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第六十一話 最後の二人はただならない雰囲気だ

 那波(ななみ)美羽(みう)(さい)の近くへと駆け寄ってくる。

 

 「サイ!」

 「さい君、その傷っ」

 

 二人を倒した後すぐに膝をついていた才が顔を上げると、どうやら那波と美羽の方も勝利していた様子だった。

 

 「ちょっと、無茶したけど、大きな傷じゃないよ」

 

 やや息を切らせて言う才の左腕をそっと掴んだ美羽が、血を流す肘先の辺りを観察する。

 

 「うん確かにぃ、これなら大丈夫そう」

 

 それだけ言うと、美羽はその血の付いた服の上から手を当てる。

 

 「あっちは大丈夫みたい、なんかこっちの治療を待ってる」

 

 厳治(げんじ)たち残る三人の方を警戒した那波がそう告げると、美羽は集中するためにすっと目を閉じた。

 

 「外傷治癒」

 

 冒険者らしい端的なキーワードとともに、美羽の『治癒魔法』が発動し、才の左腕はそれ程の時間も経たずに癒えていく。

 

 「どう?」

 「ん……、大丈夫……うん。ありがとう、みうさん」

 

 頷きながら左手を動かす才を見て、美羽は横に置いていた盾と戦槌を拾いながら再び戦闘態勢に戻る。

 

 才も続きながら那波が警戒を向けていた方を見ると、厳治を除いた残りの二人が、ちょうど歩き出したところだった。

 

 「双子……かな?」

 「そうかも」

 

 思わず才が呟いてしまう程に、そっくりな顔をした男女だった。先ほど戦った中の赤髪剣士二人もよく似た顔立ちだったものの、こちらは“似た”どころではなく“同じ”顔だった。

 

 ただし薄茶色の髪はそれぞれざんぎりの短髪と良く整えられたセミロング。そして簡易な軽鎧越しに見える体型から、男と女であろうと見当がついた。

 

 「あの二人も『武器召喚』使いかな?」

 「どうかなぁ、あの手甲が武器なのかも」

 

 那波が無手のまま歩いてくる二人を見て言うと、目を細めて観察した美羽は否定的な返事をする。

 

 美羽が指摘したように、徐々に近づいてくる男女は二人とも武器を持たないが、その手にはやや大ぶりな手甲が嵌められている。それ以外の部分がかなりの軽装であることを考えると明らかに異質だった。

 

 さらにいうと、二人が付けている手甲は細かい部分に違いがあり、拳を軽く打ち合わせている男の方は大ぶりなのは腕だけで手の部分は複雑な構造ながら軽装甲になっている。そして女の方は手の部分まで分厚い装甲となっていて、拳を握る以外の動作はどう見てもできそうにない造形をしている。

 

 そこまで観察したところで那波と美羽がちらと才へと視線を向ける。

 

 「……」

 

 才は無言のまま首を横に振る。新たな“デーモン召喚”については謎ばかりなものの、それを置いてもジェイと貞子(ていこ)の召喚は不能のままだった。

 

 ここにきて改めてそこに頼りたくなるほどに、余裕と剣呑さを纏った男女は、まだかなりの距離があるところで足を止め、徐々にそしてはっきりと殺気を放ち始めていた。

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