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第三話 最近の詐欺は手が込んでるけども、これは・・・

やっと、投稿できました!


投稿して、サブタイトルの間違いに気づきました。すいません


 ドックフード―――工業的に生産された犬用の食料(ペットフード)を指す。人間の食事の残飯などは、犬に分け与えられたとしても「ドッグフード」とは呼ばれない―――以上wikipediaより引用。

 思わずAI時代の知識を動員させてしまったが、彼女が差し出すそれは紛れもないドックフード。パッケージには、はっきりと『ワンちゃん大好き! ビーフジャッキー』とある。どうやらジャッキータイプのドックフードのようだ。今時のドックフードは、人間が食べても大丈夫だというフレコミで売り出しているらしいが、いくらなんでも本当に食べる人などいないと信じたい。まだ、残飯の方がマシである。

 唖然とする俺を見て、何を勘違いしたのか彼女は、何かを合点したように頷いて

「あぁ! やっぱり見たことがないんですね!」

そんなことを言い出した。いや、まぁ確かに俺は見たことはないが(知識としては知っていた)大半の一般人の皆さんは、一度は目にしたことがあると思うぞ。・・・・主にホームセンターの一角や、ペットショップで。

「これ、すごく珍しいものなんですよ! なんでも、一部の上流階級の人しか知らないとか。すごいですよね! 食べるだけで体に必要な栄養素を全て摂取できて、さらに水分補給にもなるんですよ。これ一つで約一ヶ月分なのにお値段2000円!」

「・・・・失礼ですが、犬を飼ってたりは?」

思わず敬語になった俺は、自分の中で警鐘が鳴り響くのを感じていた。

「犬ですか? 私、ちょっと生き物は苦手で・・・・」

はっきりした。この女性は―――危険だ。今の発言で、彼女が他の生き物のために、このドックフードを買ったわけではないことが確定した。つまり、彼女は純粋に自分のために買ったわけで・・・・

 こういう人種とは、関わってはいけない。逃げなければ――そう思っているのに、空腹がとっくに限界を超えている俺の体は、起き上がることもままならない。

「その、ド――ジャッキーは、どこで買ったものなんですか?」

「ええとですね・・・・なんか面白いお兄さんが家に来まして・・・・すごくサービスしてくれたんですよ! 私、最初は断ろうと思ってたんですけど、それにつられて買っちゃいました。」

押し売りというやつだ。彼女は3ヶ月分を6000円のところ、5000円にしてくれたなどと嬉しそうに語っている。

 そして俺は今さら、彼女の目が先程から一度も俺を捉えていないことに気づいていた。顔は、俺のほうを見据えているのだが、目の焦点が合っていないのだ。

「あの・・・・もしかして、目が悪かったり」

「なんでわかったんですか?! 見えないわけではないのですが、メガネがないとあんまり・・・・そういえば! 今日はメガネを買いに来たんですよ。」

大げさに驚いたあと、彼女は普段家でかけていたメガネが壊れてしまって、それを買いに出かけようとした矢先に押し売りがきたことを語った。つまり、彼女は押し売りが来たときに目があまり見えていなかったということで、そいつはそれを知って彼女を――騙したのだろう。つまりこの女性は詐欺被害を受けたのだ。もっとも、本人はそれに気づいていないようだが。

 彼女を見つめる。その手にはいまだドックフードが握られていて、よくよく見るとバックからいくつか同じものがはみ出ている。一体いくつ買わされたのだろうか?

 まるで人を疑うことを知らないように笑う彼女を見て、俺の心は――哀れみでいっぱいになった。

 正直、こんな手口に引っかかるような現代人がいるなんて思いもしなかった。目が悪いなら、悪いなりに少しは警戒心などを抱くものではないか。

 憐憫を含んだ俺の視線に彼女は気づくことなく、ちょこんと首をかしげた。美人のその仕草は非常に可愛らしいのだが、いかんせん状況が状況だ。俺はため息をつき、教えてやった。彼女がどのような目にあったのかを。


「そうなんですか。」

現状を理解した彼女の第一声が、これだ。その声にはなんの怒りも、悲しみも宿ってはいない。どこか空虚な響きを伴っていた・・・・まるで、何かを諦めた時のような。

「・・・・そういえば、私はルークさんに頼みたいことがあったんでした」

「ルークって誰だよ! さっきと名前違ってねーか!」

突っ込んだ。それはもう思いっきりに。彼女は突然のツッコミに耐性がなかったらしい。びっくりしたように目を見開き固まってしまう。

 何をやっているんだろうか、俺は。初対面の女性に向かって。だが、もう限界だった。

「ルークさんではなかったですか? じゃあ・・・・ライオットさん?」

「ますます、誰だよ! 俺の名前は・・・・・・・・わるものAだ。」

あんまりといえばあんまりな俺の名前を聞いて、彼女は再び目を見開き―――笑った。

 薄暗く、人気の少ない河川敷に彼女の澄んだ笑い声が響き渡る。

 自分の名前を笑われたというのに、なぜか悪い気はしなかった。彼女の見せた邪気のない笑顔はそれほどに美しかったのだ。


ドックフードのくだりで、こんなに長くなるなんて・・・

飽きずに読んで下さり、ありがとうございます_(._.)_

 サブタイトルでかなりのネタバレになっていますね

 

 次回で、彼女の名前がようやく分かると思います。

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