第117話 忘れられていた人形
「...これは凄いね...。」
「だろ?」
『私はここから動けないからな。ヨイチマルが持っていることで私もヨイチマルの視界が見えるようになるのだ。』
「...なんか監視されてるみたいだな。...そのうち操り人形とかになりそうだ...。」
「......さすがにそれは...無いですよね?」
『うむ。私は無闇に殺したりはせんよ。』
一瞬、何かが頭を過ぎったが、すぐに忘れてしまう。...後で大変な事になりそうなんだけどなぁ...。
『じゃあそろそろお別れかな?』
「そうですね。」
「俺も目的のお宝は手に入れたしな。まぁまさかそのお宝がこんなにも凄い物だとは思わんかったけどな。」
『ふふ。褒めても何も出んぞ?』
「褒めてねぇよ。」
『そうか。迷惑掛けたお詫びに送っていくぞ?ここは私の領域だからな。』
「え?いいんですか?」
「そりゃ助かる。」
『...アヤネ。次会う時は覚悟しておけ?』
「.........はい...。」
うわぁ...。次会ったら絶対本気の勝負仕掛けてくるじゃん...。
『ではまた。《絶海領域》』
────ジャバジャバジャバ...
マリエスタがスキルを使用すると、私たちの乗っている船が沈み出す。
慌ててマリエスタさんの方を向き、ものの一つを言おうとするが、ヨイチマルさんに止められる。
「大丈夫だ。見てみろ。」
「...す、凄い...!」
沈んだと思っていたが、ちゃんと私達は濡れていない。船が大きな泡に覆われているのだ。
泡は少しずつ回転していき、形が横向きの卵のような感じになると、進み出した。
その速さは凄まじいもので、あっという間にさっきまでいた遺跡が見えなくなってしまった。
「...この速さなら10分程度か...?」
「えぇ!?...あそこまで行くのに2時間かかったのに...。」
そうこうしているうちに出発地点に戻ってきた。
「...なんか人多くないですか?」
「...十中八九さっきの戦いだろうな...。」
「...それは...はい。....納得です...。」
「な、なんだ!?船が急に出てきたぞ!!」
「ん!?あれはアヤネたんじゃねぇか!!」
「一緒に乗ってる男は誰だ!?」
「うぉぉぉお!!!アヤネたんが水着姿だぁぁぁあ!!!」
「あいつはたしかヨイチマルだった気が...。」
「ギルティ。」
「ギルティ。」
「ギルティ。」
「...てな訳で俺は逃げるとします。」
「あ、はい。」
「まてこらぁぁぁぁ!!!!!」
「アヤネたんと一緒に何してたんだようらやまけしからん!!」
「ぶっ殺す!!」
ヨイチマルさんは船から降りると、すぐに船をインベントリにしまい、人混みの中を駆け抜けて行った。
...さぁて。注目がヨイチマルさんに向いてる内に私も逃げるとしますかね...。
そうして私はいつもの装備に戻した後、こっそりとファレルに戻って行ったのだった。
っていうか船で2時間かかる所にまで影響を与えるってどんな戦いしてたの...?
───────
───
「あ!あや!」
「すず!」
感動の再会を果たした私達は抱きしめ合う。
「人多かったでしょ?大丈夫だった??何もされてない???」
「うん。大丈夫だよ?」
「ふふっ。可愛い...。」
可愛いと連呼しながら私の頭を撫でるすず。ここでいつもイチャつくなって注意されてるんだよね...。
...............ん?
「あーーーー!!!!!」
「うひゃあ!?ど、どうしたの!?」
「アイリス!」
慌ててインベントリからアイリスを出す。
「ツーン。」
「うっ...。ご、ごめんね?」
「ツンツーン。」
「...独特な表現の仕方ね...?」
「どこかの誰かさんがずっとずーーーっと暗闇に入れっぱなしにしたせいで私の精神が狂っちゃいそうでス!」
「...この度は誠に申し訳ありませんでした...。」
宿のベッドの上で土下座謝罪をする。
「私とっても傷ついちゃったナー。心がとっても痛いナー。」
「うぐっ....。わ、私に出来ることなら...なんでも...。」
「そう?じゃあ私に武器造ってヨ!」
「...え?武器...?」
「うん!前に私が持ったかたな?それでもいいんだけどちょっと大きいからサ。」
「...なるほど...?」
「確かにそれはいいんじゃない?あやもそのぐらい朝飯前でしょ?」
「それはそうだけど....。本当にそれだけでいいの?」
「うん。それで今回の件は不問にしてあげル。」
「っ!ありがとう!」
「え、ちょっ!?苦しイ!」
「...私も谷間に挟まりたい...。」
すずの発言は聞かなかったことに...。
 




