第187話 試練の塔再び⑤
「キュイキュイ!!」
「あ、待っ...!」
「えっ!?ちョ!そのキノコ...!!」
パラボラアンテナを頭に乗っけた鹿は可愛く鳴くと、余っていた串焼きキノコを口に咥えて走り去っていった。
「あんのク○野郎メぇぇえええ!!!!!」
「うわっビックリした!」
「食べ物の恨みは怖いゾ!!その角全部へし折ってくれるワぁぁあ!!!!」
「どうどう...。落ち着いて?きっとまた見つけられるから...ね?」
「ぐぬヌ...!!次にあったら覚えとけヨ...!!」
「程々にね?」
今日は私がキレたりアイリスがキレたりと忙しいねぇ...。でも、あんな可愛い顔して串焼き全部持っていかれたのは私もちょっと腹が立ったかなぁ...。
「さっ!片付けたらもう行こうか!」
「むぅ...分かっタ...。」
こうして次の階層に向けて出発したのだった。
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「帰ったらキノコ爆食いしてヤル...!」
「あはは...。」
まだ言ってるよこの子...。あれから2時間程経って、現在は第24階層に来ている。
特に代わり映えのない新鮮な空気漂う森がここまで続いていた。ちなみにあの地獄マツダケは所々にあったのでその悉くを回収した。アイリスは帰ったら爆食いする予定のようだが、流石にそんな事はさせない。
「お!階段発見!」
「やっと見つかっタ...!」
これで何度目かになる黒色の階段を下っていく。そして、第25階層。
「でっ......か......。」
「いや、私からしたらどっちもどっちなんだよネ...。」
第24階層までは、皆が木と言われて真っ先に想像するものが森となっていたが、第25階層の木は大きさが違う。普通の木が高さ5m程だとすると、第25階層の木の高さはは最低でも20m程はあるだろうか...。すっごく大きい。
アイリスは体が小さかったから、普通の木も巨大な木も変わらないらしいけどね。
────ドスゥゥゥン...ドスゥゥゥン......!
「...ねぇアヤネ。」
「...なに?」
「...森が巨大になったらサ?」
「...うん。」
「...そこに住んでる魔物達ってどうなるのかナァ...?」
「...。」
「...。」
「「...。」」
「グォ?...グォォオオオオオオ!!!!!!」
察した私達の目の前に現れたのは18m程のオーク?だった。互いに目が合うと、オークは咆哮をした。
「グォォオ!!」
───ブゥゥンッ!!!
足元にいる私達目掛けて振り下ろされる金棒。言うまでもないが、大きさは5m程ある金棒だ。こんなのがあんな高さから振り下ろされれば衝突地点にいる私たちは...。考えるまでもないな...。
───ドゴォォォオォオオオオオオンンンンッッ!!!!
「うぎゃぁあ!?!!?」
「うみゅううウ!?!??」
なんとか避けれたが、その余波は凄まじいものだった。
──スタッ...
「あ、危なかった...!アイリスは大丈夫?」
「ん?アイリス...?」
「ほゃぅんにぁウ??」
「...なんて?」
「はぅゥ...。」
「あ、アイリスー!!!」
何語か分からない言葉を発した後、アイリスは私の手のひらで崩れ落ちた。
な、なんでこうなった...?振り回されすぎたのかな...?人形の中で魂がシェイクされたから...??
「とりあえず、インベントリの中に...」
とここまで言って、少し躊躇った。アイリスとの約束だ。ずっと外にいるって言ってたからインベントリに入れるのを躊躇ったのだ。だが、今はそれどころじゃないので、ちょっとした罪悪感を感じながらアイリスをインベントリに入れた。
「勝負だよデカブツ。」
「グガァァアアアアアア!!!!!!」
こうしてデカオークとの戦闘が幕を開けたのだった。




