第10話 リーフェルと第2の街セルカディア
リーフェルが吠えると森が騒がしくなった。
───ガサガサガサガサガサガサ...
いたるところにある木から葉が擦れる音が聞こえてくる。
「な、何!?」
「来るっ!」
「えっ?きゃあ!?」
─スパンッ...ドサッ...。
「ふぅ。危なかったぁ。」
「びっくりしたぁ...。ありがと、あや!」
「どういたしましてすず!」
私の斜め後ろにいるすずの背後にある木から奇襲しようとしたが首を斬り落とす。
「ねぇすず〜。」
「何?」
「周りにいる狼達任せて良い?」
「どのくらい?」
「1時間...いや30分。」
「......分かった。任せて!」
「ありがとう!」
「いいのいいの!私そこまで活躍してなかったからMPもまだまだあるし言っちゃえば回復ポーションもあるからね!」
「うん!じゃあ行ってくる!」
「気をつけてね!」
そっちこそ!と返しながらリーフェルと対峙する。
制限時間は30分。ここはすずを信じて私は目の前の敵にだけ集中しよう。
『ガウッ!』
リーフェルは突進ではなく2足歩行で両手の爪で攻撃をし始めた。
それを刀でいなす。当たらないことにイラついてきたのか、攻撃が雑になっていく。
だが、それに伴って速度が上昇する。
──ギィィンッ...キィンキンッキィィンッ...!
防戦一方だがこの間に対策を考える。
まず前提として、残っている左目は斬らない。見えないことによる暴走をさせたくないからだ。
...それは建前で本音は目の素材も欲しいから...。
リーフェルは毛深い。それも刃が全くと言っていいほどに通らない。首も胴体も脚も、全てが毛に覆われている。
だが、体内はどうだろう。
体内に毛なんてものは生えない。口を開く牙による攻撃の時に体内を攻撃出来るのでは...?これはハイリスクハイリターンになるだろう。
2つ目の案として、同じ箇所を何度も何度も斬りつけること。同じ箇所とは言うが技量もいるし、時間が掛かりすぎる。だがリスクは低いだろう。
早めに終わらせるつもりなら1つ目なんだろうけど、ちょっと無理がある。
よって2つ目を選択。
方針を決めたら次は狙う箇所。
1番無難なのは首だろう。脚は動き回るから論外だし、胴体も致命傷になるとは思えない。
よし!いざっ!!
首には葉っぱが沢山巻きついている。だが、いくら巻きついているとは言っても葉っぱだ。葉と葉の間に隙間はあるだろう。
そこを狙えば良いだけだ。
今まではいなしていたが、攻撃出来るように避けるようにする。
「...ふっ!」
──ザシュッ...
袈裟斬りのように振り下ろされる右脚を最低限の動きで左に避け、両手で持った刀で斬りつける。
それによって緑の毛が空気中を漂う。
────
──
何十分かかっただろうか...。それとも何時間...?そんな事を数回、数十回と繰り返すとついに緑色の毛に血が滲んできた。
「ようやく...ですかっ!」
──ザンッ...。
「浅いっ...!」
流石に数回やってから以降首を逸らしたりして躱してくる。
その事に嘆いていると、苦戦していると聞き慣れた声が後ろから聞こえてくる。
「《ウォーターカッター》!!」
水の刃が後ろから飛んでくる。
それを躱すとそれはそのまま首に直撃した。
『ギャウッ!!』
怯んでいる内に傷口が開ききった首に冷静に、そして正確に1太刀入れる。
──スパンッ...。
『ギャッ......。』
ドスゥゥン...。
リーフェルは倒れた。そして...
ピシピシピシ...パキンッ...!
数十回も中々斬れない毛を斬り付けたことによってついに刀が折れてしまった。
「今までありがとう...君のおかげで助かったよ...。」
「私そういうところ好きだよ。」
「えぇっ!?ど、どうしたの急に?」
「なんでも〜?...そういえば名前付けてたっけ?」
「...。」
よし!君の名前は斬丸だ!!
...そこ!ネーミングセンス無さすぎwwwとか言わない!
「...付けて無かったのね。」
「斬丸だから!!」
「今考えた感満載の名前ね。」
「うぅ〜!!」
《ワールドアナウンス:ファンストの森のBOSSが倒されました》
《LV.7→9になりました》
「ん?なんか来た...。ワールドアナウンス?」
「プレイヤー全員にアナウンスされるメッセージの事だよ。」
「そうなんだぁ。」
リーフェルはとても強かった。刃も通さない毛に魔法──は今回超近接戦闘だったからか使わなかったけど。私にとって不利な相手だった。
すずが居てよかった。
すず大好き。
「ふぇっ!?」
「どうしたのすず?(私言葉に出してたっけ...?)」
「い、いや、なんか急に恥ずかしくなって...。」
「...ふぅん。帰ろっか!」
「うん!」
そう意気込んだはいいものの、まず迷ってここに来た訳だから当然帰り道も分からず...。
結局森から出れたのはリアル時間で2時間後。
しかも場所は始まりの街ファンストではなく第2の街セルカディアの近く。
意図せず次の街に来てしまったのだった。
「...これは...結果オーライでいいのかなぁ?」
「いいんじゃない?街があるってことは街道もあるから戻れるよ!」
「逸れずに行ければねぇ?」
「うぐっ...。それはあやもじゃん!」
「あははっ!それもそうだね!」
そうして私達は第2の街セルカディアの中に入ったのだった。
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【名前】アヤネLV.7→9
【種族】ヒューマン
【職業】鍛冶師LV.2
HP:1300→1400
MP:800→900
STR:18
VIT:10
DEF:10
AGI:12
INT:10
DEX:18
MND:10
【スキル】《鍛冶LV.4》《剣術LV.5→6》《身体強化LV.3→4》《採掘LV.5》《伐採LV.2》《木工LV.3》《鑑定LV.3》《錬金術LV.1》
SP:20→30
【装備】初心者の服、ショートソード、斬丸(破損)
【称号】『葉狼を撃破した者』
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【名前】『葉狼を撃破した者』
【効果】狼系種族に対する与ダメージ増加(中)
【取得条件】リーフェルを倒す
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あの掲示板回と今回の話でおかしいと気付いた方もいらっしゃるかと思います。
どこかにある天の国にて
???「誰がBOSSは一体だけと言った??」
リーフェル「そうねぇ。私たちは一心同体。言うなれば番というやつですわ!」
???「リーフェル...。」
リーフェル「あなた...。」
要するにBOSSは♂と♀の2体いたという事ですね!
ちなみに♂のBOSSはリーフェルの為に餌を探していたところに出くわした攻略組によって討伐されました。
ワールドアナウンスは2体倒されると流されます。
もしかしたらまた出てくるかも...?
そして称号なんですが、これは♂の方を倒した方達もGETしています。
称号の名は『森狼王を撃破した者』。
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【名前】『森狼王を撃破した者』
【効果】狼系種族に対する与ダメージ増加(中)
【取得条件】???を倒す
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