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本日二話目の投稿です。順番にご注意下さい

 吹雪が倒れてから二日後。


 放課後空き教室に鏡、元気、雛、それとおまけに信治が集まっていた。集まったのはもちろん早苗に関することだ。最初の三人が集まるのは当然だが何故信治がいるのかというと早苗の魅了から解かれ、味方となることが出来るためだ。


「じゃまずは早苗の魅了の精霊についてだけどばっちしこの目で見てきたよー。」


 指で目を差し自信満々に言う。


「よく見せてもらえたな?」


 元気が心底不思議そうな顔をする。


「あはは、自慢気に見せてくれたよー。それで見た目なんだけどさ。めっちゃ気持ち悪かった。体の半分以上がどす黒くてとてもじゃないけど本当に精霊?って感じだった。」


 鏡は確信する。

 間違いない。《毒》に犯されている。


「いや、ほんともー気持ち悪いったらなかった。写真でも取って見せたいほどの気持ち悪さ。二度と見たくないからねー。」

「新保さん。この写真見てもらってもいい?」


 スマートフォンを取り出してある写真を雛に見せる。


「あー!こんな感じだったー!……けどなんで氷漬け?」

「そっか、ありがとう。」


 追求される前に急いでしまう。鏡が雛に見せたのは以前鏡と信治を襲ってきた精霊の写真だ。吹雪に頼んで送ってもらっておいたもので見事に吹雪によって氷漬けにされている。

 鏡の近くにいた信治はしっかりとその写真を盗み見ており僅かに目を開く。


「ねぇ荒川くん。鏡くんが見せてくれた精霊について何か知ってるのー?」


 目敏く信治の様子に気づくと首を傾げて信治を追求する。


「別に、前に暴走していた精霊だなーって。」


 首を傾げてきた雛になにか慌てることも怯えることもなく答える。しかし雛は暴走という言葉に恐怖する。


「暴走って最近噂になっている暴走する精霊のこと?早苗の魅了の精霊がそうだって言いたいの?」


 恐怖を滲ませた顔を鏡へと向けてくる。

 雛が恐怖するのも無理はない。暴走した精霊の被害は多くはないが普段暴れることの無い精霊の暴走という単語だけで異常性を感じるのだ。


「でもそれっておかしくないか?希樹の周りで特に誰かが怪我をしたとかないんだろ?」


 確認するように元気が雛を見るとしっかりと頷く。


「暴走しているって言う方が難しいんじゃないか?」


 至極もっともなことを言ってくる。現状《毒》に犯されたのは未契約の精霊たけでその事を吹雪から聞いている鏡も反論出来ない。なにせ契約した精霊も《毒》によって暴走するか分からないからだ。

 契約した精霊は力を制限される。力は精霊使いを通して行使される。だから《毒》に犯された場合契約によって制限されて暴走しない可能性も十分にあるからだ。

 このままでは埒があきそうにないと思った鏡はあることを思いつく。


「んー、新保さん。もう一人ここに呼んでいい?」

「もう一人?……秘密を守る人で私が納得出来そうな人ならいいけどー?でも私そんな簡単に人のこと信用しないよー?」


 暗にこれ以上増やすなと言っている。


「それなら大丈夫だ。」


 しかし鏡は雛の真意を読み取ることが出来ず迷いなくスマートフォンを操作する。鏡が最も連絡を取る相手だ。もたつくことなく操作できる。


「え!?うそ!呼ぶの!?」


 まさか本当に呼ぶと思わず慌てる雛。対して元気と信治は鏡が誰のことを呼ぶのかある程度想像でき、緊張していた。


 数分して四人がいる教室の扉が躊躇いもなく開け放たれる。その人物は鏡の隣に腰を下ろすと笑みを浮かべ


「初めましての方もそうでない方もこんにちは。鏡と契約をしている皇吹雪と言います。いつも鏡がお世話になっています。」


 どこぞの保護者の様に挨拶をした。





 鏡が現れてまず反応したのは元気。見るからに固まったのだ。続いては雛。突然の爆弾発言に思考が追いつかず何度も人差し指を吹雪、鏡へと交互に指す。信治は至って普通でいつもと変わらない風だが、実際は緊張で鼓動がいつもより早かった。


「ふっ、ふふっ、藤川くんの契約者ってす、皇さんだったんだあー。へー……うへぇあ!皇さん!?え、え、え?ふ、ふふふ、藤川くんどういうこと!」


 鏡の肩を乱暴に揺さぶる。揺さぶっている雛はこれでもかと目を開き驚きを体現している。


「し、新保さん……やめ……。」


 頭がぐわんぐわんしてきた。そもそも物理的にぐわんぐわんしてるのか。

 鏡は揺さぶられる脳みそで呑気なことを考えている。


「新保、さん?そこまでにしてあげてくれないかしら。鏡だいぶ気持ち悪くなっているみたいだから。」


 やんわりと雛の手に触れる。手が触れるや否や鏡の揺れが止まる。


「うわあ!す、すみません!」


 触れた手が誰のか気づくと慌てて鏡の肩から手を離す。

 鏡は頭をゆっくりと振って気分を取り直す。

 相変わらずの反応だな。吹雪ってやっぱりそれなりに有名なんだな。


「それで新保さん。吹雪は信用に足りるかな?」


 答えは決まっているも当然だ。

 新たに話し合いに吹雪が加わった。




 吹雪が加わったことにより暴走した――《毒》に犯された精霊への対処の案が簡単に出てくるようになった。

 まず一つ目に精霊を光の精霊で浄化するというものだがこれは時間のかかるもので精霊使いである早苗も保護される。二つ目は希樹だけをという事なら契約を切り希樹だけを助ける。しかしこれは難しいと。契約を切るには希樹の体のどこかにある契約の印を消さなければならない。消す方法は吹雪が知っているという。契約を切る方法は《御三家》だけが知っているもので他人に教えてはいけないらしい。ただ《毒》に犯されたという特殊な状況で無事に出来るかは分からないと。三つ目は単純に精霊を殺す。ここまで《毒》が進行しているなら別段罪に囚われることは無いと。

 吹雪はこの案を説明するに当たり《毒》に関しても鏡以外の三人に説明した。まだ《毒》については公表されていないがそろそろ隠すことも出来なるので言ってもいいでしょう、後で聞いたら返ってきた。


 三人の反応はそれほど大きくなく暴走した理由が判明して納得がいったという感じだった。


「それで新保さんはどの方法がいいかしら。」


 吹雪としては是非とも一番目を選んで欲しいところである。《毒》に犯された精霊とその契約者という貴重なサンプルが手に入るのだ。非道かもしれないが《御三家》としては《毒》に関するサンプルはあればあるほどいいのだ。特に今回は契約した精霊という初の事例だ。逃したくないが無理に推し進めることは出来ず、雛に任せるつもりでいた。


 雛は暫く考えていた。一番目は時間が掛かり、いつ終わるか分からない、が一番安全。二番目はすぐに終わるが安全面は考慮出来ない。三番目は考えるまでもなかった。倫理観がそれを拒否する。


「……二番目でお願いします。早苗を、助けてください。」


 頭を床につける勢いで下げる。一番目を選ばなかったのは保護され、それから早苗に会うことができるのかという不安が雛を襲ったからだ。二番目は安全を保証出来なくとも元凶を切り離すことが出来ればすぐに元の早苗に会えると楽観しているからだ。それに吹雪なら大丈夫なのではという気持ちもどこかにあったからだ。


「分かったわ。それなら準備が必要ね。明後日の日曜日に希樹さんの契約を切るわ。突然かもしれないけど早い方がいいわ。みんなも集まってくれるかしら。契約を切っている間精霊に襲われるかもしれないからその時守って欲しいの。場所は私の家で行うわ。後で鏡を通して場所を聞いてちょうだい。新保さん。新保さんには希樹さんを連れてきてもらうという大役があるわ。多少嘘をいっても構わないわ。頼んだわよ。皇の名前だったら幾らでも出していいから。」


 有無を言わせることなく全てを言い切る。


「何か質問はあるかしら?」


 誰も特に何も意見はないみたいだ。誰も動かない。一名ほど吹雪の家と聞いてそわそわしているのがいるが鏡は見なかったことにした。





 来たる日曜日。吹雪の家の前に五人の人影があった。鏡、元気、信治、雛、早苗。どのような方法で雛が早苗を連れ出したのか誰よりも笑顔だった。

 連れ出したと言っても雛が吹雪の家に誘われた早苗も一緒にどう?と言った所二つ返事で了承されたのだ。早苗は皇家と縁を結べる貴重な機会と思ったのだ。

 鏡は五人が揃ったの確認すると門の呼び鈴を押す。


「あら、もう来たの。時間前なのに全員とは凄いわね。待っててすぐに開けるわ。玄関の鍵は空いているからそのまま入って来てちょうだい。」


 数秒してガシャン。と大きな音がし、門が開いていく。


「ねぇ、ここ現代日本よね、雛。」

「えーと確かうん、そのはずだったよーな?あ、荒川くん?」

「元気!門が、門が勝手に!てか門って一般家庭に存在するものだっけか!?」

「…………。」


 四人の反応を見て俺も最初あんな感じだったのかと恥ずかしくなっていた。

 鏡と驚きが消えないままの四人は玄関まで無言で歩き扉を開けると更に驚くようなものが目に飛び込んでくる。

 剥製の虎が玄関からリビングに続く廊下に堂々と飾られている。四人は声も出なかった。


「いらっしゃい皆。とりあえずこっちに来てお茶でも飲みましょう。」


 私服姿の吹雪が奥から姿を現し五人を出迎える。

 五人は粛々と吹雪の後を着いていく。

 リビングは壁にかかった大きな薄型テレビに中庭にあるプール。四人は驚かなくなった。


「今日は来てくれてありがとうね。好きなところに腰を掛けてちょうだい。今お茶持ってくるわ。」


 最初から用意したあったのかすぐに吹雪はすぐに戻ってきた。

 リビングにはおあつらえ向きにテーブルとそれを囲む六つの座布団がある。座布団の存在に別の意味で四人は驚いていたが吹雪も鏡も気づかなかった。


「改めて今日は来てくれてありがとうね。私の騎士であり婚約者である鏡と仲良くしてくれてありがとう。」

「…………ごふっ!」


 あまりに自然と言うもので初耳の早苗は反応が遅れてしまい飲もうとしたお茶を吹き出してしまう。


「す、すみません!」

「はい、どうぞこれを使って。」


 こうなることが分かっていたのかテーブルの下に置いておいたタオルを差し出す。


「本当にすみません汚してしまって……。」


 普段の早苗をとは思えないしおらしさに鏡を含む男衆が驚いている。


「けれど鏡くん皇さんの騎士だったんだあ……へえ。」


 隣に座る雛にも聞こえるか聞こえないかの声。もちろん離れたところに座る鏡に聞こえることはないが謎の寒気が鏡を襲う。無意識に腕をさすってしまう。


「どうしたの鏡?もしかして寒い?」

「あ、いや大丈夫。そういえば前に預けておいたものってどうなっている?」

「ああ、()()ね。大事に保管してるわよ。」


 鏡は別に何も吹雪に預けていない。これは早苗をある場所へと連れていくための合図。早苗以外は全員分かっている。


「一応、確認する?」

「ああ。そうだみんなも見てくれないか。すごく綺麗なんだ。」


 怪しまれてはいけないとういう気持ちが心臓の鼓動を速くする。ここまで緊張するなんて……!


「はーい!俺見てみたーい!」


 どこからお茶らけた声がリビングに響く。


「俺も見てみたいな。鏡のお宝なんだろ?」


 底抜けに明るい笑顔が鏡と吹雪へ向く。吹雪は二回だけしか会ってないがだがこんな顔が出来るのかと感心していた。


「えー、二人とも行くのー?じゃー私もー。早苗も行こー。」

「雛がそう言うなら行くよ。私も鏡くんのお宝きになるしね。」


 よっしゃ!全員が心の中でガッツポーズを決める。


「みんな行くってことね。こっちよ着いてきて。」


 吹雪に案内されたの地下室だった。うっすらと明かりが灯っているだけで不気味だ。地下ということもあってとても冷えている。心無しか鏡と吹雪以外どんどん寒くなっている気がしていたが地下室だからかと気にしなかった。


 鏡は昔ここに隠れたことを思い出した。吹雪と吹雪の両親、鏡で隠れんぼをした時鏡がお気に入りの隠れ場所としてよく隠れていた。


「鏡あそこの中に入っているわよ。」


 指した先には古い大きな宝箱が置いてある。


「開けても大丈夫か?」

「問題ないわよ。これが鍵よ。」


 少し大きな鍵を渡され鏡は宝箱に近づく。


「あ、鏡くん待ってー!」


 信治が鏡の後をいの一番に追いかける。演技なんだよなと鏡が頭を捻るたくなるほど自然体だ。その後を呆れたように追うのは元気。


「私も見てみたーい。」


 いつから舐めているか分からない棒付きの飴をピコピコ動かしながら雛が宝箱へと歩いていく。

 早苗は動かなかった。実際そこまで興味はないみたいだ。


「これすごいな!どこに残っていたんだこんなもの。」

「鏡くん!これ普通に欲しいよ!」

「うわあ……。これは、確かにすごい、ねー。」


 宝箱の中は江戸以前使われていた携帯可能な武具が入っいた。三人の反応は演技ではなく素だ。


 三人の反応に早苗の興味が顔を覗かせてくる。ついに足が出る。視線も宝箱と皆の方へ集中する。ゆっくりと歩いていき吹雪の横に並びそうになった所でぞくりと肌が粟立つ。そして目の前に吹雪の顔があり、驚く間もなく鈍い痛みが腹を襲い意識が途切れた。


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