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悪役令嬢と夜更かし仲間

…………………


 ──悪役令嬢と夜更かし仲間



 夜はあの恐ろしい肝試しも終わって、あの豪華な校舎でゆっくりと雑談したりして過ごし、就寝の時間には部屋に戻った。


 だが、寝ろと言われて大人しく寝る私ではないっ!


「今日は夜更かしだー!」


「わー!」


 私が宣言するのにミーネ君たちが歓声を上げた。


「あっ。ごめんね、ラインヒルデ君。私たちのノリでやっちゃって」


「構いませんよ。私もそういうの興味ありますから」


 私の隣のベッドをキープしたラインヒルデ君がニコニコしながらそう告げてくれる。


 ……寝間着に着替えるとき、気のせいかラインヒルデ君の方からすっごく視線を感じたんだけど気のせいだよね。女同士で下着見ても楽しくないしね。そうだよね。


「でさでさ、ミーネはアドルフ様とどんな感じなの? 今日は一緒に過ごした?」


「す、過ごしました。最近はよくよく話もしますし、ブラッドマジックの練習も一緒にやっています……。そ、その、かなり良い感じなのではないでしょうか?」


 ひゅー! ミーネ君が順調にアドルフを落としているぜ! このまま地雷が1個処理できたら、私の心労は減るな!


「アドルフ様は未だにブラッドマジックが苦手なの?」


「そうですね。どこかで引っかかっておられるようでして。イメージの方も、魔力を集中させる方も上手く行っているのですが……」


 んー。となると、本人の自信不足かな。自信がないと踏ん切りがつかなくて、上手く行かないことがあるってブラッドマジックのみならず魔術ではよくあることって、どこかの文献で見たことがあるからな。


「アドルフ様にはちょっと自信を付けて貰った方がいいね。ミーネも自信を持たせるようになんとか誘導できないかな?」


「自信ですか……。どうしたらいいのか考えてみます」


 まあ、アドルフもゲームの修正力で強制的にブラッドマジックが苦手になるようになっているのかもしれないなー。そうなるとどうしようもない。


「ロッテはシルヴィオ様とどんな感じ?」


「最近ではいろいろと相談を受けますわ。宰相としてどうあるべきかという難しいことも相談されますが、可能な限り相談には応じています。そのために難しいですが、政治に関する本も読むようになりました」


 おーっ。ロッテ君もシルヴィオに応じるために自己努力してるんだな。恋する乙女は強いというものだ。素直に感心する。


「けれど、シルヴィオ様の悩みは深いものでして、とてもではないですが私ごときに応じられるものだとは思えないのです……。どうすればいいのか分からないということも多々あります」


「うーむ。難しい問題だね」


 私も政治はさっぱり分からんよ。ただ、宰相の仕事が面倒くさいってことだけはよく分かる。シルヴィオもなよなよフリードリヒもなよなよなら、この国の未来は暗いな。


 せめてロッテ君の手でシルヴィオだけでもなよなよから解放してくれたなら、この国にもちょっとした未来が見えるというものなのだが。ロッテ君、頑張れ!


「シルヴィオ様はシュテファン宰相閣下が、皇帝陛下の相談役の務めを果たしているか疑問視しているんだよ。だから、その点を中心に相談に乗ってあげればいいと思うな。宰相閣下も考えがあっての上で、皇帝陛下を支えているんだろうってね」


 まあ、ゲームのときはこうだったから、この世界でもそうなるだろうという希望的観測に基づくアドバイスである。


「ブリギッテはゾルタン様とはよくやれているかい?」


「はい。この間はふたりで美術館に行きましたわ。ゾルタン様は絵画にも詳しい方で、いろいろなことを教えていただきました。ゾルタン様も卒業して別れてしまうことを悩んでおられるようで、私もすぐに追いつきますからと言いました」


「わー。大人の恋愛してるね、ブリギッテ!」


 すぐに追いつきますか。ロマンティックだな。歳の差のあるカップルというのもいいものである。私も年上の恋人をゲットしたいところである。


「サンドラは新しい恋は見つけたかい?」


「まだ思い悩んでいるところです。いい殿方が見つかるといいのですが」


 サンドラ君はここにいるラインヒルデ君に恋してたんだよね。気まずくないのかな。でも、サンドラ君も殿方を見つけてーって言っているし、ラインヒルデ君への愛は一時的なものだったんだろう。


「サンドラのようないい女性になら、殿方はいくらでも君に惹かれると思うな!」


「そうでしょうか? どうにも心配です……」


 サンドラ君の恋人探しまではできないな。地雷処理はミーネ君とロッテ君に任せるとして、他の男の子でいい子というのは思い浮かばないのだ。


「ちなみにラインヒルデ君は?」


 ここで私は不気味な沈黙を維持しているラインヒルデ君に尋ねた。


「気になっている方はいますよ。ですがその方と結ばれるのは難しいでしょう。だから、私としては今は演劇に恋をしているところです」


 ラインヒルデ君の結ばれない恋人って誰なんだろう。無性に気になるな。


「それって同じ高等部の学生?」


「そうですよ。だけれど詳細は明かせません」


 ラインヒルデ君は演劇部の王子様だもんね。下手に誰かと付き合っていると知れたらスキャンダルになっちゃうからね。


「そういうアストリッド様はどのような感じなのですか?」


「わ、私? 私にはまるで恋は訪れていないよ」


 ベルンハルト先生もまだ手のかかる学生としか思ってくれていないし、そもそもベルンハルト先生はお父様が交際を認めないだろうし。


「多分、私はお父様が連れてきた婚約者と結婚するんだろうね。自由恋愛の余地はあまりないからなー。年上で長身でイケメンの婚約者が来てくれると嬉しいんだけどなー。まあ、あまり高望みはできないね」


「そうなのですか。ですが、学生の頃に思い出作りのため接するのも悪いことではないと思いますが」


「その相手がいないんだよー」


 実はいるにはいるのだ。ベルンハルト先生が。


「そういえば昼間はベルンハルト先生とご一緒でしたけれど、まさかそういう関係ではないのですよね?」


「い、いやあ。好ましくは思っているけれど、恋愛の相手じゃないよ。ほ、ほら、歳の差が大きいでしょう?」


 やばい。ベルンハルト先生と付き合いたいことは内緒にしておきたいのだ。どこからか情報漏洩があってお父様が怒ると何が起きるか分からないからね。


 いつもいつもどこからか情報が洩れるのだ。全く!


「ベルンハルト先生は子爵家の方ですからアストリッド様とは釣り合いませんわ」


「いや、だから関係ないってば」


 本当に勘弁して欲しい。


「フリードリヒ殿下とはどうなのですか?」


「あの方と私は全くの無関係なんだよ、ミーネ」


 勘弁してくれ。フリードリヒはエルザ君で確定しているのだ。


 だが、フリードリヒとエルザ君がくっつくのにはまだまだ困難がありそうだ。周囲が認めないだろうし、フリードリヒ自身も覚悟を決めなければならない。あのなよなよにそんな覚悟ができるだろうか。


 周囲の反応的に親友であるはずのアドルフですらエルザ君とくっ付くのはどうかと考えているのだから、他の人間がどうこういうのはもはや確実。ミーネ君を始めとする貴族たちが大反対するだろう。


 ううん。何という地獄絵図。


 魔獣なら機関銃なりなんなりで黙らせられるが、級友に鉛玉を叩き込むわけにはいかない。フリードリヒには叩き込んでもいいけど、それではフリードリヒに先立たれたエルザ君が可哀想だ。


「フリードリヒ殿下と言えば、今日もあの平民の方と一緒でしたわ」


「まあ。あの平民は何を考えているのでしょうか」


 って、私が考えている間にこれだよ……。


「あの平民の方は最近目立ちますよね。最近は何度もフリードリヒ殿下と図書館で喋っているのを見かけましたわ」


「まあ、フリードリヒ殿下が庶民派であられるから、それに甘えているのでしょう。なんていうふてぶてしい平民なのでしょうか」


 あーあ。始まっちゃったよ。できるなら楽しい話をして夜更かししたかったのにー。


「まあ、フリードリヒ殿下が嫌がっていないならいいんじゃない? ラインヒルデ君はどう思う?」


 私はここでニコニコしながら私の方を見ているラインヒルデ君に話題を振ってみた。


「そうですね。シャルロッテ物語のようでいいのではないでしょうか。浪漫があるような気がしますね」


 おっ! いい反応だね、ラインヒルデ君!


「そうですか? でも、シャルロッテ物語では両方が亡くなってしまいますわ。ハッピーエンドな物語ではありませんわ。それはよろしくありませんわ」


「悲劇の中でも輝くものがあるんだよ」


 確かに悲劇だけれど物語としてはいいものだからいいけどね。


「うーん。それでいいのでしょうか。私はダメなような気がしますけれど」


「いいんだよ、いいんだよ。ロマンティックでしょう」


 ここはラインヒルデ君のアイディアで乗り切ってしまおう。


「それでアストリッド様は結局どなたが好きなんです? どなたも好きな方がいないということはないのではないですか?」


「い、いや、本当に今はいないよ」


 しつこいよ、ロッテ君! 私は今は誰が好きとか明かせないの!


 それに実際のところ、誰を好きになっていいのか分からないし……。


 ベルンハルト先生は好きだけど、一緒になるのは難しいのだ。畜生。


…………………

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