第132話 刀堂流奥義
───パチ...パチ...パチ...
「おめでとう。よくぞ耐えてみせた。」
上からの攻撃がやんだ後、控えめな拍手をしながらこちらにゆっくりと歩みを進めてくる男がいた。
「耐えた君たちに免じて私の自己紹介をしよう。」
「私の名はチュウオウだ。よくチュウボスなどと呼ばれているが、私の名前はチュウ・オウなのだ。そこのところ間違えないでくれたまえ?」
「「...。」」
なんかさっきの雰囲気と全然違うんだけど...。さっきはなんか...強者感があったんだけど...今は...そのぉ...偉い人...??
「...ナルシストみたいだわ...」
「それだ」
そうだナルシストみたいなんだ。うん。なんかスッキリした。
「...おい。なに勝手にスッキリしてるんだ貴様。これから私と戦うのだろう?そんな顔をしていたら...死ぬぞ?」
「っ!」
「...。」
急に殺気を飛ばしてくる男...チュウ・オウ。...確かにこれは気を抜いたらすぐに死にそうだ。
「ではまず小手調べに...」
「...!」
──シュパッ!!
まだ数十m離れていた。だが、そんな差も無かったかのように一瞬で間合いを詰めてきて、拳を突き出してきた。それを私は左手で掴み相手の勢いと、私のSTRのゴリ押しで投げ飛ばす。
───シュタッ...
「ほほう...。随分とパワーが強いですねぇ?小手調べは通用しなさそうだ。ここからは普通に行きますよ!」
「...。」
相手がちょっと本気を出してきたので、私も少しばかり本気を...と言っても刀を使うだけなんだけどね。
と、そう思いつつ刀の柄に手を当てる。
私がわざわざ納刀しているのは心を落ち着かせる為と刀を固定する為だ。持っている状態でも出来なくはないけど、納刀してても抜いてても私にとっては戦力的にはそんなに変わらない。抜いていないから弱いと思って襲いかかると一瞬で抜刀され、目の前で刀をこちらに向ける人と対峙する...といった事になるだろう。
居合や立合は弱いのではなく寧ろ間合いを相手に悟られないのと、利き手に負荷がかからないというメリットがあるからいい技だと思う。まぁ特殊技なのは否定しないけど...。
「《炎剣》《水剣》!ふふっ!これでも私はネズミたちの王ですから。全属性スキルは扱えますよ!!」
「そうですか...。」
ネズミの頭をしている上裸の男が言ってもカッコよくは無いかなぁ...。
チュウ・オウは右手に炎の剣。左手に水の剣を召喚し、こちらに向けてきた。
「では──」
「《サンダーストライク》」
──バヂヂヂヂッ!!
「グァァァア!!!!」
すずが唐突に放った雷属性の魔法がチュウ・オウの持つ水剣に直撃し、感電する。
「ぉ、おのれぇ...小癪な!!」
「私を忘れてもらっちゃあ困るわ!!」
「私もいるんだかラ!!」
「すず...アイリス...。」
「あやばかりに任せてられないわよ。...それにさっきのアレ。結構消耗激しいでしょ?」
「ぅ...。」
さっきのアレとは、上からの攻撃を防ぐために使った奥義だ。私の師匠から教えられた奥義は全部で3つ。それぞれ防御、回避、攻撃に焦点を当てたものだ。その内の1つである防御に特化した奥義を使ったのだ。前にイベントでも使ったが、あの時は周りの魔法が少なかった。そのため負担も少なかったのだが、今回は10分ぐらい奥義を使い続けた。だから負担も相当だし、今も喋るのが辛いぐらいだ。
「...まぁまだ余裕はあるけどね...。」
「「...何か言った??」」
「イエイエーナンデモナイデスヨー?」
最近アイリスまでも過保護になってしまったが、なぜだろうか?
「じゃあちょっと休んでようかな。」
「うん!任せといてよ!」
「ふふん!私の力思い知らせてやるんだかラ!!」
「...ようやく話が終わりましたか...。」
あ...忘れてた...。
 




