悪役令嬢はお金を貯めたい
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──悪役令嬢はお金を貯めたい
はっ! と私が気付いたのは7度目の空中からの登校時のことだった。
「どーした。空から降りてきても、今更驚かないぞ」
と、そう告げるのはここでさぼってるベルンハルト先生。
「違うんです! お金がないんです!」
「はあ?」
順調にやさぐれてますね、ベルンハルト先生。私に対する反応がもう公爵家令嬢を相手にしているものじゃなくなってますよ。まあ、7回も空から登校してきたら、そんな反応にもなりますか。
「お金がないって、公爵家令嬢がか? 奇行のせいでお小遣いでも減らされたか?」
「いえ、まあ、それもあるのですが」
「あるのかよ」
そうなのだ。私が真・魔術研究部でやってることがどこからかお父様に漏れたらしく、公爵家令嬢たるものが、奇妙な実験や奇行をするなと怒られたのだ。
私が真剣に取り組んでいる世界の戦闘の有様を変えるかもしれない実験を奇行呼ばわりとはがっかりですよ! それはアーチェリー部に乱入して部員が放った矢を全て空中でキャッチしたのはやりすぎたかなって気もするけど!
「まあ、それも我が部に深刻な影響をもたらすのですが。何せ、お猿のピンク君が偉く高くて部費が軽く飛びましたからね」
「隣の部室から猿の叫び声がうるさいって苦情来てたぞ」
隣の部室って何部だったけ。確か……チェス部?
「でも、それはいずれお父様が機嫌を直せば解決するからいいんです。機嫌を取るために今度また一緒に狩りに行く約束をしているので、それでちょろりと機嫌を直して貰います。問題は……」
「問題は?」
私が深刻な表情をするのにベルンハルト先生が興味なさげに尋ねる。
「我が家が没落したときのためのお金を第三国に貯金しておく計画をすっかり忘れていたのですよ!」
「はあ?」
2度目のリアクション、ありがとうございます。
「いや。オルデンブルク公爵家が突如として没落するとも思えないが。……何か犯罪にでも加担してるのか?」
「いえ。我が家は非常にクリーンです。ですが、あらぬ疑いをかけられてお家取り潰しになる可能性が将来に存在しているのです」
私がそう説明してもベルンハルト先生は何を言ってるんだろうという顔をしていた。
だが、我が家が取り潰しになる可能性は未だに残っているのだ。
高等部になってエルザ君が入学してきたら、あの地雷たち──フリードリヒ、アドルフ、シルヴィオ──が何をするのか想像もできない。とんでもないことをやらかして、その始末に私が使い潰される恐れも……。
そのために備えて、お金を貯めて、プルーセン帝国が手出しできない第三国に預け、お家取り潰しになっても新たなスタートが切れるように、とそう思っていたのだが……。
わーっ! いろいろと貴族生活満喫しちゃってお小遣いすら使い果たしているー!
これはいろいろと不味い。バイトか何かしてお金を貯めなければ。今すぐに。
「ベルンハルト先生。何か私でもできそうなアルバイトってないですか?」
「そうだな。初等部の教師補佐の仕事なら空きがあるはずだぞ」
「それについて詳しく!」
大学のTAみたいなものだろう。私は教えるのは得意な方なので、これは期待できる。
「そうだな。昔、俺の仕事を手伝ってくれたみたいに、小テストを作ったり、授業で使うプリントを作ったり、実験の準備をしたり、採点をしたりする仕事だ。そこまで高度なことは求められないはずだ」
「ほうほう! それなら是非とも受けたいですね!」
実に私向けのアルバイトだ。これを逃す手はない。
「だが、恐ろしく薄給だぞ。1日働いてたったの800マルクだ」
「なら、遠慮します」
800マルクって……。パン屋のエルザ君の方がまだ稼いでいるぐらいだよ。
「先生は学生の時にどんなアルバイトしてました?」
「あー。冒険者ギルドで手伝い魔術師やってたな」
手伝い魔術師?
「手伝い魔術師って何です?」
「正規に冒険者ギルドに登録している魔術師以外の人間が臨時にパーティーに加わって、文字通りそのパーティーの手伝いをする仕事だ。学園は在学中の冒険者ギルドの登録を禁止してるから、この手伝い魔術師をやるしかないわけだ」
なるほど。学園の魔術師なら腕は確かだし、雇ってくれるパーティーもいるだろう。これは期待できそうですよ。
「ちなみに、おいくらぐらいで雇って貰えます?」
「俺が学生の時は放課後と週末に仕事して、大体月5万マルクは稼いでたな。今の学園の教師の給料と比べたら微々たるものだが、学生には結構な額だったよ。今の相場がどうなっているかは知らないが」
「おおっ! 5万マルク!」
大体、この世界の労働者階級の平均的な月収が8万マルクだ。そう考えると手伝い魔術師の報酬は結構な額である。
これにお小遣いを可能な限り切り詰めれば、それなりの額の貯蓄ができる。今から高等部3年まで馬車馬のごとく働けば……!
「……まさか、お前も手伝い魔術師をやる、とか言わないよな?」
「言いますよ! お金が必要なんですから!」
私にはお金が必要なのだ! なんとしても! 没落を見越して!
「あのなあ……。冒険者ギルドの手伝い魔術師なんて貧乏学生がやることだぞ。公爵家令嬢がやるようなことじゃない。公爵閣下が知ったら、なおのこと小遣いを減らされる羽目になるぞ」
「先生が黙っててくれたら分からないから大丈夫です♪」
「言っておくか……」
「やめてください」
やめて。せっかくの私の稼ぎ先を潰さないで。
「なら、強引には止めないが、無理はするなよ。公爵閣下から苦情が来ても俺は知らん顔をするからな」
「どうも!」
やったぜ! これで稼ぎ先が見つかった!
「じゃあ、今日の放課後、早速行きますね!」
「おい。部活は──」
いえーい! これで没落した場合の貯蓄をするぜー!
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やってきました。冒険者ギルド!
剣と魔法のファンタジーワールドなんだから、こういうのあるよね。これこそファンタジーって感じだ。よく分からないけれど。
しかし、厳ついおじさんがたむろしているな……。女性もいるけど妙齢のいかにも荒事やってますって感じのお姉さんたちだし。
私、完全に浮いております。
ま! 気にしない、気にしない!
前向きに考えよう! 私は目立つと! アピールできると!
私は堂々と冒険者ギルドの受付に進んだ。
「あの、手伝い魔術師の仕事したいんですけど!」
「え? ああ。学園の生徒さんですね。ようこそ、冒険者ギルドへ」
意外にも受付のお姉さんの反応は良かった。こういう学生さんは多いのかな?
「でも、見る限り中等部の生徒さんですよね。ブラッドマジックはまだ初歩的なものしか使えないでしょう。雇ってくれるパーティーは少ないかと思いますよ」
「大丈夫です。独学ですけど身体強化は概ね、そして治癒魔法も使えますよ。エレメンタルマジックも完全制覇です」
受付のお姉さんが心配そうな表情をするのに、私がガッツポーズをしてそう返した。
「でしたら、ギルドの保証書を発行しますので、お名前と住所を」
「え? それいります?」
「保証がない方を手伝い魔術師にするわけにはいきませんから」
やばい。
選択肢!
①ここは素直に本名を書く。
②危ないから偽名を使う。
③諦める。
③は論外だ。ここまで来て諦めてたまるか。
だが、①は私がオルデンブルク公爵家の人間だと知れてしまう。とはいっても②の偽名を使って下手に怪しまれたら雇って貰えない……。
わざわざばれないように髪型をポニーテイルにして、伊達メガネまでかけているのがまるで意味がない……。
ええい! ままよ! ここは①だ! 本名を書く!
「どうぞ!」
「はい。えーっと。ええっ? アストリッド・ゾフィー・フォン・オルデンブルクさん、ですか? ひょっととしてあのオルデンブルク公爵家の?」
「そ、そうです……」
一発で見抜かれてしまった。とほほ。
「手伝い魔術師の保証ってこれでできます?」
「念のためにオルデンブルク公爵家の方に連絡を入れても構いませんか?」
「それは勘弁してください! お忍びって奴なんです!」
連絡されたら即座にお父様にばれちゃう! せっかくベルンハルト先生が黙っててくれるのに!
「はあ。では、学生証を確認させていただいても構いませんか?」
「どうぞ!」
学生証の確認ならば問題はない。そこには名前と顔写真、そして住所が記載されている。顔写真はどんな魔術を使ったか知らないが、ちゃんと顔写真だった。本当にどうやったんだろう、これ。
「はい。確認できました。では、保証書を発行させていただきます。……名前はフルネームがいいですか?」
「いえ。名前だけでお願いします」
この保証書の提示が必要になった時オルデンブルク公爵家の娘だとばれたら、噂になってしまうかもしれない。そして、巡り巡ってお父様の耳に届き、お小遣いの額が更なる経済制裁の影響を……。
「では、アストリッド様。改めましてようこそ冒険者ギルドへ。手伝い魔術師についての説明は必要ですか?」
「お願いします」
ベルンハルト先生が手伝い魔術師をやっていた時とは変わっているかも。
「手伝い魔術師は冒険者ギルドにおける非正規のメンバーです。ですが、冒険者ギルドの正規メンバーに雇われることでクエストに参加できます。そして、そのパーティーのメンバーとの相談に応じた額を報酬として受け取れます」
「報酬の受け渡しは冒険者ギルドが仲介してくれるんですか?」
「はい。トラブルを避けるために、パーティーと手伝い魔術師の間の報酬レートを冒険者ギルドが記録しておき、冒険者ギルドからのクエスト達成時の報酬受け渡しの際に、それぞれに支払われます」
よしよし。私が女子供だからと言って舐められて報酬を渡さないということはなさそうだ。お金が確実に貰えるなら文句はない。
問題はその報酬交渉で私が大したことはできないだろと思われて、報酬をケチられることである。私はしっかりと報酬を貰いたい。それだけの技術はあるつもりだから。
「さて、どこかのパーティーに雇って貰わなくては」
まあ、まずは雇って貰えないと話になりません。
私はきょろきょろと冒険者ギルド内を見渡す。冒険者ギルドの中ではどうにも近寄りがたい男女が溢れている。どこかに魔術師がいなさそうなパーティーを探し出さなければならない。
そう考えていると、ギルドの片隅でなにやら愚痴っている女性だけのパーティーがあった。流石に私と同い年の女性はいないが、結構若い女性もいる。あれなら話しかけやすそうだな。魔術師らしき人物の姿も見えないし。
「すいませーん! 魔術師ご入用じゃないですか?」
と、私はフレンドリーにそのパーティーに話しかけてみた。
「え? あなた、魔術師なの?」
「あれだよ。手伝い魔術師。学園の生徒だ」
私の言葉に反応したのは短い栗毛の女性と頬に傷を負った小柄な女性だった。
それぞれ鎖帷子の鎧と動きやすそうな皮の鎧を纏っている。そして、その腰にはショートソードを下げているのは栗毛の女性、その背中に弓を背負っているのは頬傷の女性。
「手伝い魔術師か。それもありかもしれないな」
そう告げるのはプレートメイルを纏った屈強な女性だ。この女性は背中に大きなクレイモアを背負っている。
「私はこのパーティーのリーダーのゲルトルート。見ての通り前衛だ。こちらのふたりは前衛のエルネスタと後衛のペトラだ」
ふむふむ。目の前の屈強な鎧の女性さんがゲルトルートさんで、栗毛の女性がエルネスタさん、そして頬傷の女性がペトラさん、と。
「それで、君は?」
「私はアストリッド。手伝い魔術師です!」
元気よく自己紹介すると相手に与える印象はいいぞ。
「アストリッド。見ての通り、このパーティーには魔術師はいない。そのうち正式に仲間に加えようと思っているのだが、なかなか気の合うものが見当たらなくてな。そもそも魔術師そのものが冒険者ギルドには少ないのだが……」
「それでしたら、ぜひ私を!」
冒険者ギルドは魔術師は売り手市場なのか。ふふふ、いいことを聞いた。
「だが、君は見たところ中等部の学生だろう? ブラッドマジックなどはあまり取得していないのではないか? 私は学園には詳しくないが、普通手伝い魔術師をやるのは高等部の学生だと聞いている」
「ご安心を。身体能力強化も治癒技術も習得しています。ご覧に入れましょう」
私はそう告げると、腰に下げているナイフを取って自分の手の平に当てる。
「ま、待ってくれ! 危ないぞ!」
「ご安心!」
私は痛覚を遮断して、ザクリと手の平を切る。
痛覚遮断は最近覚えた魔術だ。なんどか手の平をちくちくし、そのときの神経系の動きをモニターする。そして、ちくちくのときに働く神経系を遮断することで、痛みはなくなるというわけである。
まあ、これだと痛覚どころか普通の感覚も遮断されてしまうのだけど。
「うわっ! びっくりするほど深く切っちゃってるよ!」
「おいおい……。痛くないのかよ……」
エルネスタさんとペトラさんが驚きの目で私を見る。だが、驚くのはまだ早い。
「ほい! 治癒魔術!」
私はぱっくり開いた傷口をなぞった。
すると、ブラッドマジックによって自然治癒能力が強化され、瞬く間に、そして綺麗に傷口が塞がっていく。傷があった痕跡は僅かにも残らない。残るのは傷口から流れた血だけである。
「おおっ。確かに治癒技術があるようだ。ならば私たちのパーティーに手伝い魔術師として参加して貰えるだろうか」
「身体能力強化も試していいですよ?」
「いや。治癒技術をこれだけ習得しているのだ。身体能力強化も期待していいだろう」
うーん。報酬率を上げて貰うためには、自分の実力を示しておきたいんだけどな。
「では、どのようなクエストを受けられます?」
「うむ。私たちのパーティーはそこまで高難易度のクエストは受けてこなかった。というのも、いざという時に治癒を行ってくれる魔術師がいなかったからだ。私たちは仲間を失いたくはないから、リスクは避けてきた」
ほうほう。仲間思いなリーダーさんだな。悪い人じゃなさそうだ。
「だが、ここで心強い魔術師が加わってくれることであるし、ひとつ大胆なクエストに挑もうと思う」
「というと?」
なんだろう。ドラゴン退治とかかな。
「薬草採取だ」
「薬草採取」
え? それってチュートリアルでやるようなクエストじゃないですか?
「そ、それって難しいんですか?」
「ああ。私たちが採取を目指すのは、マンドレイクもどきの採取だ。マンドレイクもどきが群生している地区は必ずと言っていいほどに強力な魔獣の生息地となっている。グリフォン、コカトリス、ワイバーン、エトセトラ」
おや。私、グリフォンとコカトリスは倒したことありますよ!
「というわけで、危険なクエストだ。もし、君が止めておきたいというのであれば、無理強いはしない。どうするかな?」
「もちろんやりますよ!」
グリフォンやコカトリスに怯える私などではない! そのマンドレイクもどきとやらをゲットして戻って来ようじゃないか!
そう言えば、学園では薬草学についてはまだ初歩的なものしか学んでないな。ここでも勉強だ。マンドレイクもどきの周りには強力な魔獣が生息していることが多い、と。こういう知識もいずれは役に立つはずだ。
「頼もしいな。では、よろしく頼む。それでは報酬率について決めようか」
「はい」
さあて、問題はお金の配分だ。私もベルンハルト先生並みには稼いでおきたい。
「全体報酬の20%でどうだろうか? このクエストは難易度も高く報酬額も大きい。悪くない割合だとは思うが」
そう告げて、ゲルトルートさんはクエスト発注書を私の方に向けた。
ふむふむ。マンドレイクもどき30束で、報酬は6万マルク。つまり、私は1万2000マルクの報酬が得られるわけだ。ベルンハルト先生は放課後と週末に働いて、月に5万マルクと言っていたから、これはかなりの額なのでは……?
「それでお願いします!」
「決まりだな。では、私は受注手続きをしてくる」
ゲルトルートさんはニコリと笑うと、クエストの発注書を持ってカウンターの方に向かっていった。
「ふう。しかし、学園の生徒と言えば貴族様だろう? なんだって、手伝い魔術師なんてやろうと思ったんだ? 遊ぶ金か?」
「いえ。将来に備えての貯蓄です。将来が危ういので」
ゲルトルートさんが去ってから、ペトラさんが私の方を向いて尋ねるのに、私は真剣な表情でそう返した。
そう、将来の破滅に備えて貯蓄しておかなければ。
計画は三段階。
まずはなるべく破滅フラグが立ちそうな行動は避けるということ。お家取り潰しフラグが立たず、平穏無事に学園生活を終えられる方が都合がいい。
次に破滅フラグが立ってしまってからの行動。
私は現代兵器を以てして帝国軍の兵士たちをなぎ倒していき、お父様は私が親交を結んだ諸侯たちと手を組んで武装蜂起するのだ。そして、皇室と皇室派諸侯を打ち倒し、新帝国樹立を宣言する。
もし、これに失敗したらプルーセン帝国には手出しできない第三国に逃亡し、そこで蓄えておいた富を使って再スタートするのだ。イリスとは会えなくなるけど、命を奪われるよりはマシだ。
これがアストリッドが考えた破滅を避ける三段計画である。
できれば第一段階で食い止めたい。悪くても第二段階で。
第三段階は事実上の敗北宣言なのだ。この私がフリードリヒなどに負けてなるものか。オルデンブルク公爵家の意地を見せてやる。
「貴族様も大変なんだね。私たちには想像もできない世界に住んでるんでしょう」
「いやあ。毎日魔術の研究ばかりしてますよ」
エルネスタさんがのほほんと告げるのに、私はそう告げておいた。
「いいか、学生。戦場ではあたしの傍にいろ。下手に動かれると危ないからな」
「はい。よろしくお願いします」
ペトラさんは実戦経験があるのだろう。早速指示を出してきた。素直に受け取る。
「しかし、このパーティーもどうにかして魔術師を引き入れられればな。あたしたちは実力的にはそこまで悪い方ではないと思うんだが」
「魔術師さんは少ないからね。学園を卒業された生徒さんで冒険者になるのは、それこそよっぽど貧乏な貴族じゃないと。学園以外の魔術師さんは実力がまちまちで、なかなかスカウトしにくいしねー」
ああ。魔術師の教育機関が貴族によって占められているために、冒険者ギルドで魔術師不足が起きているのか。
前にも話したけど、貴族は学園で魔術を学び、平民は元宮廷魔術師などのリタイアした魔術師に教わる。前者は一定したカリキュラムで安定した実力の魔術師を輩出するが、後者はそれぞれバラバラのカリキュラムで教えるため実力はまちまち、と。
「まあ、今は耐えるのみ。大手パーティーにくっつけば、どうにかなるし」
「手伝い魔術師もいるしな」
エルネスタさんとペトラさんがそう告げ合っていたとき、ゲルトルートさんがカウンターから戻ってきた。
いよいよクエスト開始だ。
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