番外編 とある龍の独白
───ピチャンッ......
真っ白で、何も存在しない空間に一体の龍がいた。
「...。」
その紅い龍は何処か遠い目をしながらひたすら時が流れるのをまっている。
──あれはいつだっただろうか...。
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私...スカーレットは気づいたらここにいた。何も無い、どこまでも続く真っ白な空間に。
──あぁ...私死んだのか...。
そうだ。私は死んだのだ。創造神ヘルヘブンによって殺されたのだ。あの時の私は何と愚かなことをしたものだな...。ならばここはどこだ...?...ん?
「────す。────。」
これは誰の視界だ...?この視界に映る水色がかった銀髪の少女は誰だ...?
この空間で何もする事ができなかった私は魔法、天法を用いて色々と検証して、理解した。...ここが1人の少女の意識の中だということに。これでも龍王と呼ばれていた身。こういう天法があることは知っている。
──[転写]
魂を他の魂に付与する天法だ。実際に行ったことなどないから推測になるが、恐らく今、私が陥っている状態みたいになるだろう。え?魂を他人に転写して何の得があるのか...だって?そんなものは知らない。私が創った訳じゃないから。
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どうやらこの意識の持ち主は少女のようであった。そして、ずっと一緒にいるこの水色がかった銀髪の少女はこの少女の番...人間でいうなら恋人らしい。
少しだけ興味を持った私は1人、意識の中でずっと少女の冒険を見ていた。
───いいな...。私も外に出たい...。
いつしかそんな気持ちが昂ってきた。あの綺麗な空を私の自慢の翼で飛びたい...。私のライバルであるマリエスタと一緒に話したい...。そして、動けないストレスを発散したい...。
だが、既に死んでいる私である。到底不可能な話であった。だが、そんな私にも希望があった。...それは、この少女の体を乗っ取ること。そうすれば、空を飛べて、マリエスタを探せて、自由に魔物を倒せる。
そう考えた私は早速新たな天法を開発し始めたのだ。私は意識体ではあるが、なぜか魔法や天法は使える。それらを利用して開発を進めていったのだ。
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そんなある日。この少女の心の声が聞こえてくるようになった。
喜怒哀楽様々な感情を乗せたその声は私を楽しませてくれた。だが、憎いという感情だけはなかった。
どこの聖人君子だって思ったけど、ちゃんと人間らしいこともしている。見てて楽しい。これが私の、この少女に対しての感想だった。
そして時はやってきた。
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この少女の度重なる進化によって、私の意識を押さえ込んでいた何かが薄れてきていたある日。
──アァ...憎ィ...!!
この少女から初めて聞く憎いという声。いつの間にか気に入っていたこの少女の助けになりたいと思っていた私は、魔法と天法の組み合わせで無理矢理意識を彼女と接続し、ある提案を持ちかけた。
──私を解放しろ
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そこからはまさに天に登るような気持ちだった。久々に外の空気を吸い込んで、魔物達を燃やし尽くした。だけど、無理矢理に繋いでいたせいか、この少女の体が崩壊しそうになるのだ。こればっかりはどうしようもない。魔法でも天法でも解決法はない。強いて言うならもっとレベルを上げろとしか言えない。しばらくは接続できないなぁ...。
と、悲しくなってくる。
──でも、久々の外は楽しかったなぁ...。
是非ともまた外で遊びたいものだ。




