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Fox Tail ‼ ー綴樹秋斗の他愛のない日常ー  作者: 三原色みたらし団子
第一幕
26/38

?日目 想いは北風に乗って

バレンタインデー特別篇【後編】!

ここからはいつも通り、秋斗視点になりますのでご注意ください

 僕のバレンタインデーは、一本の電話から始まった。

 すすきと朝食を摂っているところにいきなりかかってきて、「午後一時に、学校近くの公園に一人で来て」とだけ伝えて切れてしまった時には、一体何事だと思った。とはいえ親愛なる久城さんの呼び出しだ、答えないわけにもいくまい。

 そんなわけで時刻は一二時五〇分。指定された公園に到着すると、既にベンチに腰掛ける久城さんの姿があった。僕は傍にあった自販機でおしるこを二つ購入すると、なんだかそわそわしている彼女に歩み寄った。


「お待たせ、久城さん。時間通りだと思ったんだけど、待たせちゃったようで悪かったね」


 お詫びと言ってはなんだけど、とおしるこを手渡す。


「べ、別に待ってないわよ。私もさっき来たところだから……あ、ありがと」


 しかし、おしるこを頬に押し付けて「はぁ~……」と安心したような吐息を零すあたり、その言葉は彼女なりの見得だったのだろう。


「それで、早速だけど何の用かな? 急に呼び出すなんて珍しいね

 途端、彼女ははっとしたように表情を引き締め、それから深呼吸を何度か。霞のような吐息が、少女の口腔から立ち上る。そして、肩から提げていた鞄を探り、一つの包みを取りだした。


「あ、あの、これ……っ、その、迷惑じゃなかったら、受け取って欲しいな、なんて……」

「これ……って、もしかして……」


 ピンクとブラウンの縞々模様で丁寧に包装された、直径二〇センチほどの薄い直方体。十字にかけられた水色のリボンが良く映える、可愛らしい箱だった。


「か、勘違いしないでよ、義理チョコ、友チョコなんだからっ! 日頃の感謝というか、よしみというか、とにかく変な意味じゃないんだからねっ!」

「………っっ」


 これは、やばい。破壊力が高すぎる。

顔を真っ赤しながら、想いの結晶を不器用に突き出すその姿は、なんというか、もの凄く可愛くて……不覚にもこの僕がケモ耳も尻尾も生えていない少女に、ときめきを覚えてしまった。


「は、早く、受け取りなさいよぅ……!」

「――へ? あ、ああごめん! ありがとう」


 思わず君に見蕩(みと)れてしまって――そんな歯の浮くようなセリフが脳裏を駆け巡ったが、もちろん口に出せるわけがない。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。参ったな、こんなことであっさり落とされるなんて。僕は自分が思っているよりずっと単純な生き物らしい。



 しばらく、漫然と時間が流れた。二人とも一言も話さず、ただ並んで座っておしるこの缶を傾ける作業に徹する。なんだか気まずく、それでいて心地良い沈黙だった。


「……ねぇ」


 先にその沈黙を破ったのは、久城さんの方だった。


「な、なに?」

「他に誰かから、チョコ貰ったり、した? ほら、芒さんとか……」

「えーと、母さん以外だと、久城さんだけかな。芒はそもそもバレンタインを知らなかったから」


 ちなみに今も元気に出張中の母さんからは、今朝方、速達でちょっと良いチョコが届いた。仕事が忙しくても家族サービスを忘れない、素敵な母上である。


「そ、そっか。……私だけ、か……ふふ」

「ん? ごめん、なんて言った?」

「な、なんでもないっ! 私、そろそろ帰るね!」


 久城さんは勢いよく立ち上がり、つかつかと行ってしまった。しかし、数歩歩いた所で立ち止まり、


「あの! き、今日は……ありがと、ね」


 朱に染まった顔でそう言い放って、今度こそ振り向かず公園を去っていった。


「こちらこそ、ありがとう………」


 小さくなっていく背中に呟いた僕の頬を、やけに冷たい風が撫でていった。


もう二月も中頃。インフルエンザや風邪はまだまだ猛威を振るっているようですので、みなさん手洗い、うがい、手指の消毒をこまめに心がけましょう。

疲れを感じたら、ゆっくりと温かいものでも飲みながらここでまったりしてってくださいね。皆さまが癒しのひと時を感じられることを、キャラクター一同願っております

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