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ペット無双で狩場をお散歩  作者: 滝神淡
異世界にやってきて
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第5話 『可愛い』は最強なんですよ

 建物の中はそのまま古めかしい役所という感じだった。

 明かりのちょっと足りてない感じの、簡素な空間。

 窓口が幾つかあって、その奥では机を並べて書類作業をしている職員達がいる。

 春太は町役場の中で冒険課を探した。

 セリーナ達がその後ろをついていくが、特に職員達からは何も言われなかった。

 正面が総合窓口になっており、窓口の男性が一番端に冒険課があるよ、と教えてくれた。

 冒険課に行って事情を説明。

 異世界から来たと言うと、前にもそんな人がいたなーと言いながら課の男性が手続きしてくれた。

 正式な市民ではないが、冒険者に発行している冒険者証をあげるので、これを身分証にすれば良いと言われた。

 冒険者証はスマートフォンくらいの大きさのカードだった。

 また、身よりも無いということで生活保障給付金をもらう。

 10000コロン。

 この金額でどれくらい暮らせるのかは分からない。


 そして、ここからが待ちに待ったメインイベントだった。

 課の男性は奥の女性を呼び、交代する。

 女性は眼鏡をかけたショートボブで、柔和な笑みで対応してくれた。

「ここからは私・フーラが担当しますね! 建物の裏手へどうぞ。そこに訓練場がありますので冒険者初期講習を行います。講習内容はジョブタイプの選択、ステータスの確認、戦闘指導となっております」

 春太のやる気メーターがぐんぐん上昇していく。

 これまでの事務手続きは殆ど右から左へ聞き流していたが、ここからがまさにゲームらしくなってくるのだ。俺のステータスやチーちゃんのステータスが早くみたいぞ。

 フーラに導かれ、建物の裏手に出る。

 訓練場は土の地面で、学校のグラウンドの半分くらいの広さだった。

 色々な武具がそこかしこに置かれ、丸太で作った的などもある。

 フーラは大きな木のテーブルに武具を並べ、話し始めた。

「ジョブタイプってご存知ですか? 冒険者といっても剣士もいれば魔法使いもいますので、そうした役割のことをジョブタイプと呼んで細分化しています」

「だいたい分かります」

 春太ははやる気持ちのままに頷いた。ジョブタイプはMMORPGでは定番だ。例えば『ナイト』を選択すれば強力な武器防具を装備でき、『ウィザード』を選択すれば武器防具は弱いものしか装備できないが強力な魔法を覚えることができる、など。

「それなら話が早いですね! ではジョブタイプの選択をしましょう。一度選択しても後で変更が可能ですので、まずは好みで選んだ方が良いですよ」


 選択肢が提示されていく。

『騎士』……攻守バランスがとれている。甲冑や長剣を装備して戦う。

『戦士』……攻撃特化。軽鎧や大剣を装備して戦う。

『盗賊』……攻守がそこそこだが素早い。軽鎧や短剣を装備して戦う。

『弓士』……遠距離攻撃。胸当てや弓を装備して戦う。

『魔法士』……遠距離魔法攻撃。ローブや杖を装備して戦う。

『神官』……支援系で回復魔法が使える。ローブや杖を装備して戦う。


「では弓士で!」

 春太は迷わなかった。

 元の世界にいた時、モンスターをハンティングする金字塔のゲームで熱中したのが弓使いだった。

 それ以来どのゲームでも弓使いができるのならば選択している。

 あまりの即答ぶりにフーラは躊躇いを見せた。

「えー……っと、好きに選べと言っておいてなんなんですが、色々迷わなくて大丈夫ですか? もっと詳しく特徴を訊いたりしなくて大丈夫です?」

「はい。弓一択なので」

「そ、そうですか。では弓士ということで決定しますね。弓士は遠距離攻撃が基本ですが短剣も装備できますので、敵に近付かれたら短剣で応戦すると良いでしょう。では次に、現在のステータスを確認してみましょう」

「遂にステータス確認ですね! 俺どうなってるのかなー」

 春太は期待に胸を膨らませた。

 自分のステータスは高ければ高いほど気持ちの良いものだ。

 もしかしたらチート級のステータスなのではないか。

 特殊で超強力なスキルが使えるのではないか。漫画やアニメではこうした設定は当たり前だ。だから異世界へやってきた俺にも何かしらはあると思うんだよね。

 だが今回のケースでは熊と戦闘した感じ近接戦闘には向いてなさそうだ。すると、魔法が滅茶苦茶強いとか? いやもしかしたら、運が異常に高いとか? いったいどんなサプライズが待っているのか……

「では先ほどお渡しした冒険者証の裏面を三秒くらい触り続けて下さい。そうしたら自分のステータスが表示される仕組みになっておりますので」

 フーラが説明し、春太はその通りにしてみた。

 冒険者証の裏面に文字が浮かび上がってくる。

『こ、これはっ……?!』

 春太とフーラが同時に声を上げた。


 春太のステータス

 レベル:1 種族:ヒューマン

 攻撃力:2 防御力:2 素早さ:2 魔力:2

 HP:10 MP:10

 スキル:なし


「よっわ!」

 激しく突っ込む春太。

「うわあ、つまらない男……」

 フーラがドン引きで言葉を漏らす。

「ちょ、誤解を招く言い方やめてもらえませんか? 確かに2ばっかり並んでてつまらないけど! それにしても酷いなこれ。チートはどこいったの? これじゃゴブリンすら倒せなくね?」

「倒せないですね。でもほら、装備で底上げできますから! 元のステータスが気にならないくらいに底上げできますから!」

 必死にフォローするフーラ。でもそれだと俺のステータスが意味をなしてないようにも聞こえるんだよなー……

「まあいいや……俺のペット達のステータスも見られます?」

「ええ、ペットの手を冒険者証の裏面に乗せれば見られますよ」

 春太はまずチーちゃんの手(要は前足)を乗せてみた。


 チーちゃんのステータス

 レベル:456 種族:チワワ

 攻撃力:2665 防御力:2199 素早さ:1951 魔力:3825

 HP:3787 MP:4228

 スキル:ファイアーボール、ファイアーウォール、インフェルノ、プロミネンス、マグマジェット、ガイアゲイザー、アポカリプスバーン、ドゥームズデイフレイム


「チーちゃん強えな!」

 春太はまたしてもチーちゃんの強さに驚かされた。俺とは桁が違う……ってか桁が三桁も違うし! スキルとか全然分からないけどきっと強いんだろうな!

 一方のフーラは目を剥いて後退りする。

「な、な、なんですかこのステータスは……! こんな可愛いワンちゃんがこんなに強いなんて……」

 そこで春太は名言を思いつき、クールに言ってみた。


「『可愛い』は最強なんですよ……」


「え、ええー……?!」

 フーラは更に一歩後退し、汗をたらした。あれ、おかしいなあ? フーラさん、急にアブナイ人を見る目に変わったぞ。俺の溢れるペット愛を披露しただけなのに。


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