どこまでも一緒にいるよ?
あの後放課も終わり、ただいま絶賛係決めをしている最中だ。
皆には退屈な時間かもしれないが俺にとっては死ぬか生きるかだ。
時計の音がまるで死のカウントダウンのようで今にも家に帰りたい。
理由はもうお分かりだろうが咲那と同じ係になればいつどこで何をされるかわからない。
なので俺は今もずっと咲那の心を読み続けている。
(暁はどれを選ぶかな?でも学級委員やらないとお姉ちゃんに怒られそうだし)
このままいけば多分咲那は学級委員に手をあげるだろう。と俺は予想していたが盛大に裏切られる。
「続いて図書係だ!やりたいもの入るか?」
よしこれにしよう。
「先生俺がやります!」
「じゃあ私もやるのです!」
「え!?」
俺が手をあげて三秒程だろうか、咲那には好都合だったように手を挙げる。
すると周囲の視線は再び嫉妬の眼差しに変わっていく。
嘘だろ!?咲那さん学級委員は!?
俺は心を読み取る。
(えへへ....やっぱり暁優先です〜、お姉ちゃんには暁に脅されたって言えばいいですし)
いやいやいや、おい!?なんで俺のせいになってんだよ。ただのとばっちりじゃねえかよ。
すると俺はクラスの男子からすごい眼光で睨まれる。
それはもう殺すじゃなくて殺そうと言う決意の目だった。
「あ、えーっと先生やっぱりやめてもいい....」
「なんで?もしかして私のこと嫌いなのです?」(これでやめられたら英雄ですよ暁)
ほんとにこいつは黒いやつだな!!涙目になるだけで余計男子からの目がすごいものに変わったぞ!?
そしてクラスのモブ的男子が俺に野次を飛ばす。
「うわーまじで最低だな」
「それな〜、人間じゃねわ」
よし顔は覚えた後で殺ってやろう。
俺は握り拳をぐっと握り渋々先生に再度「やっぱりやります」と言わされた。
すると咲那がぱあ!と笑顔になったが一つ問題が発生した。
(暁の悪口を言う奴は私が殺すのです)
やっべえな、俺が殺る前に今にも咲那に殺されそうだな。
そう咲那は他人が俺に悪口を言うとまじでキレるのだ。
それのせいか中学生時代ではチンピラに絡まれボコボコにされた俺を見て咲那がキレたのを思い出す。
その後チンピラは俺の家に来るなり、まるで別人のように痩せ細り死にそうな顔で「すみませんでした!!!」と土下座を繰り出したのだ。
多分だがあの時に俺が咲那を止めなければあいつらは今頃雲の上だろう。
しかし学校生活でこれをやれば人数が減るのでなんとかしなければ。
「なあ、咲那」
「どうしたのです?」(きゃあああああああああああ。暁が喋ってくれたああああああああぁぁぁ)
「え、えーっと....殺るなよ?」
「えへへ、わかったですにょ」(じゃあナデナデくらいして欲しいです〜)
「後で撫でてやるから」
「いいのです!?じゃあ三十分くらいいいです?」
「腕がもげるわ!!」
俺は勢いで叫んでしまった。
すると男子の眼光に先生とクラスの女子まで加わりもう顔を上に向けない状態だ。
そして心の声がだんだん聞こえてくる。
(くっそあいつ咲那ちゃんと喋りやがって!!)
(だいたい幼馴染みだからって調子に乗りすぎなんだよ)
(羨ましいいいいいいいいい)
最後の一人はほっといてこれじゃあ俺の高校生活は一日目にして終わりそうだ。
しかもさっき廊下のやつの心が聞こえてきたのだがどうやらもう咲那ファンクラブができているらしく俺が排除対象ナンバーワンだそうだ。
少し気おつけた方が身のためだろう。
その後クラスの係決めもサクサクと決まり学級委員はあの熱血生徒の渡辺大河と厨二病の佐々木に決まった。
これで今日の授業が終わり後は帰るだけとなった。
しかし帰りこそが勝負である。
もし咲那に俺が一人暮らししていることがバレればもう死ぬしかない。
俺は鞄に持ち物を詰め心臓が張り裂けそうにならながら下駄箱に向かう。
そして二十分程歩き人通りの少ない道を越えボロボロの団地が見えてくる。
家賃は五千円と格安だが一人暮らしには充分な広さだ。
俺は玄関の鍵を閉めると後ろから暖かい息が耳元を駆け走る。
「え、嘘だよ.......な.......!?」
「へえ、ここに住んでるのです?」
「なんでいるんだよ!?」
「スペアキー持ってるのです」
嘘だろ。お約束だと思ったけど今回は本気で逃げたんだぞ!?
てか多分大家から奪ったなこいつめ!
そうして俺の後ろでメモに没頭する咲那の姿があった。
しかしここまで来てしまったら仕方ない。
咲那に嫌われ追い返すしかない。
「咲那頼むから俺にもう構わないでくれよ!もううんざりだ!」
俺は今までで一度も怒ったことはなかったが嫌われるためだすまないな。
すると咲那は少し俯いたが直ぐに笑顔に戻る。
「わかったのですよ」
あれ?意外と素直だな。
しかし直ぐに咲那の顔が笑顔から別のものに変わる。
「じゃあ私ここに住むのです、そうしたらどこまでも一緒にいられるのですよ?」
「なんで咲那は俺にこだわるんだよ!頭だって良いし運動だって!」
「そんなの簡単なのですよ.............暁が助けてくれたからです。それに好きだからですよ」
「じゃあ俺はお前のことがきら、きら.....嫌い.......」
そう言えば俺は殺してでも一緒にいようとする咲那から逃げたことはあるが「嫌いだ」とはっきり言ったことはない。
それに咲那自体はすごく美少女で綺麗で賢くて戌みたいでそれでいて家族のように接してくれていた。
そんな咲那に俺は嫌いと言えるのか?
毎日俺の家に来ては料理をしてくれたり、俺が怒られて泣いている時は優しく撫でてくれた。
それなのに、それなのに......いや無理だ。
「ごめん咲那....別にお前ことが嫌いな訳じゃないんだ。その、少し一人にして欲しくてな」
「わかったのです........うん、じゃあもし困ったら私に言って欲しいのです」
そうして咲那は帰ろうとドアに手をかける。
しかしそのあまりにも寂しそうな背中を見て俺は無意識のうちに咲那の肩を掴んでいた。
なんだかんだ言っても俺は詰めが甘い。
「はあ〜、一日くらい泊まってくか?」
「いいのです?」
「いや咲那の手料理がどうしても食べたくて」
そうやって俺は少し照れくさくなり頭をボリボリとかく。
その姿を見て咲那は今までで一番良い笑顔を見してくれた。
その後の夕食には二人っきりで楽しく食べたが久しぶりになんか心が軽くなった気がする。
それに心の声は聞こえてこない。ということは嘘と言うことは多分ないだろう。
すると咲那は風呂場から頭だけをヒョコっとだしてこう言った。
「暁!お風呂入るのです!」
「お前は少しの恥もないのか?いくつだと思ってる!?」
「だって将来の旦那さんに裸くらい見られたって普通ですよ?それに今日は寝かせないです」
「付き合ってもないのに結婚させんな。後と直ぐに寝ろ、明日は早いんだ」
地獄のお風呂が終了しやっと寝床に着くとすかさず咲那が布団に潜り込む。
いつもなら服を剥ぎ取ろうとしてきたが今日は抱きついて来ただけだった。
それにしても咲那も少し穏和になってくれて助かる。しかしたまに昔の癖が出るが当初に比べればましになった方なのだ。
「えへへ、あった.......か.......い......です」
「おやすみ」
俺もその日は直ぐに寝れた。いつもは寒く寝付けないのが続いたせいだろうか。
いやもう考えなくても良さそうだ。
そうして俺の長い長い学校生活(初日)が終わった。
今回は少しラブコメと言うよりイチャイチャパラダイスのようでしたがニヤニヤとしてもらえたでしょうか?
今後の予定ですが能力を使ってバンバン問題を解決すると言うのをテーマに走って行こうと思います。
読んでみてくださりありがとうございました。