないと言われたので、何か持病でもあるのかと聞いたが、特に何もないようだ。
ちなみに、私はこの世界に存在する森の中での出来事なら見ることができる。だから、アヤネちゃんから聞いたのは森の外での出来事だね。いいよねぇ外に出れるって。私は世界樹に縛られてる...って言っても自分から縛ったんだけど、世界樹と繋がれてるからそんなに遠くまで行けないんだよね。その範囲が、現在の国の範囲でもある。
────コンコンッ!
「入りなさい。」
「はっ!失礼します!南防衛隊からの伝令です!」
「何?」
「突如魔物が大量発生したとの事です!」
「それは南防衛隊だけで解決できない問題?」
「そ、そうですね...。数が数でして...。それに普段は犬猿の仲であるはずのウォータルドッグとオレインモンキーが共闘しているので、何か裏があると見ていいと思います。」
「なるほど。では、東防衛隊と北防衛隊から最大限出そう。それと、西防衛隊を半数程度北に回してくれ。東は...最低限の守りでいいだろう。」
「はっ!」
なんだろう...。何か嫌な予感がする。それに、何故か憎いという感情が湧いてくる。何故だ...?




