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第五話 生活感ゼロってレベルじゃないだろ!!

区切りのいいとこで投稿しているので、一話一話かなり短いです。

 748号室。そこが萌葱さんの家だった。

 ずかずか踏み込むのは申し訳なかったから、萌葱さんの3歩後ろから入った俺が見たのは、広い広いリビング。俺の知識が正しければ、おそらく30畳はあるだろう。天井も、ものすごく高い。俺の身長(175CM)の二倍はある。

 だが、俺が何よりも驚いたのはリビングの広さではない。

 俺は、自分の目を信じることができずにその広い空間をもう一度見つめ直す。じっくりと。だが、何度見てもその事実に変わりはなかった。

 柏木萌葱。彼女の家のリビングには・・・・・・家具がなかった。

 いや、正しく言うと無いわけではない。その広大な空間の真ん中を陣とるように置かれていたのは、一台の古びたノートパソコン。だが、それ以外この部屋には何も、なかった。

 テレビも、ソファーも、テーブルも。どうやらキッチンは別の部屋のようだが、それでもこの部屋の異質さに変わりはない。

「あの・・・・萌葱さん」

「萌葱です」

「え?あ、はい。萌葱さんですよね」

聞き間違えでもしたのだろうか。俺はもう一度はっきりと彼女の名前を言い直す。すると、彼女は子供のように頬を膨らませて、

「萌葱です」

と、言う。

「・・・・?」

意味がわからなかった。そんな俺を呆れたようにみやり、彼女はため息をつく。そして、

「萌葱でいいです。あと、敬語もやめてください。」

そう言う彼女は相変わらず敬語だったが、俺はようやく彼女が何をしたかったのかを理解する。納得したところで、彼女に聞きたいことがたくさんあった。

「じゃあ、萌葱。あんた、ホントにここに住んでるのか?」

「? はい。私は17歳の時から5年間、ここに住んでますよ」

信じられなかった。つまり彼女はこの家具のない部屋で、正真正銘5年間も暮らしてきたというのだ。

「どうして、家具がないんだ?」

迷った末聞いた俺に、彼女はあっさりと

「必要ないですから」

そう答えた。

 必要ないって・・・・信じがたいことに、この部屋には暖房もなかった。いくら東京だといえども、11月に暖房をつけずに過ごしていたら、最低でも風邪をひくものではないだろうか。

「この部屋、床暖入ってるんです。それに・・・・」

彼女は手に持ったバックから、自信満々にあるものを取り出した。

「ほら! これがあれば、すっごく暖かいんですよ!」

着る毛布。・・・・あったかそうだ。それきり、何も言えなくなった俺に勝ち誇ったかのような笑顔を浮かべて、

「じゃあ、わるものAさんはあっちの部屋で過ごしてください。」

そう言った。あっちというのは・・・・俺は周りを見るがキッチンや浴室以外、部屋らしいものはない。まさか、トイレに居ろってことなのか・・・・?

「えっと・・・・あっちです」

怪訝そうな顔をする俺から、何か感じ取ったのか彼女はもう一度言い直し、とある方向を指差した。

 彼女の指は真っ直ぐに俺の背後――開け放されたままのドアから見える、向かいの部屋を指していた。

 

 あとから聞いた話によると、彼女はこのフロア全ての部屋を所持しているらしい。あんたマジで金持ちだろ。俺は心の中でもう一度突っ込んだ。


よろしくお願いします!

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