第133話 集う力
「...ようやく話が終わりましたか...。」
あ、忘れてた。見ればすず達も私と同じような顔をしている。きっと彼女たちも忘れていたのだろう。
「...まさかこの私の存在を忘れていたなどということはありませんよねぇ...?」
「き、気のせいじゃないかしらぁ...??」
「う、うんうん!きっとキノセイダヨ!」
「うわぁ...2人ともすごい棒読み...。」
「ふっ.....そんなに私を怒らせたいのですか...。分かりました。もう本気で行きますよッッ!」
──ボォォウッ!!
──ビュンッ!!
一瞬で間合いを詰めてきたチュウ・オウは左右の剣...炎剣と岩石剣(水剣ではなく岩石剣にした)を振り上げていた。
「っ!?《サンダーブロック》!!」
「っ!?はぁッ!!」
──バヂンッ!
──ガァァンッ!!
すずは雷属性魔法の盾を召喚し炎剣を受け止め、アイリスはすずの肩の上で手に持つ霊斬丸で岩石剣を受け止めていた。...刀折れそう...。これは早めに止めないと行けないなぁ...。その為にも早くアイリス用の剣を造らなきゃね...。
「ほぅ...これを止めますか!しかし...まだまだありますよぉぉぉ!!!」
「《サンダードラゴン》《サンダードラゴン》《サンダーブロック・オブジェクト》《サンダーブロック・オブジェクト》」
すずがそれを唱えると地面から電気が真上に向かって走り、2つの何かの生物のような形になった。うーん...。あれは...龍?あ、日本の翼のない蛇型のドラゴンっていった方が分かりやすいかなぁ....?
もうひとつの魔法はあの龍達に自分にかけた《サンダーブロック》と同じ効果らしい。なんか龍の周りがパチパチしてるからね。
そして、それらが空中でふわふわ浮いて、口を開き...
──バヂュンッ!!
──バヂュンッ!!
「くっ...!それ、攻撃するんですね...。」
咄嗟に避けたがもうひとつの電撃は避けられなかったらしく右手で自分を庇ったチュウ・オウだったが、龍の放った電撃は中々の威力だったらしく、チュウ・オウは腕に傷を負っていた。
それにしてもあの龍の顔、どこかで見たような感じがする...。どこで見たっけなぁ...。まぁ今は戦いの最中だし、終わったあとでいっか...。
「私も忘れないでよネ!!」
──ザンッ!!
「グァァア!?!!?!?」
上からの攻撃に気を取られたチュウ・オウの足元から迫っていたアイリスによる斬撃が左足を襲った。
そして、見事に足を切り飛ばされたチュウ・オウは剣を地面に突き刺し、痛みに悶える。
チュウ・オウの左足の膝から血がドバドバ出てくる。それをチュウ・オウは炎剣で焼いて止血し、片足立ちでこちらを睨む。
「貴様ら...よくも...よくもやってくれたナァァァァァア!!!!!!!」
「おっと...これはやばいな...。これは鑑定しとこ《鑑定》」
思わず呟いてしまう。それほどまでにさっきとはまるで違う。強すぎる殺気が向けられたのだ。...さっきだけに。
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【名前】チュウ・オウLV.60 《BOSS》状態:集う力
【弱点】なし
【苦手属性】なし
【説明】比較的どこでも見るネズミ型の魔物の最上位種。従えるネズミ達が使う属性が使える為、注意が必要な魔物。追い詰められた時に発動する状態:集う力は従えるネズミのステータスの100分の1を自身のステータスに加える。
HP:57000/57000
MP:51400
STR:7132
VIT:6580
DEF:8415
AGI:7146
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「...ほんとにまずいかも。」
全てにおいてステータスが高すぎる。どれほど従えてたネズミがいたんだか...。唯一、私のSTRがチュウ・オウのそれに匹敵しているが、その他はてんでダメだ。ステータスだけ見れば、あのマリエスタの10分の1程度かな?すず達はどうするんだろう...。最悪私が...。
──このダンジョンには中ボス部屋が各所に点在している。その内で1番ハズレの中ボスはこのチュウ・オウであった。
初手の耐久ゲーと終盤の集う力が鬼畜ゲーだと掲示板などで話題になり、上位のプレイヤー達のほとんどは出会ってしまったら逃げるか、初手を頑張って耐えて、そこから集う力を使う前に倒すかのどちらかをするという。




