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第十七話 どうしよう……、どうすれば……

 「じぇ~っ!」

 

 日暮れ洞最奥部にジェイの雄叫びが響く。それはモンスターの目を引き付けるものがあるらしく、二つの半透明の白い塊――ゴーストは執拗にジェイの周囲を飛び回って攻撃を加える。

 

 ゴーストの攻撃はその見た目から連想されるような何かしら精神的なものではなく、単純に物理的な衝撃力、つまりは体当たりに過ぎない。だからこそ、強靭なジェイは無数の攻撃にさらされ続けながらも消耗らしい消耗はしていなかった。

 

 「ちっ、くそぉ! 当たらっ、ないっ!」

 

 悪態を吐く那波(ななみ)は、両手に一本ずつ召喚した剣で見事な二刀流を披露する。が、その剣閃はただただ空を切るばかりで、小型で、素早く、そして浮遊しているゴーストにはかすりもしない。

 

 「これはぁ、思った以上に難しいねぇ」

 「そうですね……、どうすれば……」

 

 それぞれの武器を手にしながらも、美羽(みう)(さい)は攻撃に参加することすらできていなかった。剣の技量が高い那波以外は、飛び回るゴーストよりも味方に攻撃を当ててしまう可能性の方がよほど高く思われるからだった。

 

 話に聞いていたよりもゴーストの動きは捉えづらく、素早い。そのため倒すのが難しいのはもちろんのこと、撒いて逃げることもやはり困難であるということだった。

 

 「じぃぃえぇ」

 

 もはや手にした盾は殆ど用をなしていないものの、囮役としては大活躍中のジェイは、しかし膠着した状況に焦れるのか、唸り声を漏らしている。

 

 「最悪……ですけど、ジェイさんに思い切り攻撃させますか?」

 「それはぁ、多分崩れるよねぇ」

 「はい、なので攻撃指示してから皆で全力で逃げるしかないかと」

 「そのリスクをとるならぁ、一旦ダンジョン外に逃げる方がいいよねぇ。確かに背中を向けるのは危ないけど、うまくいなして外まで逃げ切れる可能性はある訳だしぃ」

 「そう……ですね」

 

 手を出しあぐねる才と美羽は意見交換をするものの、根本的な解決策はどちらも浮かばない。

 

 「(せっかく使えるようになった『召喚魔法』なのに、何か他に……)」

 

 焦る才は己の中に意識を向けるものの、しかしゾンビ召喚ではこれ以上追加で別のゾンビを呼べるような手応えはなかった。単体召喚しかできないということは特殊なユニークモンスターを召喚できるケースでは一般的なことであり、才の中の知識と現在の状況は一致していた。

 

 「(いや、これまでずっと何もできないと思っていたスキルで、今はジェイさんが呼び出せるようになっているんだ。何もできないなんてことは、……ないんだ!)」

 

 それでも才は諦めず、己の中の可能性を必死に探る。

 

 「(ん?)」

 

 才の視界の中に、見覚えのある緑色が現れていた。

 

 「(これって……)」

 

 視界の中の緑色に光るものは文字で、一行目は“ゾンビ召喚”、才の人生を大きく変えたものだった。そしてその下にはもう一行、この時初めて目にするものが追加されていた。

 

 「(“ゴースト召喚”!?)」

 

 焦燥の中思考していた才を声も出せない程驚かせたそれは、再び才の人生を大きく変えるきっかけとなるものだった。

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