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第107話 怪しい男



「......。」



──タッタッタッ....



あの声はどこから...。悲鳴をあげ、助けを求めるということは何かに襲われているってことだよね...?

しかも、聞こえてきたのは小さい子供の声だった。



「...他の人も動いてればいいけど...。」



私はある問題を危惧している。それは...



──傍観者(Bystander)効果(effect)



このゲームにも実装されていたら恐ろしいことが起こる。


傍観者効果とは集団心理の1つだ。人間は、自分の他に傍観者がいる時、率先して行動をしないものだ。そして、それは傍観者が多ければ多いほど効果は増し、結果、誰も助けないといったことが起こる訳だ。

実際に現実世界でも見る。学校で起こる小さな出来事から始まり、誰かが通報すると思って誰も通報せず、大きな事件に発展するといったことまで...。



「......期待しない方がいいかも...。」



さらに言えば、今向かっているのはスラム街だ。ゲームだから通報する手段もない為行動を起こす人は居ないと思っていいだろう。



「...たしかここら辺...いたっ!!」

「...んぁ?誰だおめぇ?...ちっ竜人か...。」

「んー!!んーーんーー!!!」



男の肩でじたばた暴れる子を見つけた。口に布が巻かれているため叫んでもくぐもった声しか出ない。



「...その子を下ろしなさい。」

「はっ!断るぜ。報酬もらうんでね!」

「...。やっぱり力づくだね...。」

「やれるもんならやってみな!生憎おめぇは強ぇようだからな!逃げさせてもらうぜぇ!?」



そういって男は右手に握っていた玉を地面に投げつけた。



───バキッ...!.シュゥゥゥゥゥゥ.........



「っ!?煙幕!?」

「あばよ!」

「んーーーー!!!!」



男が走って行った方に煙を抜けた頃にはもう既に男は消えていた。


...逃がした...。


あの時の男の子の泣き顔...。絶対助ける。



「───《龍の力》」




手足が龍の手足になり、大きな翼としっぽが生えてくる。



──ビュンッ!!



強めに跳ぶと一気に3階の屋根の高さまで来た。そこから翼を広げ、空高くまで登っていく。


──バサッバサッ...!



「...逃げられるとでも思わないことだね...。」



私は目がいい。上空100mからファレルの街全体を見下ろす。そして、その中のスラム街を中心として子供を担いでいる怪しい男を探し出す。



「...みっけ。」



男は丁度南西の防壁の上から出ようとしていた。



──ヒュォォォオオオオ!!!!



翼を少しだけ折りたたんで凄まじいスピードで滑空する。男は子供を抱えているのにも関わらず20m以上はある高い防壁を軽々降り、そのままの勢いで走っている。...身体強化でもしているのかとてつもなく早い。


男は真っ直ぐに森へ向かっていて、もうすぐで森に入るという所まで来ていた。入られると捜索が困難になるからもっとスピードを...!



──ヒュンッ......



「...っ...!」



空気抵抗が凄い...!だけどあと少し...!



「その子を返せぇぇぇぇぇえええ!!!!」

「っ!?」



──バサッ!!...ビュオオオ!!!!



「くっ!目がっ...!!」

「おいで..。」



翼を目一杯広げて減速する。そして、余った勢いで男が担いでいる子供を優しく奪う。


「クソッ!!俺の報酬が!!」



──ヒュヒュンッ!


──ガキッ!キンッ!



いったいどこに隠し持っていたのか、無数に飛んでくるナイフを男の子を両手で抱えている為、足で弾く。龍化した足なら余裕だ。



「ちっ!...報酬なんていらねぇ...!」

「あっ!ちょっ!」

「もう会うことはねぇだろうから安心しな!!」



男はまたも煙幕を使って逃げ出した。



「...何だったんだろう...?」



よく分からず首を傾げる彩音だった。



──────────────────────


誘拐犯side



「...あの竜人何もんだよ...ったくよ...。」

「困りますねぇ。」

「っ!...なんだ依頼主か...。驚かせんな。」

「これはこれはすみませんね...。ですが。」



──グサッ...!!



「っ!?て...めぇ...!」



俺の胸に刺さる真っ赤な剣。



「私の依頼は今日までに子供を調達すること。」

「ぐっ...。」

「今すぐに欲しかったのに逃しちゃうなんてね。残念ですよ。」



ローブ姿の男は俺に鋭い視線を向ける。



「安心してください貴方の死体は無駄にしませんよ。」

「っ!何...をする...気だ...!」

「ふふふ...。貴方の死体をちょこっっっっとだけ改造させてもらうだけですよ。本当は子供の方が良かったんですけどね?」

「...外道が...。」

「あっはっは!...それは貴方も同じこと...。では...。」

「クソガァァァァァァァアアアア!!!!!!」




もう一度貫かれながら俺の意識は無くなった。




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