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元悪役令嬢さんと従妹の結婚式

…………………


 ──元悪役令嬢さんと従妹の結婚式



 ついにイリスがヴェルナー君と結ばれる日がやってきた。


 時が経つのは早いものだ。私が卒業してから早4年。子供たちも3歳に育った。


 最近の子供たちは自立心が芽生えたというか、何をやっても“やだ”と言って拒否することを覚えてしまった。私とベルンハルトで言って聞かせて、何とか育てていっているのだけれど、この時期の子供は大変だ。


 まあ、そんな子供たちもベスとフェンリルにだけは素直に従うのだ。


 どーいうことだい!


 話を戻そう。イリスとヴェルナー君が結婚式を挙げることになり、当然ながら私も招待された。もちろん出席するつもりだ。イリスの花嫁衣装を見ないわけにはいかないだろうっ! きっと凄い美少女に見えるぞっ!


「というわけで、今週末はイリスの結婚式に出席します」


「なるほど。あの子ももう結婚か」


 私が告げるのに、ベルンハルトが頷く。


「イリスお姉ちゃん結婚するの?」


「誰と?」


 早速我が家の賑やかし要員が騒ぎ始めましたよ。


 イリスとこの子たちは何度か会っている。イリスが弟と妹ができたみたいと喜んでいたから、この子たちはとても優しくしてもらっている。そのためイリスには非常に懐いていた。まあ、悪いことじゃないが。


「何故イリスさんはお姉ちゃんで私はおばさんなんでしょうね」


 ただ、ベスだけが酷く不満げであった。


 だって、ベスってロリババアじゃんと言いたかったが、ここでそういうことを言ってベスの機嫌を損ねたくはないので黙っておく。ベスは自分の年齢をどれくらいに見てもらうと嬉しいんだろうか。長い付き合いながら分からない。


「イリスが結婚するのはヴェルナー君だよ。覚えてる? ヴュルテンベルク公爵家の男の子。前に会ったことあるでしょう」


「ある! 思い出した!」


 どうやらエリザベスはちゃんとヴァルナー君のことを覚えていたようだ。


「もうイリスお姉ちゃんとは会えないの?」


「そんなことないよ。私たちはヴュルテンベルク公爵家とも仲良しだから、いつでも会いに行けるから。心配しないで」


「よかった!」


 マンフレートは特にイリスに懐いてるもんね。気になるわけだ。


「じゃあ、みんなでおめかししてイリスの結婚式に行こうね」


「私、きつい服やだ!」


「僕もやだ!」


 全く、これですよ。


 一応貴族子息子女なんだから、ドレスとかタキシードには慣れておいて貰いたいのに、この子たちは暴れまわりやすい緩い服装の方が好きなのだ。困ったものである。


「おめかししない子はお留守番です」


「ううっ……」


「分かった……」


 でもまあ、3歳児相手に口喧嘩で負ける私ではありませんわ。大人の権限というものを前にしては子供という存在は無力!


 ……あんまり大人の権限という乱発するとひねくれた子になりそうなので控えようとベルンハルトと約束しています。


「綺麗なお洋服を選んであげるからね。我慢するんだよ。君たちが綺麗にしてると、イリスだって喜ぶからね?」


「そうだぞ。イリスお姉ちゃんのためにもおめかししような。きっとふたりが綺麗な洋服で見送ってくれるなら喜んでくれるぞ」


 私とベルンハルトがそう告げるのに、子供たちがコクコクと頷く。


 ここら辺はまだ素直でいいんだけど、将来反抗期とか来たらどうしようか……。


「じゃあ、今日の午後はドレスとタキシードを買い揃えに行こうね」


「はーい!」


 というわけで私たちは今日の午後はダニエラさんのところでマンフレートのタキシードとエリザベスのドレスを買い揃えに向かった。


 マンフレートもエリザベスもタキシードやドレスは嫌がったのだが、実際に私とベルンハルトが似たようなの着てみせて綺麗だよー、格好いいよーとアピールすると、ちょっとは興味を示してくれた。


 子育てで大事なのは大人がやって見せてみることだとは言ったものだ。


「僕、これにする!」


「私はこれ!」


 最終的にマンフレートがフォーマルなタキシードを選び、エリザベスが朱色のドレスを選んだ。エリザベスは最初は白いドレスを選ぼうとしたのだが、白いドレスは花嫁さんのためのドレスだからねと言って納得してもらった。


「私、早く花嫁さんになりたい!」


「うんうん。後13年待とうね」


 エリザベスには私のように華のない青春を送って欲しくないので、基本的に自由恋愛をさせてあげたいのだけれど、私たちが婚約者を選んだ方が楽でいいかな?


「どう思います、ベルンハルト?」


「そうだな……。難しいところだ。俺たちはなんだかんだで自由恋愛で結婚してるわけだしな。それなのに息子と娘には婚約者を付けると言うのも。だが、婚約者を親が見つけておいてやらないと優良物件は先に持って行かれる」


「困りましたね……」


 信条としては自由恋愛させてあげたいけれど、現実的には婚約者を親が見つけておくのがベスト、と。うーん。理想と現実の板挟みだ。


「まあ、まだ3歳だ。婚約者を見つけるのは早いだろう。もし、探すとなれば、お互い手分けして探さないといけないぞ。俺は兄貴の伝手で近衛兵からいい奴を探す。そっちはオルデンブルク家の伝手で何か探してくれ」


「ラジャー!」


 とはいえど、私が有するオルデンブルク家の繋がりというとブラウンシュヴァイク家やら、シュレースヴィヒ公爵家やら、ヴュルテンベルク公爵家やら、グレト侯爵家やらとかぐらいしか……。


 意外に多いな。対フリードリヒ包囲網のために構築した人脈がそのまま生きている。ヴァーリア先輩も次の子供を授かったとおっしゃっていたし、ヴェルナー君たちはこれから子供を授かるだろう。あの自由奔放すぎるヴァルトルート先輩も立派な子供を授かるに違いない。


 うん。結構、当てがあるぞ。


「マンフレート、エリザベス! 将来、君たちに素敵なお嫁さんとお婿さんを紹介してあげるからねっ!」


「わーい!」


 まだ3歳だから分かってないとは思うけど、安心させてあげよう。


 君たちは私みたいにぼっちだったり、周囲を警戒したりしなくていいからね!


…………………


…………………


 そんなこんなで子供たちのタキシードとドレスを揃えたら、イリスの結婚式にやってきた。ハーフェル大聖堂で結婚式は開かれ、大勢の参列者が並んでいる。ブラウンシュヴァイク家もヴュルテンベルク公爵家も大貴族だから、参列者は多いだろう。


 私はちょいとブラウンシュヴァイク家の関係者ということで長い列を抜けて、イリスの控えている控室へと向かった。


「イリス! 結婚おめでとう!」


「お姉様! 来てくださったのですね!」


 私が来たのでイリスが喜んで飛んできてくれた。


 イリスは壮麗な白いドレスの花嫁姿。素敵な花嫁さんだ。


「イリス。そのドレス、似合ってるね。とっても綺麗だよ」


「ありがとうございます。早くヴェルナー様に見せたいところです」


 まだヴェルナー君には披露してないのか。まあ、結婚式前に花婿に花嫁姿を見せると縁起が悪いとかなんとか言ったよね、確か。おぼろげだけど。


「ヴェルナー君とは上手くやっていけそう?」


「ええ。お互いに信頼しています。2年間待ちましたが、ようやく結ばれるのですから楽しみでなりません。ヴェルナー様はとてもお優しい方ですし、きっと結婚生活も上手く行くでしょう。私は心配していません」


「そっか、そっか。よかったね、イリス!」


 イリスはヴェルナー君のことを信頼しきっているな。親が決めた婚約者でも文句なし、と。マンフレートとエリザベスも婚約者を見つけておいてあげてもいいかもしれない。イリスとヴェルナー君のように上手く行くかもしれないし。


「イリスは子供は何人欲しい?」


「そうですね。お姉様のように双子がいいです。男の子と女の子で」


「イリス。双子は出産が大変だからやめた方がいいよ」


 体力馬鹿の私ですらも双子の出産は死にそうだったのだ。まだ華奢も、華奢で、年齢も14歳かそこらにしか見えないイリスに耐えられるとは思えない。


「そうでしょうか。残念です……」


「双子なんて選んで産めるものでもないし、ひとりずつ産めばいいと思うよ!」


 しょんぼりするイリスに私がそう告げる。


「そういえばディートリヒ君は来てるの?」


「はい。ようやくシュタウフェンベルク伯爵家のジルヴィア様と婚約なさったそうで。その方と一緒に来ておられますよ。ディートリヒ様は結婚なさるのはもうちょっと先の話になりますが」


 イリスが高等部2年の時にそのジルヴィア君は中等部1年だったもんね。もうちょっとばかり待たないといけないね。


「みんな幸せになれそうでよかった。今度はディートリヒ君の結婚式だね」


「はい。一緒にディートリヒ様を祝福しましょうね、お姉様」


 ディートリヒ君も幸せになれれば文句なしだ。


「じゃあ、式場で会おうね、イリス! 楽しみにしているよ!」


「ええ。お姉様。祝福してください」


 それからイリスの結婚式が開かれた。


 イリスとヴェルナー君は参列者に万雷の拍手で迎えられ、皆に祝福されながら誓いの言葉を述べた。死がふたりを分かつまで、だ。


 それから指輪が手渡され、イリスはヴェルナー君の恋の口づけを。


 うう。我が妹もとうとう嫁に行くのか……。我が事のように嬉しい反面、ちょっと寂しくもあるところだ。よく見ればイリスのお父さんであるブラウンシュヴァイク公爵閣下も涙目でイリスたちを見ている。親御さんならこの気持ちは分かるよね。


「結婚おめでとう、イリス!」


「結婚おめでとうございます、イリス先輩!」


 イリスを祝福する声の中にはディートリヒ君も混じっていた。可愛い彼女さんを連れているぞ。だから、私はきっと君はいい相手を見つけられると言っていたんだ。


「ありがとうございます!」


 イリスとヴェルナー君はみんなにお辞儀すると、ブーケを投げた。


 それをキャッチしたのは──。


「やった! 取った!」


 ……エリザベスだった。持ち前の運動神経がものの見事にイリスの投げたブーケをキャッチさせていた。


 君は結婚はまだ早いんじゃないかな……。


 まあ、何はともあれ、物語は大団円を迎えそうでなによりだ。


 皆に祝福がありますように!


…………………

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