第106話 お魚大好きアヤネたん
翌日。
早めにログインしておこうと、私は1時間前の夜8時にログインしていた。ちなみに久々の宿で新鮮な気持ちだった。
宿から出て、集合時間までまだまだあるという事でここ、ファレルを散歩しようと歩き出した。
街は昨日と変わらず新鮮な魚達がズラっと並んでいる。潮の香りがしてとても気持ちがいい。リアルなら髪がベタついてヤダ!みたいなことになりそうだけどゲーム内では関係ない。
早速そこら辺の屋台でサンマらしき魚の塩焼きを買ってみる。
「お!珍しいなぁ!竜人の嬢ちゃん!1本どうだい?」
「1本下さい。」
「まいど!嬢ちゃん見た感じ旅人みたいだがここはどうだい?」
「そうですねぇ...いい所だと思いますよ?」
「そうかい!そりゃ嬉しいねぇ!」
屋台のおじさんと談笑しながらサンマらしき魚の塩焼きにかぶりつく。
──はむっ...!
「...美味しい!」
「はっはっは!取れたてピチピチの魚を使ってるからねぇ!それと焼き方にもコツってもんがあるんだよ!」
「へぇ...そうなんですねぇ...。」
関心しながらも魚から目が離せない。...それほど美味しかったんだから仕方ないでしょ...。別に私が食いしん坊って訳じゃ無いんだからね??
「ただ...」
「ただ...?」
自分を誤魔化すように話を強引に戻す。
「この街って猫耳の人...じゅうじん?が多いですよね。おじさんもそうですし。」
「そっちか!...確かにそうだな!猫獣人にとって新鮮な魚ほど食べると力が湧くんだよ!」
「そうなん...です...?」
「あぁ!」
猫って別に魚が好きって訳じゃ無かった気がするけど...。まさか運営さん間違って設定したんじゃ...
「...嬢ちゃんどうしたんだい...?」
「っ!い、いえ...なんでもないです。」
「そうかい。この街を気に入ってくれたみたいだしもう一本おまけだ!」
「本当ですか!?」
「お、おぅ。なんかえらい食いつきやな...?」
「はっ!?ち、違います!私の友達にあげるんです!」
「はっはっは!まぁそういうことにしとくぜ!」
「くぅぅ...!!」
「じゃ!また寄ってくれよな!」
「...はい...。」
もう一本を受け取っておじさんと別れる。その頃には1本目は既に無くなっていた。...もう一本あるし食べようかな。
「...ダメダメ!...これはすずにあげるものだ...。」
私は別れを惜しむようにインベントリに仕舞い、歩き出した。
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───
「............ここどこ...?」
なんですかその目は。また迷子になったの?とか言わない!私だって気にしてるんだから...。
...っていうか何かを忘れてるような気がするんだけど気のせいかな...?
「...まぁいいや。」
あと少しで出てきそうだったけど出てこなかったので今陥っている状況を打開する為、思考を巡らす。最近迷子になり過ぎでは...?...いや、いつも通りか...。
「...うわ...なんか自分で言ってて悲しくなるなこれ...。ん?」
頭を振って来た道を戻ろうとするとどこからか小さいながらもハッキリと聞こえる程度の悲鳴が聞こえた。
「...嫌な予感はしなくもないけどこれは行かないとだよね...。」
そうして彩音は走り出したのだった。
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???side
「...クソッ!またやられたか...。」
木の影から自分が創り出した物が倒されるところを見ていたローブ姿の男がいた。
「忌々しい冒険者共よ...次々と私の物を...」
ブツブツと呟く男は苛立ちを隠さずに思考する。
「...次はどうするか...ファレルで実験でも......」
──ニタァ....
その男は新たな獲物を発見したと言わんばかりの傍から見ると気持ち悪い笑顔でファレルに向かってスキップしていったのだった。
 




