召喚されたのは五百年後でした……はあ
『何度も俺は失った』
『殺してしまった』
『自分の目の前で』
『何もできずに』
『這いつくばりながら』
『無様にあがいた』
『自分が死ねばよかった』
『死ねばよかった』
『死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった死ねばよかった』
♢♢♢♢
「……や、……おや、直也!」
「う……なんだよ七葉」
「起きてよ!それにこの場所……」
「場所……?」
俺は七葉の声に反応して起き上がるとその景色に固まった。
高校の教室ではないゲームの中の遺跡のような場所……俺はこの場所を知っている。
この場所は……
「ここ、三年前の…召喚の間か?」
「私もそう見える……」
どうなってんだ……?
周りを見ると朝教室にいたクラスメイトと担任の佐々木先生が気絶しているのが目に入ってきた。
「今回はクラスメイトたちと召喚された感じか……でも、少しおかしいぞ」
「おかしい……?」
俺の言葉に七葉が気なるのか反応する。
「だって召喚の間は……破壊したはずだ。帰る前に」
「あっ……」
そう俺たちが三年前に召喚された異世界の召喚の間だとしたら少し不自然なのだ。
俺たちは日本に帰るときに異世界の人間とともに召喚の間を破壊した。
平和になった世界にはもう必要ないと言って魔法陣を破壊してさらに封印もしたのだ。なのになんでこの召喚の間があるのかそこがおかしいのだ。
「確かに……ならこの召喚の間は別の世界のなの……?」
「さあな……でもここがシルバなら俺たちの装備を呼び出せるからな。確かめてみるぞ」
「ええ」
お互いに頷いてから俺は自分のブレスレットに、七葉は自分の髪飾りに手をかけてある言葉を口にする。
「「光の加護を持つ武具たちよ、担い手の呼びかけに応えよ」」
俺と七葉の言葉に応えるようにブレスレットと髪飾りが光り輝き、俺の手には黒と白の短剣が、七葉の腕には一本の杖が握られていた。この武器は俺たちが三年前に勇者の武器として使えるようになった武器、神器だ。でも元の世界に帰ることで封印されたはず……
「白鋼、黒鋼……」
「ローズ……出せちゃった」
「ああ」
そんな会話をしていると続々と他のクラスメイトが起き出してきたので急いで出した武器を元に戻す。
「あれ……どこだよここ!」
「何かの撮影?ドッキリの番組とかかな?」
「スマホの電波たってないけどどうなってんだ?」
案の定、意識を取り戻したクラスメイトは周りの環境の変化に騒ぎ出す。
佐々木先生も今の状況に驚いているがなんとかこの騒ぎを諌めようと声を掛ける。
天川も佐々木先生と一緒になってやっているがなかなか治らない。
しばらくはこのままかと多い俺は七葉と一緒に部屋の中に一つだけある扉に足を向ける。
扉の手をかけると開けられそうだった。
「どうする?」
「開けたいけど……他の人たちに怪しまれるから戻りましょう、この世界がシルバならこの国はあの人たちがいるはずだし。時代が変わっているとしても巫女の一族がいるはずよ」
「それもそうだな」
この召喚の間を使うにはある民族の力が必要になる。
「巫女の一族」、異世界人の召喚や預言者としての能力を持つ一族で言い伝えとして勇者のことを伝える語り手の役目を持っている。今回の召喚も何人かの巫女の一族の人がいたはずだ。その人たちに今回の召喚理由を説明してもらおう。
「いなくなった人はいませんか!」
「先生、全員無事のようです」
天川と先生の点呼が終わりここはどこなのか話が始まるときに扉の方に足音が六人ほど聞こえてきた。俺と七葉は警戒しながらその扉の方を見ていると扉が開き、中に五人の女騎士と一人のドレスを着た姫のような感じの少女が入ってきた。
「姫様、召喚が成功したみたいです!」
「さすがです!姫様」
「リリー、ルルー少し静かに、勇者様がたが何事かわからず混乱していますからまず案内しないと」
俺たちを見て二人の騎士が大きな声をあげて喜ぶが「姫様」と呼ばれたドレスの少女はその二人を納めておれたちに話しかける。
「異世界の勇者様がた、この度は召喚に応じていただいてありがとうございます。まずは事情を話したので付いてきてくださらないでしょうか」
「召喚に応じた、ねえ……勝手に召喚しただけじゃないか」
「ええ、そうよね?」
姫の言葉に俺と七葉は「召喚に応じた」という言葉が気になり文句を二人の間にしか聞こえないように口にしてしまう。
「とりあえず事情を知っているみたいだし。佐々木先生、行ってみたらどうです?」
「そうですね……そうしましょうか」
とりあえず姫様についていくことになったらしい。
俺たちは後ろからなるべく気配を消してついていくことにする。
何かあった場合すぐに逃げられるようにだ。
俺たちは姫に案内してもらいながら城のような建物の中を移動していた。
すると窓の外を見ていた七葉が何かに気がつき俺に話しかけてくる。
「それにしてもここはシルバなのかしら?」
「その話はもうしただろ?なんだよ七葉」
「だって竜が飛んでない」
「え?」
俺は窓を見て驚く。
確か召喚の間を持っているいるのはシルバの世界には一つだけ、竜騎士王国グナーだけだった。三年前俺たちが召喚された時は竜騎士王国と言われるだけあってその国はたくさんの竜と共存し、毎日たくさんの竜が飛んでいた……何のに今の空には竜は一匹も飛んでない。
どういうことだ……?
七葉と俺はこっそりその話をしようとした時、前の方から話しかけてきた。
白花だった。
「どうかしたの伊澄くん、七葉さん。何かずっと話してるみたいだけど」
「嫌、なんでもないよ白花」
「そう?何かあったらすぐに言ってね?」
「わかったわ」
俺と七葉が何か感ずかれないようにごまかしそのまま白花とも会話しながら進んでいく。
「それにしても大きなセットだよね〜うちの高校こんなドッキリするような高校だったっけ?」
白花の言葉に俺たちは少しどう答えようか迷ったが俺たちにはもうここが別の世界とわかっているので否定することになった。
「いや、これはドッキリじゃないと思うわ」
「そうだろうな」
七葉が言った言葉に俺も便乗する。
俺たちの意見に少し白花は不思議そうな顔をする。その根拠はどこにあるのかって顔してるな少し現実を見てもらおうか。
「だって窓の外を見てみろよ。月が二つある」
「え……」
俺の言葉に白花はそのまま窓に目を向ける。
俺その白花と同じように窓を見て今度はその上空を見てなんとなく懐かしさを覚える。
赤と青の月……太陽の光があるにも関わらずその存在感が一切失われていないその二つの月がそこにあった。
「ほんとだ…月が二つ、しかも赤と青色のがあるよ……」
「それにだ……まずこの城のようなセットにどうやって俺たちを運んだんだよ?しかも外はどこか中世のヨーロッパのような感じの街になっているし、こんな街はまず俺たちの高校の周辺にはない。ドッキリだとしてもなんで佐々木先生はそのことを知らされていんだよ?流石に学校側は教師には話しているはずだろう?」
「……」
「ちょっと直也……」
「少し現実を見たらどうだ?他の奴らにも言えることだけど、いい加減少しおかしいと思えよ」
七葉に少し止められるが関係なしに俺はクラスメイトに言う。
いい加減遊び気分を抜かないと後で後悔するからな。
「あの……あなたはこの世界の事情を知っているのですか?」
「ん?そこは知らんがこの世界の名前はシルバであってるか?そして年号は?」
「えっと世界の名前はシルバであってます。年号は八百七十五年です」
姫様の言葉を聞いて少し残念な気持ちになる。
俺たちが帰還したのがこの世界では確か三百七十五年だったからまるまる五百年くらい経ってるな。エルフと魔族である仲間以外はもう死んだか。
「五百年前くらいのことなら知ってるがそれ以上は今回の話を聞いてから話すとしようか。七葉もそれでいいな?」
「ええ、私もそれで構わないわ」
「そちらの方も五百年前のことを知ってるんですか?」
「まあね」
姫様が七葉聞くが誤魔化されていた。
まあ、そんな簡単に自分の情報を教えるのは良くないしな。何かの対価になる情報がないと困る。
それからは少し微妙な雰囲気で城の中を進んでいく俺たち、少し微妙な雰囲気になったがこのさいそれが良い、あとあと面倒ごとに巻き込まれても嫌だから。
しばらく歩いていると大きな扉が見えてきた。あそこにいるのか?
「ここからは謁見の間です。ここに私の父上……この国、クラド帝国の王がいます」
「クラド帝国か……五百年前にはなかったな」
「五百年の間にできたの国かしらね?」
七葉と話しながら待ってると扉が開き中の様子が見えてくる。
中にはいつかに見たたくさんの貴族たちが待っていた。その大きな部屋の中にひときわ豪華な服をまとった男がいる、かなり鍛えたられた体を持っていて熊のような男が、そこにいた。
「エルミナ、無事召喚できたようだな」
「はい、お父様」
俺たちを引き連れて姫様がその中に入っていき王様と話している。
どうやら今回の召喚はこの王様が決めたようだ。
「異世界の勇者殿たち、突然のことに驚かせてしまって申し訳ない。私はクラド帝国大三代目国王、ナナリ・クラドだ、突然で悪いが異世界の勇者殿たちにお願いがある。私たちの国を救ってもらいたい」
ナナリ王はそう言って事情を勝手に話し始める。
今回の召喚理由はまとめるとこんな感じだ。
一、今回の召喚の理由は魔族との戦争のため。
二、五百年前の戦争で平和的になっていたがここ最近この国の人間を襲うようになった。
三、魔族の力は強大で人間じゃ太刀打ちできない、なので今回異世界の勇者たちを召喚することに。
四、どうかこの世界を救うため力を貸していただきたい。
…………うん、フザケンナ。
「俺はパス」
俺はナナリ王の話を聞いた後、俺は一人そう言い放った。