第197話 迷子の迷子の子龍人さん
「はっ...はっ...はっ....たぁッ!!」
──スパパンッ!!
「プギィィ!?」
「プゴォォ!?」
走りながら斬ったオーク達をインベントリに入れながらも走るのを止めない。謎の女性?と戦闘した場所は試練の塔の裏側。つまり、戦闘音は表側にも聞こえてくるわけで...。だから、できる限りあの場所から逃げるように私は走っている。
「...はっ...はっ...はぁ...はぁ......ふぅぅ...。」
息を整え、辺りを見渡す。そして、自分が重大なことをやらかしてしまったというのに気づいてしまった。
「......ここどこ...?」
迷子だ。私もすずと同じく方向音痴なのにも関わらず、無闇矢鱈に初見の森を走り回っていればそりゃ迷子にもなる。なんなら方向音痴でなくてもなるだろう。なんでその事に気が付かなかったのか...。
「...考えていても仕方ない。適当に歩き回ろう...。」
ずっと同じ方向に歩いていけばきっとどこかに辿り着くだろう。
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「うーん...。一向に変わらない...。」
景色がずっと変わらない。私はずっと森の中を歩いている。地図で見た限りだと、この森は縦長に伸びているから、もしかしたら私は縦方向に移動しているのかもしれない...。だけど、それで方向転換して更に迷ったらもうどうしようもないから縦方向に歩き続けるしかない。
「...ん?あれは...塀?」
方向転換するべきか否かを迷っていた矢先、ある集落を見つけた。魔物が蔓延る森の中に村を作るなんて頭がおかしいのかそれとも村人が恐ろしく強いのか...。
「とりあえず行ってみよう...。」
あまり気は乗らないが、行ってみるしかない...。
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「む。誰だ?」
「あ、こんにちは...。森で迷子になったんですけど...。」
「あぁ...なるほど...。よくここまでたどり着けたな。まぁ竜人だし子供でも戦えるか...。」
「はぁ...。」
「よし。ちょっと待っていろ上に確認を取ってくる。その間塀の中で待っていてくれ。あ、もちろんそこら辺から動くなよ?」
「は、はい。」
何とか入れてもらえたようだ。それにしても、あの男の人耳が長かったなぁ...。そういう種族なのかな?
「待たせたな。上から通せと言われている。着いてこい。」
「分かりました。」
この人のいう上とは多分村長とかそこら辺の人だろう。歩いている中で思った。さっきは集落とか言ったが、それにしては広い。広すぎる。進めば進むほど家が豪華になっていく。村と言うよりはひとつの街ぐらいはあるんじゃないかな?おそらくそれ以上かもしれない...。
それに、ここの人達皆美形で耳が長い。その人たちから遠巻きにだが、ずっと視線を感じていた。悪意はなさそうだけどね?
そして、連れてこられた場所は何と大きな木。試練の塔で見たあの大きな木と比べ物にならない程大きい。当然太さもすごい。直径1kmぐらいはありそう...。
だけど、なんで気づかなかったんだろう?さっきまではあんなに綺麗な空が見えていたのに、急に目の前に現れたからビックリした。
「ん?あぁ世界樹には女王様の魔法がかけられていてな。遠くからだと見えないようになってるんだよ。で、今からその世界樹の中に入る。」
「えぇ!?な、なんでですか!?」
「上...その女王様がお呼びだ。」
「えぇぇええええ!?!!?!?!??」
「うるさいぞ。」
「はい...。」
な、なんで呼ばれたの私...!?何もやってないよね?い、インベントリに入ってるオークの肉で交渉できないかなぁ...?
こうして私は内心ビクビクしながら男の人について行ったのだった。




