?日目 Bitter Sweet Time
今回はバレンタインデー特別篇! 一日遅刻したけどお許しください
さて、今回もいくつか注意点を。
1、特別篇は本編とは違う時間軸です。そのため人物の設定や関係性などが一部本編と異なる場合がありますので、ご了承ください。
2、今回のエピソード、なんと我らが芒ちゃんが登場しません。本編では登場したばかりの恵夏のエピソードになります。
以上の点をご承知いただいた上で、どうぞお楽しみくださいませ
二月十四日。それが何の日であるかなど、わざわざ言葉にしなくても十分に知れ渡っているだろう。
セント・バレンタインデー。大切な人に、気持ちを伝える日。この日が近づいて来ると、学校での話題は自然とその話で持ちきりになる。
どんなチョコを作るか、何処で買うのか、そして――誰に贈るのか。男子は男子で、いつも通りの素振りをしつつもちらちらと気になる女子の方を気にしている。私、久城恵夏もまた、そんな浮足立った雰囲気を作りだす一人だった。
日曜日の昼下がり。私は一人、公園のベンチに座っていた。肩から提げた鞄の中にはチョコレートが、出番を今か今かと待ち構えている。私が昨夜、日付が変わるまでかかって作り上げた、想いの結晶が――
「い、いやいやいや、別にそんなんじゃないしっ! ただ慣れてないから時間かかっただけで……」
確かに、試作に試作を重ねてこだわりを突き詰めた会心の出来だし、ラッピングも悪戦苦闘しながら完璧に仕上げた(その所為で今日はやや寝不足だ)。しかし、だからといってこれを渡す相手に特別な感情がある、なんてわけはない。ないったらないのだ。
……話を戻そう。とにかく、チョコレートの準備は抜かりない。彼への呼び出しも済ませている。午後一時になればこの公園に来てくれる手はずだ。そして現在時刻は一二時四五分。几帳面な彼の事だ、あと一〇分もすればここへ現れるだろう。
「どこもおかしくない、よね……?」
立ち上がり、自分の姿を改めて確認する。ニットのセーターに柔らかい色合いのダッフルコート、お気に入りのブーツ。別に、何処かに出掛けるわけでもないのだから気合を入れる必要もないとは思ったのだが、やはりこういう場合には意識してしまうわけで。
「ん、大丈夫。……まあでも、どうせ彼は気にも留めないんだろうなぁ……」
私の知る彼は、こういったことにはとことん疎かったはずだ。とはいえ、あの口から歯の浮くような称賛が溢れ出しても、それはそれでなんだか寒気のする話ではあるのだが。
「はぁー……」
それにしても遅い。彼が来るのが、ではなく時間の進み具合が、だ。もう随分と待ったような気になっているが、実際はあれから五分と経っていない。私がここに着いてからでさえ、未だ十五分ほどしか経過していないのだ。なんとなく過ごしている分にはいつの間にか過ぎ去っていくたった十分間が、待っているとどうしてこんなにも長く感じられるのだろう。
「デートの待ち合わせって、こんな感じなのかな………」
意図せず漏れた自分の呟きに、自分で反応して思わず赤面してしまう。デートなんて、彼とは全然、そんな間柄じゃない。頭をぶんぶん振ってこの気分を隅に追いやると、溜息を一つ。なんだか盛大に一人相撲をしているようで、馬鹿馬鹿しくなってきた。
空を仰げば澄み渡った青色が広がっているが、空気は冬らしく張りつめている。三〇分もまんじりともせず座っていると、流石に寒さを感じてくる。手袋がなければ、今頃末端からじわじわと氷になっていることだろう。時計を見やると、一二時五三分。そろそろ来ても良い頃合いだ。
時間が迫るにつれ、心臓の動きが速くなっていくのを自覚する。それと同時に、冷えた身体に熱が戻っていくのを感じた。これなら凍死する心配はないだろう。
わたがしのような息を漏らしながら、公園の入り口を見つめる。どのくらい経っただろう、数分か、あるいはほんの数十秒だったかもしれない。私の視界は、待ち焦がれた一人の少年の姿を捉えた。
寒さに弱い彼は身を縮こまらせて歩いていたが、私の姿を認めると気持ち早足でこちらへ向かってくる。そして目の前に立つと、
「お待たせ、久城さん」
と、少年――綴樹秋斗は、私に向けていつも通りの人の善さそうな微笑を浮かべたのだった。
最近、僅かながら料理に目覚めてきつつあります。ゆくゆくは煮物とかお菓子とか自分で作りたいですねー
……まあ、まだサンドイッチとベーコンエッグくらいしか作った事ないんですけどね




