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気絶するなんて情けない

 試験が終わり、クレアと二人で帰っていた。


「なんであんなことができるのよ」


「なんでっていわれても……俺が一番驚いてるよ」


 クレアは魔法の試験で俺に負けてしまったので、少し不機嫌になっていた。まぁ最下位だったのでクラス全員に負けているのだが……ただ自分でも魔法は苦手だと分かっていたらしく納得もしているようだ。


「でもよかったわね。昨日の結果も悪くないだろし、アイスライト杯のメンバーに選ばれるはずよ」


「あぁそうそう。昨日からアイスライト杯ってよく出てくるけどなんなの?」


「はぁ? あんたそんなことも知らないの」


 クレアは、バックをゴソゴソとあさりだした。すると1冊の書類を取り出し俺に渡してきた。


「これ読みなさい」


「めんどくさいなぁ、口で教えてくれよ」


「嫌よ。それこそめんどくさいわ」


 しぶしぶアイスライト杯概要と書かれた1枚目の紙をめくる。なんか長々と書いてあるなぁ。


 歩きながら書類を読んでいると、


「レイン? ぶつかるわよ」


 そう聞こえた瞬間、木にぶつかっていた。


「いってー、もっと早くおしえてくれよ。あんなギリギリじゃ間に合わないよ」


「ちゃんと前を見て歩かないからよ。ほんとバカね。それにおしえたらおもしろくないじゃない」


 そう言うクレアは先ほどまでの不機嫌そうな表情は消え、笑顔になっていた。まぁクレアが笑ってくれるのなら多少痛いのも我慢しよう。


「まぁまとめると、学年最強を決める戦いってことだろ? 各学年16人を選抜してのトーナメント戦だっけ。その16人を決める試験をやってたんだろ」


「正確に言うとアイスライト杯の予選ね。アイスライト杯は各学年、上位2名が他校の生徒と戦って、国一番の学校を決めるのよ」


「へぇー結構規模のでかい大会なんだな。ちなみにうちの学校は強いのか?」


「うーん、去年は3位だったかしらね。お父様は貴族の学校なのに情けないって怒ってたわ。まぁ、今年からは私がいるからそんなことにはならないわ。目指せ優勝よ」


 クレアは目を輝かせ、拳を俺の目の前に突きだす。


「そうか、がんばれよ。俺も応援するからな」


「あんたバカ? なに言ってるのよ。あんたも出るに決まってるでしょ。今年の一年生代表は私とレインで決定よ」


「はぁ?? 俺が?? 無理だよ。エーベルとかいるんだぜ。無理無理、絶対無理だね」


 それを聞くとクレアの顔がみるみる不機嫌になり、拳を俺の目の前ではなく腹に突きだした。


 無防備にその拳を受けてしまった。


「ぐえっ、いきなりなにすんだ」


 あまりの衝撃に腹を押さえてうずくまる。


「イラッてしたのよ。でも確かにその軟弱な腹筋じゃ勝てないわね。今日も腹筋追加ね」


「じゃあお前はどうなんだよ」


 さすがに俺もイラッとしてうずくまったままクレアの腹に拳を振るう。しかし女の子の腹をおもいっきり殴るわけもいかず、おもいっきり手加減して殴る。


 クレアはそんな手加減パンチをまともに受けたが当然平然としていた。しかし、いい腹筋だな。決して硬いだけの割れている腹筋ではなく、ちゃんとほどよく脂肪もついている。ただその内側にはみっちり筋肉がつまっているような腹筋だ。あまりの素晴らしさについクレアの腹筋を手のひらでスリスリしてしまった。あっ、クレアがプルプルしている……これはやばい……


「なにしてんのよ、この変態」


 真っ赤に染まった顔をしたクレアの手加減なしのビンタが俺の頬を直撃した。そして俺は気を失った。


「う、うーん」


 目が覚めると、ふかふかなベッドの上にいた。あれ? ここどこだ? たしかクレアの腹筋を触ってたら、顔面に強烈な何かが炸裂した気が…


「ようやく目を覚ましたわね」


 クレアがベッドで寝ている俺を覗き込んできた。


 あぁそうだ。クレアにビンタされたんだ。しかし不意討ちとはいえ、ビンタで気を失うとか情けないな俺……


 ベッドから上半身だけ起き上がり首をぐるりと回す。うん、大丈夫だ。


「ここは? クレアの家?」


「そうよ。言っとくけど私の部屋じゃないからね。ただの客間だから」


 そういえばクレアの家には久々に来るな。相変わらず豪華な部屋だ。一部屋で俺の家の敷地ぐらいあるぞ。小さいころはよく遊びにきたものだが12歳になったころからなぜかあまり家には入れてくれなくなった。


「ごめんなさい……」


「え?」


 クレアが今謝った? とても小さな声で聞きづらかったが、たしかにごめんなさいと謝った。


「だからごめんなさいって言ってるの。あんな強く殴るつもりなかったの。まさか気絶するなんて……レインもいけないんだからね。女子のお腹をあんな風にさわるなんて」


「いや、俺の方も悪かったよ。たしかに男にあんな風に触られるなんて嫌だよな。ごめん」


「別に嫌ってわけじゃ……もう、とにかく謝ったからね。これでおしまい。あっ、お父様が久しぶりにご飯食べていきなさいだって。もうレインのお父さんにもこっちで食べること話してるみたい」


「えっ、いいのか?」


 やった。久しぶりにフォントネル家の食事が食べられる。さずかに貴族の食事というだけあって普段食べれないような豪華な品が並ぶのだ。


 二人で食事の席に向かうとすでにクレアの父が座って待っていた。


「レイン君、よく来たね。いや運ばれてきたのか。いやークレアが君を背中に乗せてきたときは君が魔物にでも襲われたかと思ったよ。まさか娘に殴られたとはね。乱暴な娘ですまん」


 クレアの父親ザワード=フォントネルは有名な貴族だが、話してみるとその辺にいる親バカな父親となんら変わらない。気さくで話しやすい方なのだ。


「いえ、俺も悪かったですから。殴られて当然です。後、学校への推薦ありがとうございました。おかげで楽しい日々を送れそうです」


「そう言ってもらえると、私も嬉しいよ。しかし、レイン君すごいじゃないか。魔法の試験で一番だったんだろう」


「まぐれですよ。でもよく知ってますね。今日受けたばかりなのに」


「いやー娘が帰ってくるなり、うれし」


 カァァァァァァンと金属音が鳴り響く。


 話の途中で、ザワードさんの顔の真横をフォークが高速で横切り、後ろの壁にささった。笑顔だったザワードさんの表情も凍りつく。


「あら、すいません。手が滑ってしまいましたわ。ごめんなさい」


 クレアは謝ってはいるが、殺人鬼のような目付きになっていた。余計なことは言うなと脅している感じだ。


 実の父親にあんな目付きができるとは、さすがクレアだ。


 楽しい食事も終わり、俺は気分よく家に帰った。魔法の試験で一番になったことをクレアが喜んでくれたことが分かったからだ。俺はちゃんとザワードさんが言いたかったことを理解していた。


 


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