表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
How much is your blood?  作者: 霧村トナミ
3/3

暴君のような彼女

「私の所に来ればいい」

「だーかーらー!!」

見つめた彼女の顔が、あまりに真顔なためこの先の言葉が出てこない。

どうして、この暴君のごとき女は、当たり前のような顔をしていられるのか。

これ、警察か?電話していいか?

そう思い、灰人が携帯を取り出した瞬間、彼女の白い指がまるで蛇の威嚇のように伸びて

灰人の手首に絡み付いた。

「何をする?」

「警察にかけるに決まってんだろ!」

永遠は、クスクスと笑いながら俯いたと思ったら、ゆっくりと顔を上げ、

「ほう…警察か…、かけれるものならば、かけてみろ」

地獄の底のような低い声に血の池のような真っ赤な瞳で答えた。

ただいま、彼女の話が全て真実だと決定いたしました。

灰人は、涙がでそうになるのを必死でこらえた。

こんな所で泣いたら、俺のプライドがズタズタになってしまうのでな。


永遠の言う事を聞いたわけではない、自身の物を取りに行くという名目でとりあえず

付いて行くことにした。

それを聞いた永遠は不敵に口元に笑みを浮かべ、その隙間からはしっかりと牙が見えていた。

店をでると《お代は勿論、永遠持ち》すぐに黒光りした高級車が横付けされた。

運転席から出てきたのは、白銀の髪に青い眼。そこらへんの奴、顔負け。

女共が、群れをなしてせまってきそうな男が、颯爽とした足取りで後部座席のドアを開けた。

コイツもヴァンパイアなのか?

執事のような彼をマジマジと見つめる灰人に、

銀牙ぎんがヴァンパイアではない。狼だ」

永遠はサラリと言いながら、車に乗り込んだ。

ポカンッとしたままの灰人に、紹介された銀牙は軽くお辞儀をして答える。

その際、彼の眼が明らかに人の物ではなく、獣の瞳になったのを灰人は見逃さなかった。

何でも有りか…ハロウィンの季節じゃないですけど?

乗り込んだ車は、静かに発進し始める。自分の家とは逆方向に。

一体、何がどうなって俺はこんなことに巻き込まれてんだ?

永遠は、人間じゃない…ヴァンパイアって…マジなら…

「あのさ…永遠」

「何だ」

「アンタが本当にヴァンパイアなら…日の光は平気なのか?灰になるんじゃ…」

おずおずと聞いてきた灰人の質問に、永遠はキョトンとするもすぐにクスクスと笑いだした。

運転席にいる銀牙まで、笑い出している。

何故、笑われなくてはならないのかわからず、今度は灰人がキョトンとなる。

「それは、人間達が作り出した迷信だ。私達は日の光も、十字架も、にんにくも大好きだ」

笑いを噛み殺しながら永遠は説明してくる。


私達は寿命が長く、血を好む。それだけだ、他は何も変わらない。

それに誰彼構わず血を吸う訳ではない。

血を吸うのは、パートナーと決めたヴァンパイア同士だけ。人間達に迷惑はかけない。


「ちょっと待て」

説明を聞いていた灰人は思わず口を挟んだ。

それは、彼女の言葉が引っかかったからだ。

血を吸うのはパートナーと決めたヴァンパイア同士と言った。

《ヴァンパイア同士》って…。

「俺、ヴァンパイアじゃないんだけど?!」

迷惑かかってんだろうが!

「灰人…お前、知らないのか?」

灰人の反応に、永遠は眼を丸くして驚いている。

「知らないって…何を…」

「そうか…ならいい」

一瞬、永遠の顔が曇った気がした。

「どういう事だよ」

「家に着いたら説明してやる」

そう言ったっきり、永遠は何も言わなかった。

説明って…なんだよ。

するようなことあるのか?彼女に逢ったのは今日が初めてだぞ。

何にも思いつかない…とりあえずは、流れに身を任すしかないか。

俺、家無いし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ