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一悶着2

 温泉街であるニルの路地裏で二つの影が激しく金属音を鳴らして動いていた。


 その正体は直也と狐目の暗殺者である。


 「それにしても……よくこの動きについてこれるな。感心したぞ狐男」


 「これでも僕はかなりの実力なんだけど……正直しんどいねえ……さすがは勇者ってとこかい?」


 「失礼な、これは俺個人の努力の成果だ。確かに勇者としての力もあるが自惚れていたらあの戦いは死んでいたしな」


 「だから厄介なんだよねえ……」


 狐男はかなり息が上がっていてしんどそうだ。

 ……ふむ、そろそろ決めるか。


 「じゃあそろそろ死んでもらうぞ?」


 「ようやく本気かい?」


 「ああ……『装填』」


 俺がそう唱えた瞬間、複製していた短剣がまた黒い雷を放って消える。

 すると今度は俺の周囲に黒い雷がほとばしり周りに10本の消えた短剣が現れる。


 「さて、行こうかな」


 「これが本気ねえ……捌ききれる自信がないなあ」


 俺は白鋼と黒鋼を両手に持ち構えると狐男は引きつった笑みを浮かべながら汗を流す。

 俺は一気に狐男の懐に入ると右手の黒鋼で切り上げる。

 

 その切り上げをギリギリで交わした狐男だが交わした瞬間に顔色を悪くする。

 その男の腹には一本の短剣が刺さっていたのだ。


 「……どう?元の世界で思いついた魔法の応用は?名前はまだないけどあえてつけるのなら『銃弾』ってとこかな?」


 『装填』と『銃弾』、俺が日本に戻った時に思いついた魔法である。

 複製したものに付与魔法でその場に浮かす効果の「浮遊」と前方に動かす命令を仕込む「射出」を「俊足」でさらに加速された複合魔法だ。


 「……まさか他に浮いてる短剣全部が同じものなのかい?」


 「そのとうり。じゃあ……死んでくれよ?」


 俺は黒鋼を狐男に向けてそう言って走り出す。

 その数分後、たくさんの短剣に刺された男の下が転がったのは案外すぐのことだった。




 ♢♢♢


 「すみません。宿り木亭はここであってますか?」


 「あってるよ。宿泊かい?」


 「ええとりあえず一泊だけですが」


 「なら金貨2枚だね」


 狐男との戦いを終えて後始末をした後,

 俺は宿り木亭にやってきていた。


 「?思ったより安いんですね」


 「確かに温泉街の宿はどこも金貨5枚はくだらないけどそれじゃお客が楽しめないだろう?うちには商人とかも泊まりにくるからその分仕入れも安く済んでいるんでね、なるべく料金を安くしているんだよ」


 「そうなんですか……どうぞ」


 「はいよ金貨2枚ちょうどだね。後少しで夕食だから荷物を置いたらすぐに降りてきてくれよ、風呂は夕食後すぐに男湯の時間だからきおつけてくれよ?」


 「わかったよ。じゃあすぐに下に降りてくる」



 おかみさんから部屋の鍵をもらいそのまま部屋に向かう。

 部屋の中はベットにテーブル、椅子、そして小さな暖炉があるシンプルながらもかなり質のいいものが置いてあった。



 俺は鎧とクロスをアイテムバックにしまってから部屋を出て1階に隣接する食堂に足を運んだ。


 「おかみさん、どこで俺は食事すればいい?」


 「ああ、あんたかい。すまないが一人の客は基本的にカウンターなんだ、すまないね」


 「いいですよ。あっ俺は直也と言います」

 

 「ナオヤね。あたいはおかみのエリアだ、今日だけだけどよろしく」


 「よろしくお願いします」


 すばらく会話しながらカウンターについて渡されたメニュー表を見て料理を注文する。

 頼んだのはホーンラビットのシチューにパン、バーンウルフのブロックステーキにエールだ。

 ホーンラビットは低級の魔物で煮ると淡白ながらしっかりとした味が出るので一般人に人気な魔物の肉だ。バーンウルフは火を纏うことのできる特殊な魔物で肉は生でも燻製肉のような味になっていて基本的に燻製にしてさらに旨味を増すのが主流の食材だ。焼いてみるとどんな味がするのだろうか。


 ほどなくして料理がやってきた。

 どれも美味しそうだ。


 「いただきます」

 

 さあ、実食だ。


 まずはホーンラビットのシチューからだ。

 スプーンですくって口に運ぶ。

 

 肉を噛むとじゅわっと肉の旨味が溢れてシチューと混ざり、濃厚な味が口いっぱいに広がる。野菜も一口大の大きさでゴロゴロとした感じがまたうまい。そして少し硬めのパンはこのシチューとかなりの相性の良さが出ている、これならいくらでも食える気がする。


 少し口直しでエールを飲み、次はバーンウルフのブロックステーキをフォークで刺してみる。


 ブロック状の肉には簡単にフォークが刺さり肉の柔らかさがわかり、フォークが刺さった場所からたくさんの肉汁が溢れている。口に運ぶと燻製肉のような味、だがしっかりとステーキとしての感触があるという不思議な感覚に陥るがこれはこれで味わい深い。


 それから10分間無言で食べ続けあっと今に食べ終わってしまった。


 俺はエールのお代わりをして今更ながら食堂の中にいる人を軽く見てみる。


 商人や普通に夕食を食いに来ている町の住民、冒険者のパーティとかなりの賑わいを見せている。前の召喚ではみることがなかった景色だ。


 戦争でそれどころじゃない時期だったからどこの食堂に入ってもピリピリした雰囲気がありこんな風にワイワイと騒いでいるは新鮮だ。



 ……やっぱり、あいつと…あいつらと見たかったなあ……



 俺は少し悲しくなりながら残りのエールを飲み干した。








 ♢♢♢



 「ふう……食い過ぎたかな」


 食後の後、俺は部屋のベットに倒れこんで満足感がある腹をさする。

 あれから悲しみの感情を押し込むようにおかわりにして飯を食って風呂に入り、現在に至る。


 「せっかくの温泉……もう少し楽しめばよかったかな……」


 『そうよ。もっと楽しみなさいよ』

 

 「そうだな……ん?」


 どこからか声がしてそちらの方向を見ると……









 なんか透けてるアルメリアがいた。





 んん?!


 


 


 


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