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第三十八話 久しぶりに槍を振るう

 「じぇ!」

 

 やや間の抜けた気合いの声を発しながらジェイの手にした斧が振り下ろされ、爆音とともに砂礫とファングウルフが吹き飛んでいく。それはすでにジェイがゴブリンキングを圧倒するところを目の当たりにしていた内藤(ないとう)たちパーティにとっては驚くものではなかった。

 

 しかし、彼らはそことは違う部分に目を見開くこととなっていた。

 

 「しっ、やっ!」

 

 鋭く息を吐いた(さい)の手にした槍が二度宙を(はし)り、見ていた者の目に二筋の閃光を刻む。

 

 「ギャヒ」

 「よし」

 

 才へとじりじりと近寄っていたファングウルフ二体が倒れる間もなく絶命消滅し、それを為した当人が安堵の息を吐く。

 

 「(大丈夫、少し鈍っているけどちゃんと動ける)」

 

 それはモンスターを倒せたことではなく、自身の技量が衰えていないことへの安堵だった。長らく強力なはずのスキルが使えないことに苦しんだ才は、その苦しみから逃れるように武器の修練や魔術の勉学に打ち込んでいた、その成果だった。

 

 「(あの試行錯誤の日々は当時は逃げの心境だったのかもしれない。けどジェイさんや貞子(ていこ)がいる今、全部あるからこそボクは十全に戦える!)」

 

 強力で知られるスキル『召喚魔法』であったが、その強さ便利さ故に行使者本人が弱点となりがちであった。単純に召喚獣に比して人間がぜい弱であるというだけではなく、自己鍛錬の比率が召喚獣運用のための戦術知識面に偏るのが理由だった。

 

 『召喚魔法』が使えなかった才は、そのスキルの使い手としては異質なほどに自身の戦闘能力が高い。

 

 「しっ」

 「ギァッ」

 「ガグゥ」

 

 それを高らかに知らしめるかのように、才が槍閃を奔らせるたびに一体、また一体とファングウルフを葬っている。

 

 「国木(くにき)本人もあんなに戦えるんだ……」

 「あ、ああ」

 

 同じ下位に属する冒険者である式山(しきやま)が驚愕し、内藤は呆然と同意する。才とジェイの参戦でモンスターの攻勢が緩んだこともあり、二人を含めたパーティの面々は横目でちらりちらりと才たちの活躍を見ていた。

 

 「じぇっ!」

 

 才の槍術が冴える一方で、見る者にことごとく規格外といわしめるジェイの奮戦はまさに一桁違うものだった。斧を振るい、腕を振り回すたびに爆音轟音が森に響き、土や石が爆裂して舞い、そして十体、二十体のモンスターが消滅していく。

 

 超生物(モンスター)の名に恥じないジェイの暴虐的な活躍と、槍人一体といえるほどの才の達人的な武技によって、視界を埋めるほどだったモンスターの群れはその数を見る間に減らしていった。

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