第16話 刀と防具とオネェと
「刀と防具作るぞぉ!!」
次の日、ログインした私はセルカディアの鍛冶師ギルドにいた。
「錬金鍛治の実験で水属性の刀作れたから次は火属性と風属性だね!」
まだ1つの属性だけの実験は成功したが、二属性が合わさるかどうかの実験はしていない。だから、これは実験でもあるのだ。
「で、防具だけど...。」
今回は防御力が無いと攻撃が掠っただけでも危ないかも?っと言うことで防具も作ってみる事にした。
その為にSPを2消費してスキル《裁縫》をゲットする。
「デザインをどうするかだよなぁ...。」
芸術とかに興味のない(鍛治による作品とかは別)アヤネは人を真似ることは完璧に出来るが、自分からやろうとはしない。
さらに、圧倒的にセンスの無かったアヤネは学校での美術の評価も低かったのだ。
要するにやろうと思えば何でも(物理的に無理なものは無理だけど)出来るアヤネだが、美術関係はからっきしだということ。
「服なんて作ったこと無いもんなぁ...。」
ゲームをやった事のないアヤネは他人に頼るという選択肢がそもそも無いのである。
「鍛治は暑くなるから涼しくなる服が良いよねぇ。かと言って薄過ぎると防具としてどうなんだって感じもするしなぁ...。」
服屋さんに行ってみようかな?
いやでも、刀は先に作っておこう。
いつものように錬金キットを広げ、その上に金床を置いて始める。
使う素材は葉狼の瞳とゲイザマリンにモグラの頭の炎、折れた斬丸。それから柄と鞘に毛皮なども装飾に使う。今までお世話になった折れた斬丸を鋳潰してゲイザマリンと一緒に混ぜて刀身にし、それに葉狼の瞳で風属性を付与する感じかな?
瞳は倒す時に一つ斬っちゃったからもう片方の一つだけしかないけど。
「頑張っていきますかぁ!!」
斬丸を鋳潰し、ゲイザマリンと一緒に燃やす。
そしてそれを錬金鍛冶で葉狼の瞳とモグラの炎を混ぜて叩いていく。
─────カァァァン!カァァン!カァァン!
────カァンッ!カァァン!カァァン!!
───カァァン!カァンッ!!
「現実では折り返しは凄い大変なんだよなぁ」
こっちでは折り返す為に作る切れ込みは自分で作った左手に持った鉄の刃を右手の金槌で叩き付けていて、それにより両手が塞がり固定出来なくてちょっぴり大変なのだ。
「...まぁ、向こうよりはマシだもんね...。」
現実世界でも、お父さんが不在の時は1人でもやってるしね。
独り言を言いながら時間を掛けて折り返していき、砥石で削っていく。
──
─
《職業:鍛冶師LV.3→4になりました》
《鍛治LV.5→6になりました》
《木工LV.4→5になりました》
《錬金術LV.1→2になりました》
《錬金鍛治LV.2→3になりました》
「つ、疲れたぁ...!いつもより時間が掛かったなぁ。名前...名前...君の名前は焰風斬丸だ!」
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【名前】焰風斬丸:品質7
【説明】折れた斬丸を鋳潰して、ゲイザマリンと葉狼の瞳、ファイアモルの炎を用い、再鍛錬にて生まれ変わった新生斬丸。柄と鞘にも装飾が施されていて拘りを感じる。ただし、残念な事に名前についてはいつも通りセンス無しなのである。
【武器スキル】《焰刃LV.1》《風刃LV.1》《焰風刃LV.1》
耐久:560
STR:175
AGI:60
【製作者】アヤネ
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翠がかった紅い刀身に柄は白い木材に毛皮を持ちやすくなるような形で巻いた物。そして、鞘は焔を象った物を彫刻して、そこに紅いゲイザマリンを錬金術で嵌め込んでみた。
うん!カッコよくなったね!
「すごい!武器スキルが多い!耐久が高い!!STRとAGIも高い!!!」
二属性による実験も成功に終わったので素材が揃ったら今度は瑞斬丸も強化しようかなと思う。
水によく合うのは...電気...?
...って、ん???
なんだよセンス無しって!!!ちゃんとあるでしょ!!
てか運営さんちゃんと作るもの見てたんだね...。
切り替えていこう!
次は防具だけど、私のセンスが無いみたいだから服屋さんに行ってみる事にする。
「すみませんゴルさん!」
「あぁ?なんだ?」
「この街の服屋さんの場所って知りませんか?」
「それだったら───」
ゴルさんに教えられた場所に向かうと、そこは...
特にこれと言った特徴の無い普通の街にありそうな服屋さんだった。
「あらぁん。いらっしゃぁい?」
「ど、どうも...。」
中に入るとそこにはモリモリの筋肉ダル...コホコホッ女装をしたオネェ口調の男の人がいた。
「え、えぇとぉ...。」
「どぉしたのぉ?」
「いえ!ちょっとここの服を参考に防具を作ってみようかなと!」
「なるほどねぇ?分かったわちょっといらっしゃい?」
「え?はい...。」
背筋に流れる汗に何となく嫌な予感を覚えるが、何が起こるかなんて考えたくもない私は思考を放棄した。
 




