その夜
なんか半透明なアルメリアがいた。
『やっと気が付いたのね。さっきから手を振ってるのに気がつかないんだもの』
「祟りに来たの?アルメリア」
『違うわよ!祟るなら私は陰湿にするわよ』
「そうじゃねえよ……で?なんでここにいるの?」
『あなたが会いたいって思ったからじゃない?私はあなたの精神世界にいるんだし』
そう言いながらアルメリアはふわふわとあちこちを浮遊する。
『そういえばナオヤ、あの魔族の子を送り届けたらどうするの?』
「ん?」
『だって旅するにしても資金はあるんだし目的地がないと全く意味がないでしょ?』
「そうなんだよなあ……どうせならまだ生きてそうな仲間の場所にでも行くかな」
『いいんじゃない?なら最初は魔族の領地に行くんだしルーにでも会いに行ったら?彼女もヴァンパイアなんだしちょうどいいでしょう』
ルー・ブラット、前の戦いで共に戦った魔族の一人で今回送り届けるバンピィと同じヴァンパイアだ。ヴァンパイアは基本的に長命種だし血を飲んでれば何百年単位で生きる生き物だし病気などで死んでいないのなら生きているはずだろう。
「そうしようかな。でもロベルにも会いたいし長くいて二週間ってとこかな」
「そうなるわね。地形は変わってなかったんでしょ?」
「ああ」
俺はナナリ王にもらったこの地域の地図をアイテムバックの中から取り出してテーブルに広げる。現在、俺がいるニルが地図の下の方にありそのまま北の方向にある大きな山脈、「シュメイ山脈」を超えないと魔族の国には行けない。
だが前の召喚の時と変わっていないらしいのでシュメイ山脈の中を通る洞窟があるはずだ。
今回バンピィを送るのならそこを通って行けば早くて一週間で一番近い街に着く。
「さて……どうなるのかな」
『あなたの体質的にトラブルが来そうね』
「やめろ……考えないでいるんだから」
昔から俺は何かとトラブルに巻き込まれる体質だ。
今回のバンピィの件も絶対何かの面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いだろう。
「まあ、なんとかなるでしょ」
俺は考えることをやめた。
思考を切り替えるために俺はアルメリアに向き直る。個人的に今はバンピィよりも目の前に半透明の幽霊(笑)化している?こいつの方が興味がある。
「それで……なんでお前外に出てるんだよ。確か夢の中でなら会えるとかいってなかったか?」
『そうなのよねえ……私も分からないわ。だって気づいたら外に出てたんだし』
「そうなのか」
『ねえナオヤ、あなたの個人魔法はなんなの?』
「?なにって複製模倣だろうが。相手の能力を複製して完璧に模倣することができる能力で……『それではおかしいわ』…はい?」
アルメリアの質問に俺は当たり前のような口調で答える。
すると話の途中でアルメリアが遮ってきた。
『その説明では今日あなたがやった複製の力の説明にならないわ』
「複製は複製だろ?触ったものと同じものを魔力で作り出す能力」
『なら私の魂を複製できるのはなんで?複製は触ったものを複製できる能力なら「魂」なんて触ってないじゃない?』
「……そう言えばそうだな」
確かにそう考えるとおかしい。
と言うか俺の個人魔法である「複製模倣」は謎が多い。
・相手の能力を複製して完璧に模倣できる能力
・触ったものと同じものを複製する「複製」
この二つがはっきりしているが他にも複製の能力がある可能性がある。
アルメリアの魂を複製していることから魂を複製することができること…だがそうなると俺が模倣した他の人が俺の精神世界にいることになる。
そうなるとなんでアルメリアしか俺の精神世界にはいない?
それに気になったのが現在、アルメリアが精神世界から出て外の世界を出ているのなんでだ?
魂を複製するのには条件があるのか。
それとも単純に俺がアルメリアにしか会いたくないからなのか……
「……」
『始まっちゃった…こうなるとナオヤ周りが見えなくなるのよね』
それから思考の中にから抜け出せたのは三時間後で真夜中だった。