魔族領に向かって
翌日、バンピィが滞在する屋敷に向かいすぐに出発した。
「今日からよろしくなバンピィ」
「あい!よろしくしてやるぞナオヤ」
街の門を出て最初にシュメイ山脈に向かう。
空歩を使っていっても良かったが国境を渡るのは流石に気がひける。
「それでバンピィ、お前をとりあえず一番近い魔族の街まで送り届けるけどその街に知り合いはいるのか?」
「うーん、街の名前は何だ?」
「確か……カイエだったかな」
なんでこんなノートみたいな名前なのかは少しきになるが関係ないか。
俺の質問にバンピィは少し考えるような仕草をすると思い出したのように話し始めた。
「そこにならお祖母様がいる!」
「お祖母さんがいるのか。お祖母さんの名前は?」
「ルーお祖母様!」
「へ?」
まさか……送り届ける魔族の親戚が前の仲間な件
♢♢♢
「まさかお前があのルーの縁者だとは……」
「ルーお祖母様は父様のお母様なのだ。可愛がってもらったぞ!」
「あいつが姉の孫を可愛がるねえ……」
想像できん。
なにせ前の召喚の時に会った時の性格を一言で言うのなら「わがままの擬人化」だ。
自分が飲みたい人の血じゃないと絶対に飲まない、怪我しているから安静にしておけと言ったのに気づいたら勝手に外に出て遊んでる、戦いの最中自分の思い通りにいかないと泣くなどなど……
正直あいつが自分の孫を可愛がるなんて思えない。
というかあいつ結婚できたの?そこが不思議でならん。
「それにしてもナオヤは人間なのにお祖母様の知り合いなんだ?お祖母様は確かこの数百年は外に出たことないと言っておったぞ?」
「ああ、それはお前のお祖母様にでも聞いてくれ。説明めんどくさい」
「むー!教えてくれてもいいでわないか!」
バンピィの質問をおざなりに返すと頬を膨らませて文句を言う。
……頬を膨らませて文句を言ってくるなんて本当にあいつの孫なんだな……
「ナオヤ!もっと私と遊べ!」
とか言いながらよくひっついてきたっけ。
あいつ戦闘になると頼もしいのにそれ以外は本当に面倒…じゃなかった大変だった。
まあ、あいつと遊んでやるとアルメリアが嫉妬してきて可愛かった……
『何考えているの……ナオヤ』
アルメリアさん?勝手に俺の思考覗かないで?
あとなんで会話できるの?
『精神世界にいるんだから思考は筒抜けよ。なんで会話できたのかは……私にもわからないわ』
まじかよ。複製模倣の謎がさらに深まったわ。
俺はバンピィの文句を流しながらシュメイ山脈に向かうのだった。
「バンピィ!そっちに行ったぞ!」
「わかったのだ!」
シュメイ山脈に向かう途中、俺はゴブリンを発見したのでバンピィの実力を測るために戦闘することになった。
「我が吸血鬼の血において命ずる…相手を拘束せよ『ブラットバインド』」
バンピィが発動した魔法は血の色の鎖を放ちながら5匹いたゴブリンを全て拘束する。
吸血鬼専用魔法「ブラットマジック」、ヴァンパイアが使える特別な魔法で使用者の血を使い相手を拘束したり、武器を作ったり、血を硬化させ槍に変えて槍の雨を降らせたりできる。
拘束したゴブリンを俺の黒鋼と白鋼で首を切りとばす。
「ふう……バンピィ、大丈夫か?」
「大丈夫なのだ!少し血が減ったがそこまで厳しくはないぞ」
「でもな……ほら」
そういって俺はアイテムバックから一本の試験管のようなガラスの筒を渡す。
これはルーが腹をすかせたようにとっておいた俺の血液だ。昔は俺や仲間のしか飲まなかったからその時のために常備していたものでアイテムバックから出していないから劣化はしていないはずだから飲めるはず。
「これはナオヤの血か?」
「そうだ。お前の婆さんが気に入ってた血だからうまいと思うが」
「ありがとうなのだ!」
そう言ってバンピィはその血の入った瓶の栓を抜き、その血を飲む。
すると急に目を見開いて一気飲みする。
「……ぷはあ!なんなのだこの血!?すごいうまいのだ!今までの血より甘くて……濃厚で」
「そりゃあよかった」
「これはお前の血なのか?ならもっと…飲ませるのだ!!」
そう言って急に俺に抱きつき牙を立てて噛み付く。地味に痛い。
「痛い!痛い!後でやるから噛み付くな!!」
「嫌なのだ!もっと飲ませろ!!」
今回の反省……血、飲ませなきゃよかった。