第104話 港街ファレル
「アヤネさん達は迷ってたんですよね?」
「...まぁそうなんだけど...。」
「...だけど...ねぇ?」
「...うん。」
「え?どうしたんですか?」
私達2人はチーかまくんが失言をしているのを理解していた。逆にチーかまくんは気づいていないようだ。
「なんで迷ってるって知ってるの?」
「っ!?」
「貴方とはここで再会した訳だけどその時はまだ迷っているということまでは知らないはず。」
「...。」
「もう一度聞くわ。なんで迷ってるって知ってるの?」
「.........誠にすみませんでしたぁぁぁあ!!!!!」
とんでもないスピードでその場に土下座し、謝罪するチーかまくん。
「全て話しなさい。」
「...はぃ...。」
すずがチーかまくんを見下しながら命令する。なんかかっこいいな....。
チーかまくんがたどたどしく全てを話した。
と言っても極々単純で私に結婚を申し込んだ時からずっとストーカーしていたらしい。
「...改めて謝罪します...。申し訳ございませんでした...。」
「「...。」」
「...いいよ。」
「っ!!」
「あや!?」
「そのかわり!私たちをファレルに案内すること!それが許す条件だよ。」
「!分かりました!全力で案内させていただきます!!」
こうして1人彩音の犬になったのだった。
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「「着いたぁぁぁ!!」」
「お疲れ様です!また何かあればなんでもお申し付けください!!」
「分かった。ありがとね。」
「はっ!ありがたき幸せ!」
──スゥッ...
まるで最初から存在していなかったかのように消えていったチーかまくん。これは魔物との戦いで分かったのだが、彼は忍者だったのだ。
案内されている最中、突如消えたと思ったら次の瞬間には襲いかかろうとしていた魔物の懐に入っていた。装備こそインベントリに仕舞っていて忍者らしくないが、ちょっとだけ質の良い苦無を使っていることから忍者だと分かった訳だ。
口調もだいぶ変わって、執事さんみたいな感じになってた。まぁ見た目から推測すると高校生あたりだと思うんだけどね...。
で、彼はこの口調は作っているそうだ。...まぁ実際にそんな人がいるのは知ってるけどあんまり使わないよね...。え?そんな人が本当にいるのか、だって?...すずの家に執事さんがいるんだよね...。すずの家にお邪魔する時たまに見るんだよね。すずのお父さん付きらしいけどそこら辺はよく分からないや。
「さ!あや!入ろっか!」
「うん!」
すずの言葉にハッとして返事を返し、先に進んでいたすずの元に走っていった。
ファレルは港街だ。街中では新鮮な魚が沢山並んでいて美味しそうだった。...後で何か買お。
「ねぇあや。」
「んー?」
「海に行きましょう!!」
「え、そりゃまた急だね...?」
「だってあやと一緒に海行ったことないもん!」
すずの唐突の提案に私はどう返すか悩んでいた。別に海に行くのはいいんだよ?すずと一緒だし...。でも海じゃ私が足でまといになっちゃうから出来れば行きたく無いんだよね...。...すずは私が守りたいし...。
「じゃあ俺が守ってあげようか?」
「えっ?」
心の声に答えるように聞いた事のある声が聞こえてくる。
「ヨイチマルさん!?」
「...なんでトッププレイヤーがこんな所に...。」
すずがブツブツ何かを呟いているが聞こえないのでヨイチマルさんの話を聞く。
「アヤネは顔に出やすいよなぁ...。どうせ私が守れなくなる!とか思ってるんじゃないのか?」
「うっ!」
「そうなの?」
「...うん。」
「そこで俺が守ってあげようかと言ってるわけだな!あぁ、もちろん俺にも海で探してる物があってな。ついでだよついで。」
「なるほど...ではお願いできますか?」
「おう。任せとけ。」
「ありがとうございます!」
「じゃあ今日はもう遅いし明日の夜9時からどうだ?」
「あ、それでいいです。」
「分かった。明日の夜9時にこの街の広場で。」
「分かりました。では。」
「おう。じゃあな。そこのスズカもな。」
「は、はい。」
そうして私達3人は明日夜9時に集合する約束をしたのだった。




