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弁償かぁ……

「だめよ、絶対だめ」


「え?」


 俺達は四人で午後の授業前にリタ先生に究極魔法を使わせてもらえるよう頼みにいったのだが、まさか断られるなんて……。


 俺は納得できなかった。


「なんでですか?なんか理由があるんですか」


「理由ねぇ……まぁ実際に闘技場で説明したほうがいいわね。もうすぐ授業が始まるわ。先に行って待ってなさい」


 俺達はそう言われるとしぶしぶ納得して、職員室を出て闘技場へ向かった。


「ちくしょう。なんでダメなんだよ。納得できねぇ」


 グラッドは廊下の壁を殴る。一番楽しみにしていただろうグラッドが一番怒っていた。リリーがその姿を見て怯えているのでトールがグラッドをなだめる。


「まぁちゃんと説明してくれるみたいだし、いいじゃないか。少し落ち着こうよ。リリーも怖がってるし」


 グラッドはチラッとリリーを見る。


「あぁ、すまん。ちょっと冷静じゃなかったな……」


「まぁ俺も楽しみにしてたから確かに残念だけど」


「わたしも……」


 みんな残念そうだ。俺のせいではないけど、なんか申し訳ないな……どっかで見せられる機会があればいいんだけど。


 午後の授業の時間になり皆が闘技場に集まった。


「さぁ、今日は模擬戦の前にレイン君の魔法を皆に見てもらおうと思います」


 皆が、ザワザワと騒ぎ出す。


 えっ、究極魔法は使わせてくれないんじゃなかったのか?


「レイン君、私の横に来て」


「はい」


 俺がリタ先生の横に立つと、俺を見て他の人に聞こえないように小さな声で俺に話しかけた。


「究極魔法は駄目だけど、高等魔法を使ってみなさい。それで私が究極魔法を使わせない理由がわかるはずよ。そうね、ファイアレイがいいわ。ちゃんと腕輪は付けてるわね」


「えっ、あっ、はい。大丈夫です」


 リタ先生はそれを聞くと再び皆の方を見て説明する。


「いまからレイン君にはあの木人形に魔法を打ち込んでもらいます。よく見ておくのよ。あの木人形はあなた達が最初魔法のテストで使った木で作られているわ。まぁ普通は燃やすどころか、ススをつけるので精一杯でしょうね」


 闘技場の真ん中には木で作られた人間の大きさと同じくらいの人形が立っていた。


「じゃあお願いね」


「わかりました」


 俺は木人形の前に距離をとって立ち、手を広げて木人形に向ける。


 イメージする……あの木人形を燃やしつくす、空から無限に降り注ぐ火炎の閃光を!!


「ファイアレイ!!」


 俺が魔法を唱えると、俺が立っている真上の天井付近から赤い光が高速でいくつも木人形に向かう。木人形に当たった瞬間、闘技場内に轟音が響き、光で視界が塞がれと熱風が襲ってきた。やがて視界が晴れ、木人形のあった場所を確認すると、木人形は無く、そこには大きなクレーターができていた。


 目の前で起こった結果にクラスメイトも驚きのあまり声もでないようだ。


「やっばりね……」


 俺の後ろでリタ先生が呟いていた。俺は振り返り尋ねた。


「なにがやっぱりなんですか?」


「あなたの魔法の威力よ。腕輪つけてるのに……いっておくけど、この闘技場は地面にも結界はあるのよ。それなのにこんな大穴あけちゃって。もし究極魔法でも使ってみなさい。この闘技場はきっと倒壊してしまうわ」


 なるほど……俺もまさか結界が耐えられないとは思わなかった。しかし腕輪なしで究極魔法を使ったらどうなってしまうんだ……特に対人戦では確実に自分や近くにいる仲間を巻き込んでしまう


 今回のファイアレイでも相当な熱風が襲ってきた。これが十倍になったら、自分はともかく周りの物が燃えてしまうだろう。魔法は考えて使わないとな……少なくとも仲間を巻き込まないように。自分の魔法で仲間に被害を与えるなんて最悪だ。きっと俺は強くなることばかり考えてたんだな。


 このままじゃいけない。自分の魔法の威力を正確に把握しなければ。せっかく覚えた魔法も使いどころがなくなってしまう。エミリーさんの敷地で打つように遠くに魔法を打つだけでは駄目なのだ。


「リタ先生、ありがとうございました。色々と気づかされました」


「そう、闘技場の弁償も無駄にならなくてよかったわ」


「えっ、弁償なんですか?」


「まぁね。私の管理不足ってことね。まっしょうがないわ」


 リタ先生は笑顔でそう言った。自分の身銭を切ってまで俺に魔法の危険さを教えてくれるとは、なんていい先生なんだ。


「俺が払いますよ。今は無理ですけど、将来金持ちになったら十倍にして返しますから」


 俺が冗談混じりで言うと、


「期待してるよ。君なら一流の魔術師になれるだろうからね」

 

 リタ先生は本気にしているようだった。弁償いくらなんだろう……


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