第97話 恋人繋ぎと新たな騒動
あの後、あの男性を皮切りに色んな人が私たちに近づいてきた。そして皆、例外なく私たちの名前を知っていた。私は優勝したから知ってる人がいてもおかしくない...かもしれないけどすずは何でだろ?あのログアウト事件が原因なのかな?
「次の街に行くんですか?」
「えっと、はい。」
「気をつけてくださいね!応援してます!」
「はい。ありがとうございます。」
最後の少女を相手にして、ようやく人混みを抜けた。後は真っ直ぐ南門に行くだけだ。
「...はぁぁぁぁぁあ...疲れた.......。」
「あはは...。そうだね...。慣れないせいか余計に疲れるよ....。」
「あやも有名人になったねぇ...。」
「そんなこと言ったらすずもじゃん!」
「まぁそうなんだけど...。」
「てかなんで皆すずのこと知ってるんだろう?」
「多分写真集じゃない?」
「あぁ!そういえば言ってたね!」
「結構売れてるらしいし。そのお陰で私の懐も...。」
「そっか。私も早く工房が欲しいなぁ...。」
「もう1軒買う?」
「...いや。今はいいかな...。」
ちょっと揺らいじゃったけどいつまでもすずに甘えっぱなしじゃいけない。それに自分で集めたお金で工房を買うということが達成感があっていいと思う。
工房を買ったらちゃんとした設備を整えて...それから造ったものを飾る棚とかも置いて......それからそれから...
「もうすぐで門だよ。」
「あ、ほんとだ。」
将来的に買う予定の自分の工房のことを妄想していたらもう門に着きそうになっていた。
「ファレルまでですね。こちらに手を置いてください。......はい。ありがとうございます。気をつけてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。」
「ありがとう。」
優しそうな男性の門番さんに挨拶をし、王都を出る。入る時と同じく検問があったが、特に何事もなく王都を出ることが出来た。
「ねぇあや...。」
「なぁにすず?」
「......手...繋いでいい?」
「いいけど?」
「やった!...じゃあ。」
──ギュッ...
互いの指を絡ませあうような感じで握ってくるすず。...あまりそういう面で疎い私でも分かる...これは所謂恋人繋ぎというものでは...?
「すず...?」
「なぁに?」
「...こ、これって」
「ん?ただ手を繋いでるだけだよ??」
「.........や、やっぱりなんでもない。」
「そう?分かった。」
少し...いや、凄く圧を感じたので指摘するのを止めた。...手を繋いでるだけだし...そこまで気にしなくても...いいよね?
彩音が歩きながら悩んでいる隣で涼香はひっっっっじょーに満足したような笑みで歩いていた。それはそれは嬉しそうで、今にも鼻歌を歌いそうな程に....。
─────
──
「ブモォォォォォオ!!!!」
「くっ!!今だ!ヤれッ!!」
「「おうッ!!」」
───ザンッザンッ!!
大盾で防いだ男の掛け声で同時に動いた他の男達は自分たちのよりも数倍大きいイノシシを斬り裂く。
「フゴッフゴッ!!」
「皆俺の後ろに!!《ワイドシールド》!!」
──ダァァァァァアンッ!!!!!
スキルで展開された透明な壁に衝突する3m越えのイノシシ。それによって脳震盪を起こしたのかフラフラとなって倒れた。
「やっちまえ!!」
「りょっ!!」
「任せろ!」
──グサッ!ザクッ!ズパンッ!!
「...ブモォォォォォオ...!!!」
「はぁ...はぁ...何とか...勝った...?」
「やべぇなここ...急に強くなってねぇか?」
「...それな...。そういうもんなのか?」
「...いんやそんなことは無いはずだぞ?情報屋曰くここらでイノシシなんて出るわけねぇからな...。」
「じゃあなんでいるんだよ...。」
「知らん。」
「知ってた。」
「お、おい?」
「どした?」
「なんか動いてねぇか...?」
「てかあんな大きかったっけ...?」
───ビキ...ビキビキッ!!
「ブモ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!」
また新たな騒動に巻き込まれそうになる彩音達であった...。
○久々のスキル紹介○
久々のスキルは《ワイドシールド》です!
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【名前】《大盾術》:ワイドシールド 消費MP:1枚で100消費
【効果①(LV.1)】自分の大盾の周りにスキルレベル×50cmの透明な壁を張る事ができる。なお、シールドの強度は所持者のDEFに依存する。
【効果②(LV.5)】シールドの形状をある程度変える事ができるようになる。
【効果③(LV.☆)】連続して発動することが出来るようになり、するとシールドの強度が増す。
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