第162話 犬猿の仲
──アイリスside
──ドゴォォォンッ!!
「......。」
土でできた槍が地面から真上に貫いた。あの地雷を踏んだら串刺しどころか、勢いが良すぎて突き上げられて、そのままもう一度槍の上に落下するだろう。だが、発動した地雷は何も捉えられなかった。...否。
「...むっ...。小石か...。よく見てるじゃないか...。」
「ふふふ!!人形の聴力舐めるなデスヨ!!1番聞き取りやすい形になってるからネ!!」
「ふむ...。要するに我の詠唱を聞いていたと...?」
「もちろン!」
「なるほど...。それは厄介だな...。」
私は質量感知という言葉を聞き逃さなかった。あれは私が踏んだら発動する罠を張るための魔法だろう。だからこそ、その裏をかいて小石を投げまくったのだ。...それも数cm級の石を。たった数cmしかない石でも、質量は存在する。その質量を感知して発動するのならば、利用するしかないだろう。
───ドゴゴォォオンッ!!!
──ドコッ!!ドゴゴゴンッ!!!
───ドゴゴゴゴゴォォォォォオンッ!ドゴゴンッドゴゴゴ!!!
ジャンプしながらあのシュリに近づいてもいいんだけど、今飛び出している土槍の罠を100%回避できるとは限らない。少なくとも分かっているのはあの土槍の出るスピードが私の走るスピードよりも速いということ。ジャンプ先でうっかり踏んでしまえば、私はそこで人生終了だろう。...いや、元より人生は終了している。なんなら人形生を歩んでいるところだ。
おっとそんなことを考えている暇はない。今は戦闘中だ。
──ドゴゴゴオォォォォドゴゴッドゴゴゴゴゴゴ!!!
結構なスピードで大剣を切っ先を地面と垂直にしながら横に振る。すると、砂が飛んでいき、設置されている罠が勝手に作動していく。
「《.........》。」
「っ...!?ま、まさか無詠唱でいけるとハネ...。」
「私だっ...我だって魔導を極めようとしている身。これぐらいできないと次の位階へと進むことができないのだよ。」
「ほーん...?」
魔法じゃなくて魔導?次の位階とやらも気になる。一体シュリは何者なんだ...?
───アヤネと同じくロリだけど全く違うタイプのロリだな。アヤネは可愛いロリだけど、シュリは全く可愛げのないロリだ!
「「あ?」」
「ヒィッ!!」
「ありゃ...心の声が漏れてたカ...。これは後で大変なことニ...。」
──ブルッ...!
急に謎の寒気がした。今戦っているシュリに対する武者震いか、後にアヤネに説教されることに対する恐怖か...。そのどちらであるか、私はまだ知る由もなかったのだった。
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「ココっ!」
「《短距離型:簡易式:転移》」
───ヒュンッ!!
私の振るうアヤネから貰った大剣が空を斬る。また転移だ。シュリの使う転移は本当に厄介だ。何せたった2秒で自分の目線の先に瞬間移動するからだ。
普通、転移といえば膨大なMPを消費し、膨大な時間を掛けて詠唱を行って、やっと人間1人を瞬間移動できるかどうかなのだ。それをシュリは2秒で、それも何度も何度も私が追い詰める度に使用する。...どうしろと...。
「...はいそこまで。」
「「っ!?」」
「あまりにも長すぎたから強制終了させてもらったよ。」
急に体が動かなくなった。その直後に聞こえてきた声はアヤネの声だった。だが、アヤネはこういう話し方はしない。よってもう1人の黒髪ニセアヤネの方だ。
「...なんの真似だ?」
「蜘蛛の真似かな...?」
「そういう事じゃなくてだな...?」
「ふふ!冗談。どちらとも決定打がないみたいだから、ね?」
「「........。」」
私はそう言われ、シュリを睨みつけると、向こうも睨みつけてきた。
「な、なんだか犬猿の仲みたいだね...?」
「それが何か分からないけど絶対違うからネ!!」
「それが何を表すか分からんが絶対違うと断言する!!」
「おお被った...!!」
ジークフリートさんだったっけ?その人が私とシュリの言葉が被ったことになぜか喜んでいるみたいだ。...よく分からないなこの人...。
 




