過去
本日2話目です
神を喰らう。
そのことはシルバでは禁忌とされていることでした。
神の血肉をくらい、その神の神格自分の身に宿す……その力は絶大ですがその力はそもそも身に余る神の力。
その力は代償が大きすぎたのです。
代償は「自分の精神を侵食される」ということ。
侵食されながら光の勇者は剣の勇者達を追い詰めていきます。
ですが神を食らって強くなった光の勇者はのちに精神を侵食されて味方と敵を無差別に攻撃していくようになりました。
そこで剣の勇者は光の勇者に対抗するために自分を戒めてつかわないでいた個人魔法を使うことを決めました。
彼の個人魔法は「複製模倣」
全てを複製し、自分に読み込み、顕現させる能力。
読み込めばその人の能力を自分のものにすることができる強力なものでした。
ですが剣の勇者は使うのを渋っていました。
この能力は「人の歩みを奪う」能力だったからです。
人が歩んできた人生で習得した能力を簡単に自分のものにする……そのことが剣の勇者には許せなかったからです。
ですが剣の勇者はその個人魔法を使うことを決めました。
仲間達を置いていき一人で侵食された光の勇者の元へ行き闘っていきます。
光の勇者との死闘に剣の勇者は奮闘し、見事光の勇者を打ち倒します。
ですが剣の勇者は個人魔法で戦った結果、精神を光の勇者同様侵食されてしまったのです。
侵食された剣の勇者は一人、深い洞窟の中で事切れようとしていた時ある女性が剣の勇者を助けました。
彼女の名前はアルメリア、魔族の王の魔王にして「覡」の役職を持つ魔族の女でした。
♢♢♢
〈現在〉
「……とまあ、これが俺が五百年前に召喚された時の出来事かな」
「……」
白花さんの決意を聞いた後、俺は自分の話をしていった。
自分の召喚された環境にその理由、戦いの話や死んでいった仲間の話や様々なものをした。
その話を聞いていった白花さんは…………
「ヒッグ…エッグ」
なぜか泣いております。
なんでどうしてホワイ?
なんで白花さんが泣くんだ?なんで?
俺は泣いてしまった白花さんにとりあえず話を聞こうと声を掛ける。
「なっなんで白花さんが泣いてるの……?」
「だって……私、悲しい話をさせて……しまっ…ふぇぇ……」
ふぇぇって……こっちがふぇぇって言いたいよ。
「別に気にしなくていいよ。もう過ぎたことだから」
「でも……」
白花さんはそれでも泣き止まない。
「ああもう……だから大丈夫だって」
俺はそういって白花さんの頭を撫でる。
すると白花さんは泣き止みなんか顔を赤くして黙ってしまう。
落ち着いたのかな……?
泣き止んだのを確認して手を頭から離し、話を戻す。
「それで話を戻すけど、君はどうする?」
「え?」
「今回の戦争に参加するのかって聞いてるの。俺の話を聞いて本当に戦争をしたいのかってことだ」
天川やクラスメイトは少し戦争を舐めてる。
いくら異世界から召喚されたからって死ぬ人は死ぬし、自分も死ぬ可能性がある。
そこをあいつらは理解していない。
もちろん先生もだ。このままじゃ全滅するだろう。
「戦うというなら俺は構わない、でも俺と七葉は参加はしないぞ?そもそも自分たちで終わらせた戦争だしな。だけど戦争をするとなるとその時はクラスメイトの死や自分の死を覚悟することになる」
『それでも戦う覚悟があるか?』
「……」
俺は少し殺気を混ぜながら白花さんに問う。
しばらく黙った後、白花さんは俺を見てしっかりとした声で言う。
「私は戦う。確かに大変だし死ぬかもしれないけど戦うよ」
「怖くないのか?戦争の原因は人間にあるのに」
「怖いよ……すごく怖い。でも何もしないで何も関係ない人が死ぬのを見たくないんだ」
……ほんと、彼女にそっくりな目をしてるよ。
「そうか……頑張れよ。俺はそう思うことしかできないからな」
「うん。頑張るよ伊澄くん」
そういって白花さんはテラスから出ていった。
俺は一人テラスから月を見ながら呟く。
「なあアルメリア……俺はどうしたらいいと思う?」
白花を手伝えばいいのか?
あの時みたいに……
腰まである銀髪を揺らし翡翠色の瞳の中に確かな志があるその小さな背中にたくさんのものを背負った少女がいきなり放った。
『私に協力しなさい剣の勇者!あなたと私の力で戦争を終わらせるのよ!!』
俺は初めて会った時のアルメリアの姿とセリフを思い出し少し笑うのだった。
そして最後の時彼女がくれた言葉も……
『あーあ、まだ冒険したかったなあ……ねえ、またあなたと出会えるのなら…世界を……自由に……』
「自由に……か」
白花さんと話したの翌日、俺はナナリ王と話していた。
「城を出たい?」
「そうだ。今回の戦争には参加しないし、五百年たったこの世界を見てみたい」
ナナリ王は俺の方を見て少し考えた後頷く。
「いいでしょう。昨日、あなたは戦争には参加しないと聞いていたので」
「助かるよ。ああ、七葉は別だが他のクラスメイトは戦争に参加するらしいぞよかったな……で、あのハゲから魔族の奴隷の場所は聞き出せたか?」
俺は少し雰囲気を変えて話を本題に変える。
「はい、どうやら自分の領地の屋敷にある地下牢に監禁しているようです」
「種族は?」
「ヴァンパイア……しかも特に上位のものらしいです」
「最悪だな……ヴァンパイアは特にプライドが高い。しかも上位の奴らなら独自の軍を持っている可能性があるから戦争自体を止めても報復してくる可能性があるな」
「幸い手は出していないようですが今の我々では送り届けただけですぐに殺されそうです……」
ため息をつきながら頭を抱えるナナリ王。
仕方ないな……戦争には参加しないが手助けはしてやるか。
「そいつの領地はどこにある?」
「は?……この王都から東に馬車で二週間ほどですかな。魔族の国に近いのが特徴ですがそれが……?」
「街の名前は?」
「ニルです」
「よし、じゃあいい。俺がそのヴァンパイアを魔族の国に送り届けてやるよ」
「……は?」
ナナリ王が今度は目が点になるような感じの声を上げる。
「だから、どうせ城でるんならその方がいい気がするしな」
「でっですがそうなるとナオヤ様に危険が……」
「五百年前の戦争終わらせたのは誰だと思ってんだ?俺以外に適任いないだろ」
「……それもそうですね。申し訳ありませんがナオヤ様、お願いします」
「任された」
そういってナナリ王は頭を下げる。
……この国王は一国の王にしてはかなり腰が低い。しっかりと礼を述べるといういい部分もあるが少し人がよすぎる気もするな。
俺はまるで前の召喚で仲間だった泣き虫シーフの顔を思いだす。
「じゃあニルに向かうために先に行きたいところがあるんだがいいか?」
「どこへ向かうのですか?ナオヤ様」
ナナリ王は少し首を傾げながら俺に問う。
俺は口に微笑を浮かべながらナナリ王の質問にこう答えた。
「この城の地下だよ。そこに俺と七葉の力の大半が封印された魔石があるはずなんだ」