テンプレはめんどくさい
「うるせぇ!?ここはお前みたいな見た目だけのやつがきていい場所じゃないんだよ!」
テンプレに会いました。
えーなにこの展開。前の召喚ではすぐに訓練や戦争だったからこういうのはなかったからこんな体験してないから新鮮にも感じるけど、会ってみてわかるけど……
「めんどくさ……」
「なんか言ったかゴラァ!?」
すごくめんどくさい。
ナナリ王に迷惑かけると後がめんどくさいし、どうするかなあ……。
俺が考えているとテンプレをしてくれているごっつい世紀末覇者みたいな格好の男が掴みかかってきた。周りも面白がって盛り上げている。
なんでこうなったのかな……
♢♢♢
「冒険者登録をしたんだけど」
「あ、はい。登録ですね、こちらの紙に必要事項をご記入ください」
「わかった」
冒険者ギルドクラド帝国王都市部にやってきた俺は受付の女性に声をかけて登録用の紙に必要事項を書いていく。
内容は名前、年齢、得意なもの、使える魔法、職業の四つだ。
得意なものは剣が得意だとか槍が使えるとかそういうもので職業は自分が名乗るための指標みたいなものだ。
「魔法使い」や「騎士」、「盗賊」など自分が得意なものを生かせるものを書く。
先ほどの三つの職業の説明をすると「魔法使い」なら魔法をメインに使う仕事、騎士なら護衛とか戦闘での盾役、「盗賊」なら迷宮などの罠解除や宝箱の鍵の解除などだ。
俺は職業欄には「付与剣士」とかいて欄を埋める。
付与魔法を使えるし、剣術も使えるからこれでいいだろう。
そう思って書き終わった用紙を受付の女性に渡し、職員が確認をとっていたら一人のごっつい世紀末覇者みたいな格好の男が近くに寄ってきた。
「お前が冒険者登録だあ?お前みたいなヒョロイ奴が冒険者なんてできるのか?やめとけやめとけ」
「……」
「おい、なんとか言ったらどうだ!」
めんどくさいから無視していると今度は肩を掴まれたので軽くその腕をひねり上げる。
「いで……てめ、なにしやがる!」
「急に掴んできたお前がなにしやがるんだよ。なに?俺あんたと初対面だけど」
「生意気なもやしがこんな場所来るから教育してやってんだよ」
「そのもやしに捻りあげられているのは誰よ?滑稽だな」
確かに今の服装は勇者の時に来ていた私服でとても戦闘ができるようには見えない。せいぜい依頼を出すのがいい見た目だが、確か登録には見た目は関係ないはずだ。なんな実力があるのならスラムの子供でも冒険者ギルドは登録を許可する。もやし呼ばわりされ追い出される理由はないはずだが。
「うるせぇ!?ここはお前みたいな見た目だけのやつがきていい場所じゃないんだよ!」
捻りあげた腕をほどき俺に掴みかかってくる。
♢♢♢
……で、現在に至るわけだが……。
「めんどくさい……」
めんどいめんどいめんどいめんどいめんどいめんどいめんどい……
あーもう、めんどくさい……
ラノベやゲームとかでよくある展開だけど実際にあって見るとめんどくさ。
俺は服を掴んでいる世紀末男の腕の骨を掴んで砕く。
「いっで!」
「骨を砕いたんだ。そりゃあ痛いだろうな」
「このやろう!もうただじゃおかねえ!!」
そう言って男は背中にある大剣を抜きはなち片手で持った状態のまま切り掛かってくる。だが本来なら両手で振るうはずの大剣をまともに片手で振るえる訳でもなくかなり太刀筋が鈍い。
俺は金剛を発動してその大剣を右手で受け止める。
「なっなにしたんだお前!」
「気にすんな…「剛腕」」
そのまま男の腹に拳を叩きこみ、世紀末な服をビリビリに破りながら男は建物に激突する。
「「……」」
吹き飛ばされた男を見て唖然とする建物内の冒険者。
それもそのはず、後から知った話だとあの世紀末男はそこそここの支部では荒くれ者だが強いものだったらしく。
あの男を倒したのは何者だと噂になっていたのに気づいたのは町を出て三ヶ月ぐらい経ってからの話。
男を倒した後俺は冒険者の登録証であるカードをもらいそのまま王城に帰った。
「さて、いくか」
翌日夜明け前の城門に俺はいた。
「本当に挨拶はいいんですか?他の方々に言わなくて七葉殿しか言わなくて」
なぜか見送りに来たナナリ王がそういうが、俺は直関わりたくないので朝を選んだのだ。余計な気を回されても困る。
「いいんだよ。それより、このバッチがあればニルに居るやつらに指示ができるんだな?」
「はい。このバッチは国王が信用できるものにしか発行できないものでしてそのバッチがあるだけで後ろに国王がいることの証明にもなります。それがあれば王命扱いになります」
「よくそんなもの発行したな」
「本来ならば戦争の際戦場の指揮官に渡すものです。ですが今回のことで何かあったら本格的に戦争になりますから特別に発行しました」
本当になんてもの発行したんだ。
絶対厄介ごとに巻き込まれる可能性が高くなった。
「まあ、これがないと役目を果たせないし」
「はい……ナオヤ様、おきおつけて。この国は、かつてあなたが過ごした国とは違うかもしれませんがいつでもあなた様の帰りを待っています」
バッチを受け取った俺にそう言ってナナリ王は頭を下げる。
一国の主である王が人に頭を下げるのは本来やってはいけないこと。
それもこんな外で頭を下げるのは流石に驚いた。
でもそれがどこか昔の仲間の王子に似ていて少し笑みがこぼれる。
「わかった。行ってくる」
俺はナナリ王に背を向けて城を出た。