第178話 原初の偽神メルフォーズ③
「...なんだろうか...この高揚感は...!」
まるで無限に力が湧いてくるような感じがする。血が全身を巡るように、この得体の知れない力も全身をグルグルと巡っている。
「これならば勝てそうだな!」
「マ、マオ...さん...?」
「ん?」
俺が手に力を入れたりしていると、前方から声がかけられたので見てみると、そこには先程まで俺と話していたヤークンがいた。彼はコボルトという種族の魔物プレイヤーであり、俺のこのゲームでの親友だ。
そんな彼が何かに怯えたような様子で俺に話しかけてきていたのだ。
「ヤークンか。どうした?」
「え、いや...あの...なんか......急に強くなってない...?ですか...?」
「なんだよ急に敬語なんて使ってさ。」
「...なんか使わないといけないような雰囲気、を感じたから...さ。」
「......そうか。」
やっぱあの声の主の力の影響だよなぁ...。だって俺もさっき敬語使ったし。
「こ、これからどうする、の?」
「決まってるだろ。──アイツを倒すのさ!」
「っそうか!その強さなら行けそうだしな!が、頑張ってこいよ!」
「おう!任せとけ!」
そうして俺が走り出そうと足に力を入れると...
───ビュンッ!!......パァァァアンッ!!!!
「ゥォオオオアアアアアアアア!!!????!!?!?」
『<〆▲д”/速イッ!?』
「アアアアラァァァアアアアア!!!!!!」
──グシャッ!!
少し力を入れただけでもソニックブームが起きてしまうほどのスピードが出てしまった。それに驚きつつも、あっという間に目の前に迫ったメルフォーズに向けて拳を突き出すと、ぐにゃぐにゃする何かを潰すような音を立てながらメルフォーズは吹き飛ばされていった。...約1km程。......あれまってそれどころじゃないわもっと行ってるわ...。おぉ......遂に見えなくなっちまったぜぇ...。
「「「「「「「.........。」」」」」」」
俺を含む皆が沈黙する。え?どうすんの?この空気。
「「「「「「うぉぉぉおおおおお!!!!!!」」」」」」
一拍置いて大歓声が上がるが、それよりも気になるのがひとつ。...メルフォーズ死んだん...?
「死んでおらんな...。」
「うおっビックリした!」
「ワシもこんな人数がいる中、時を止めるのも疲れるから要点だけ伝えるが、あやつは死んではおらぬ。お主にはできれば封印までしてもらいたかったが、海に落ちてしまってはのぉ...。」
「え?メルフォーズ海に落ちたの?」
「そうじゃ。生体反応を見る限りじゃと今はブラックアイの付近にある海溝の奥深くにまで吹き飛ばされてそこから1歩も動いておらぬようじゃの。」
「はぁ...?」
ブラックアイってどこやねん....。
「まぁしばらくは大丈夫そうじゃから約束通り力は返してもらうぞい?」
「あ、はい...。...くっ...!」
力がゴッソリと抜けていくのが分かる。あの万能感は凄かったなぁ...。いつか俺もあのような力を手に入れることができるのだろうか...?
「じゃあお主も頑張るのじゃぞ。」
「あ、ありがとうございます...。」
「あぁ...疲れた疲れた...。帰ったらまた寝ないとなぁ...。」
「ははっ...。」
いったい何者だったんだあのお爺さんの声の人は...。あの力でさえあのお爺さんの力の一部でしかないのか...。世界は広いなぁ...。
それにしてもブラックアイかぁ。そこまで行けたら少し調査でもして見ようかな...。
こうして突然現れたレイドボスは一瞬で吹き飛ばされ、この戦いは終わりを迎えたのだった。
久々の登場でしたね...。マオとお爺さん。




