第131話 チュウボス
──ギィィィ...
軋むような音を立てながら開かれていく扉を潜りながら待ち受ける存在を視認する。
「.........。」
「「......。」」
ボス部屋は迷宮の中なのに森の中だ。その開けた場所の1番奥にはネズミの顔をした1人の男?が胡座をかいていた。
「...ねぇこれどうするの...?」
「...わ、私に言われてもねぇ...。」
「耐えて見せよ」
「「え?」」
急に男が喋ったと思ったら急に上から何かが沢山降ってきた。それを全て反射的に真っ二つにし、すずに近づく。
「これは魔法ね。」
「そうなの?」
「うん。普通あんな遠距離から魔法は撃てないんだけど...。」
「耐えて見せよ。戦いはその後だ。」
未だ目を瞑って胡座をかいた姿勢を崩さない男は私たちに指示をする。
要するにこれから攻撃するから耐えろって事だよね?
「よし!やってやるわぁ!!...あやが。」
「えぇ!?」
「大丈夫!私も着いてるヨ!」
「ねぇねぇアイリス。あれ、またできないかな?」
「あぁ...あの動かすやつネ!」
「うん。すずはアイリスを頼んでいいかな?」
「!もちろん!!」
先程上方向から飛んできた沢山の魔法は本当に数が多かった。その数は約200。手始めでこれならば、本番は何倍にもなるだろう。さっきはまぁまぁ余裕だったけど、流石に何倍何十倍のやつを受けれる余裕はないと思う...。だからアイリスに頼んで例のアレをやってもらう事にしたのだ。
「──《刀剣地獄》」
そう呟くと、私の左右から20本の刀、剣が現れた。私はその内の2本を操作し、私の目の前に持ってくる。
初めて《刀剣地獄》を使った時、1つだけしかまともに動かすことが出来なかったからアイリスと霊達に全て任せた。だけど、ちょっと拙くなるけど自分で2本動かして、他をアイリス達に任せることで私も役に立てるのだ。
で、私が動かさせるのは2本が限界。それ以上やると、1本がサボったり、全部が動かなくなったりする為、私はやらない。...まぁ慣れたらその内するかもしれないけど...。
「じゃあアイリス達任せたよ!」
「...すごい頼もしいわ...。」
どこから魔法が来ても対処出来るように刀、剣達が半球状に展開しながら相手の猛攻撃を待つ。私はその内側ですずのことを守る。
え?サボってるって?いやいや...もし...もしだよ?もし仮にアイリス達が魔法を捌ききれずに通過してきたらすずが危ないでしょ??...そういう事だよ。
「すぅ..........。」
──チンッ......
息を吐き、ゆっくりと納刀する。正直アイリス達がいても気休めにしかならないと私は思っている。いや、そう直感している。数はだいぶ減るだろうけど、すずや私を殺すのには十分なほどの数が襲ってくるだろうと...。
「───しかと見させてもらおう」
......──────!!!!!
「...!」
──スパンッ...!!
刀、剣と魔法同士がぶつかり合う音が森の中に響く。案の定、洩れた魔法がこっちに来たので黒刀を操って斬り捨てる。光魔法に関しては何故か当てるだけで霧散していくのだが、なぜだか分からない。これもいつか理由が分かればいいな...。
「...す、すごい...。あの自動迎撃システムみたいなのいいなぁ...。」
「......。」
すずが何かを言っているが、私は集中している為、無視する。ごめんねすず...。後でいっぱい話そうね。
──ギンッ!!ギィィンッ!ギギンッギギギギィィンッ!!
「......そろそろだね...。」
1人つぶやき、目を閉じる。左腰にある黒狼王の魔刀の柄に右手を置き、約7秒後にくる奔流に備える。
────4
───3
──2
─1
──パキッ.........ン............。
「......。」
──────!!!!
霊達に任せた黒刀の内の1本が折れたのを皮切りに、こちらにくる魔法の量がとんでもなく増える。
それを師匠から教わった奥義で斬っていく。
──パキッ!!....バキンッ!...
他のも1本...また1本と折れていく。その度に増えていく魔法。徐々に難易度を上げているようで少しだけ面白く感じてしまう。
──────!!!!!
なんとも形容しがたい轟音を立てながら迫る魔法弾の壁。それはすごく鮮やかで美しいものだったが、同時に恐ろしくも感じた。
「───ァァァァァァアアアアアアアア!!!!!」
声を上げながら斬る速度も上げていく。
──────!!!
─────────────
「──なんと...。これは...素晴らしい...。」
カッと目を開いたネズミ男は驚いたような顔で2人を見つめる。この男は別に魔法を放っている訳では無い。ただ、沢山いる子分にやらせているだけなのだ。
1万を超えるネズミの頂点に立つ者。それこそがこのネズミ男なのだ。ネズミ一体につき、ひとつの魔法を放たせたが、本来この程度は弱いの一言で済まされるのだ。しかし、それが無数に、それも同時に飛んできたらどうだろう。避けることは愚か、弾くことも厳しいだろう。
そのことを知っているネズミ男は驚いた顔を隠そうともせずにじっと見つめ続けていたのだった。
戦闘シーンだけ筆が進む...。




