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第十三話 日暮れ洞を探索しよう

 冒険者ギルドで日暮れ(どう)調査の依頼を受けてから数日後、(さい)那波(ななみ)美羽(みう)の三人はガットム近くにあるその日暮れ洞へと赴いていた。

 

 「本当にすぐ近くにあるんですね」

 

 ギルドの桐島(きりしま)からのアドバイスに従って、数日前とは違ってすっかり冒険者然としたいかにも実用的な服装となった才が呟く。

 

 「そうだねぇ」

 「だから随分昔に内部の探索とモンスター掃討はされているはずなんだよね」

 

 率直な才の感想に、美羽が相槌をうつと、那波が注釈をいれる。そこが安全だとガットム住人から認識されていることは、洞窟の入り口前の祠がよく手入れされている様子から才にも察せられていた。

 

 「実際にこの辺りまでは街の人もよく来るから、モンスターが出るならきっちり対処しないとね」

 

 祠前に立てられた“日暮れ洞への接近は禁止中”と書かれた看板を見て、那波が気持ちを引き締めなおすように口に出す。ガットムの門番も出入りする住人へはこの件の呼び掛けをしているため、今は才達の他には誰の姿も見られなかった。

 

 「これはただの洞窟で、ダンジョンは奥の階段を降りた先なんだけど……、一応警戒のために“あれ”呼び出せる?」

 「あ、はい。ジェイさんですね」

 「そう、そのジェイさんをお願いねぇ」

 

 那波の要望を才が請け負うと、聞いていた美羽はくすくすと笑いながら言葉を重ねる。

 

 「えっと……?」

 

 それを見て才が戸惑う様子を見せると、美羽の方は少し慌てて顔の前で手を振りながら口を開く。

 

 「あ、バカにしてる訳じゃないんだよぅ。ただあの強さのゾンビ?がそんな可愛い名前ついてるのがおかしくてぇ」

 「それってやっぱりバカにしてない?」

 「もう、ななみは余計な事言わないでぇ!」

 

 冒険者としてある程度の経験がある二人の気の抜けたやり取りに、才は肩の力が抜けていくのを感じていた。同時に、冒険者の初仕事を前にして随分と緊張していたということを自覚する。

 

 「はは、全然気にしてないですよ。それじゃあ、呼びますね……、ゾンビ召喚!」

 

 先ほどよりも柔らかくなった才の表情に、那波も美羽も安心したように口を閉じてスキルの行使を見守る。

 

 「「「……?」」」

 

 三人は一様に少し前の地面を凝視する。が、しばらく待ってもそこが盛り上がる様子も、仮面の偉丈夫が現れる気配もしない。

 

 「あれ? おかし――」

 「じぇ」

 「――っ!」

 

 首を傾げる才が疑問を口にしかけたところで、とぼけた調子の太い声音とともに、才の肩が大きな手で後ろから軽く叩かれる。予想外に地味で、しかし想定外の登場に才は大きく肩を震わせ、那波と美羽も言葉もなく固まってしまう。

 

 「じぇ、ジェイさん……。あ、よろしくね」

 「はは……」

 「おどろいたねぇ」

 「……じぇ」

 

 挨拶をしながらも動揺を隠せない才は引きつった笑みを浮かべ、那波は空笑いをしている。美羽に至ってはストレートに驚いたと口にしているものの、三人の中では一番余裕はある様子だった。

 

 ジェイの方は何かしら良くなかったとは感じたらしく、仮面の上から頬をぽりぽりと掻いて困惑していた。

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