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初めて触れた世界2

意識が少しずつ覚醒していく。

前回の起動からどのくらいの時間が経ったのだろうか。あの不快な浮遊感のある空間にいた筈の私は今、しっかりと地面に横たわっているような重量を感じる。

どうやら平行ジャイロセンサーに異常はないようだ。

ゆっくりと視界が鮮明になると自分が今いる場所の異常さに気づく。そこから一気に意識が覚醒する。

咄嗟に起き上がろうとする私。だけど、なんだか上手くいかない。

私の知っている自身のボディにしては全体的に軽く、また関節一つ一つの動きが凄まじく滑らかだった。それに全体的に柔らかい。

私は自分の身体に見入る。

どう考えても元のボディではないのが一目瞭然だった。

私はその後、自分の身体のあらゆるところを触ってみた。

やはり視覚センサーの異常でもない。触覚も以前の自分のボディとは明らかに違う。

私はこの状況が上手く処理できずに動けない。

周りの異様な景色と自分の身体に起きた変化。

どれをとっても何一つ理解できない。

「なっ……なぁ……なぁっにがっ……!」

上手く音声が出ない。

根本的に構造が違うような違和感がある。

とにかく色々と確認しなければならないことが多すぎる。もうエラーのようものが頭部に溜まって上手く処理できない。

地面に座った状態から、慣れない不自由な身体をどうにかして立ち上がる。

私は地面が柔らかいことに気づく。聞いたことのない、機械音とは違う音がする。周りは緑や濃い茶色が一面に広がっている。空は緑が塞ぎ、一部からとても明るい光が差し込んでいた。

私は少しずつゆっくり歩き出した。

何もかも初めて見るような光景が続く。

歩みを進める度に頭部へとエラーが溜まる。

この長い緑のものは何なのだろうかとか、この地面の硬い物体は何なのだろうかと次々とエラーが溜まる。

次第に頭部の容量がいっぱいになり始め頭部全体が熱くなってきた。意識が再び朦朧としだす。

故障なら瞳にあるモニターに表示されるのに何も出てこない。だから私には対応できない。

倒れる訳にもいかず、とにかく歩みを進めた。

「ひっ……っとっ……」

どこからか人の声のようなものが聞こえる。

今まで聞こえていた機械音とは別の謎の音とは違う、意味のあるような音だ。

私は足を速める。

先ほどよりも目の前の景色が開けて、明るさが増している。


後少しでその光の先に辿り着けそうになった時、私の脚が何か硬いものに引っかかり、それに合わせて私は前方へと転倒した。

頭部の熱がさらに増し、ついに私はそれに耐え切れなくなった。


そうして私はまた意識を消失させた。



私とミルチェは物音がした街道の傍の林に行ってみることにした。

「お嬢様先に行かれては危険です。お待ちください」

私を心配し気にかけるミルチェの言葉を無視して私は林の中へと進む。

音がしたのはこの方向だ。

私は背の低い草木を掻き分けてその音のした辺りを覗き込んだ。

少し開けたその場所は大きな根が張り出した樹の木陰だった。そしてその樹の根元を見たとき私は思わず声を失った。

その場で突然、微動だにしなくなった私を見たミルチェが急いで私の元に寄ってきた。

「どうなさいましたか?お嬢様!?大丈夫ですか!?」

私はあまりの驚きにミルチェの問いに答えることができなかった。

その代わりとして私は私が見たものを指差し、ミルチェにそのことを伝えた。私の指の先を見たミルチェも言葉こそ出さないが驚きが表情に表れていた。

私達二人が驚くのは当然のことだと思う。

なぜならその樹の根元には裸の私とほとんど年齢の変わらないであろう背格好の少女が一人倒れていたのであるのだから。

動けない私をよそにミルチェが倒れている彼女へと駆け寄った。

すぐに息を確認する。

険しかったミルチェの表情が安堵に変わる。どうやら倒れている彼女は生きているらしい。

私も少しほっとする。

ミルチェが彼女を抱き抱えてみるが意識が戻りそうにはない。

「その娘大丈夫かしら?どこも怪我などはないようにみえるのだけど」

「息はしっかりとありますので、おそらくは大丈夫かと。ただ、とても高い熱があるようです。どこかで安静にしなければ行く行くは……」

「そう……。ならお屋敷にお連れしなさい。彼女くらいなら貴方でも運べるでしょ?」

私は迷うこと無くそう言った。

「承知いたしました」

それに快諾するミルチェ。

なんだかその答えを期待していたと言わんばかりに。

ミルチェは自身のが羽織っていた外套を着せる。

さすがに裸のままでは運べない。そして抱き抱えられた彼女をミルチェが背負うと、私達は先ほどよりも少し早足で屋敷へと向かった。




ーーそう、これが彼女との出会い。私が出会った唯一無二の大切な存在。どうか、彼女も同じ気持ちであるように。私はそう願うのだった。


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